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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第3章 ばくやく令嬢 主人公との恋の駆け引きは爆破不能?
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30.婚約は強制イベントなの?

 ゲームの世界では、キャサリンはエドワードと婚約していた。

 主人公クララが、二人の皇子と仲良くなっていくのをねたんだキャサリンが、公爵令嬢の地位を利用して横取りする形で婚約にこぎつけるのだ。


 それは、魔法学園の1年目に起こるイベントだ。

 キャサリンは、ゲームの中のその一部始終を思い出す。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 あるパーティーで、キャサリンはエドワードたちと立ち話をしていた。


 遠くからその姿を見つけた主人公クララは、軽率にもジュースの入ったグラスを持ったまま走り出した。


 クララは目的地の手前で、キャサリン取り巻きの令嬢に足をかけられて転んでしまう。

 キャサリンの純白のドレスは、亡き母の形見だった。

 クララのこぼしたジュースで、ドレスを汚されたキャサリンは、泣きながら訴える。

「私の母は亡くなる前に、結婚式にはこのドレスを着て欲しいと言い残していたのです。

 こんなけがされたドレスを着た花嫁をもらってくれる殿方など、いらっしゃいませんわ」


「ごめんなさい。

 そんな大事なドレスを汚してしまって。

 許してくださいとは申しません。

 キャサリンさんの気持ちが少しでも和らぐなら、私にできることならどんなことでもいたします」

 クララも泪を流しながら謝った。


 取り巻きたちが騒ぎ出す。

「クララさん。

 キャサリン様が結婚出来ないように、わざとやったんじゃありませんこと?」


「公爵令嬢が結婚出来ないようにしてしまうなんて、死んでお詫びしたって許されるものじゃありませんわ。

 何が、『私にできることなら何でも』 なのかしら?」


 会場の雰囲気は、ドンドン悪くなっていく。

 クララが死んでお詫びでもしないと、許されないような雰囲気になっていく。


 見かねたエドワードが、ここで男気を見せる。

「俺は、花嫁が汚れたドレスを着ようと、ツギハギのドレスを着ていようと構わない。

 母の形見のドレスを、どんな状態でも着てくるのは、母思いの証拠だ。

 そんな花嫁を責めるやつを俺は許さない」


 取り巻きの一人が、感激したていで叫ぶ。

「それは、エドワード様がキャサリン様を花嫁として迎えるという事ですか?」


「え? それは……」


 言い淀むエドワードに別の取り巻きが追い討ちをかける。

「母の形見のドレスを汚されて悲しむキャサリン様を見て、結婚式にはそのドレスを着て来いとおっしゃるなんて、さすがエドワード様ですわ」


「おめでとうございます、キャサリン様!

 皇子様からのプロポーズですわよ」


「キャサリン様、おめでとうございます!」


 エドワードは、皇位継承権が低いとは言え皇帝の一族だ。

 日の出の勢いの公爵家とのいざこざは、許されない。


 公爵令嬢に恥をかかせるわけにはいかない。

 その場は、エドワード皇子がキャサリンの前にひざまずいて、手にキスをして収まった。

 プロポーズは既成事実となり、翌日には正式に両家で契約が取り交わされた。


 明らかに、主人公クララを救うためのプロポーズだった。

 ただ、身分的にもつり合いが取れており、両家にとって都合の良い組み合わせでもあった。

 余程の事が無い限り、そう簡単に婚約解消は出来ない。

 双方に愛が無いなどという理由は、認められない。


 ゲームの中では、キャサリンがいなくなるまで二人の婚約関係は続くことになった。




 ゲームではこれは強制イベントで、どうやっても避けることは出来なかった。


 でも、キャサリンの側ならば退避可能だ。

 パーティーで、純白のドレスを着なければ良いはずだ。


 大体母の形見のドレスは、それこそ何十着もある。

 その中に純白のドレスもあるが、母がドレスに関して何か遺言をしたなど聞いたことも無い。


 ただ、もしかしてクララのフラグをへし折ったせいで、このイベントが起きないとしたら、エドワード皇子との婚約も起こらないかも。


 まあ婚約できなくても、あんな美少年と仲良くなれたら、それだけで嬉しい。

 近くで眺められるだけでも、満足できそうな気がする。


 キャサリンはエドワード皇子との婚約に、そこまでこだわってはいなかった。




 ただとにかく、何か切っ掛けが欲しい。

 二人の皇子のイケメンぶりを知ってしまった以上、仲良くならないまでもでたかった。


 この世界には、待ち受け画面もポスターも無いので、本人に会うか心に焼き付けるしかないのだ。

 まだ、心に焼き付くほどでていない。




 父が帝都にいる間に行動を起こしてもらわないと、自分で皇子たちとの関係をつむぐことは不可能だ。

 忙しい父に、夕食の場でそれとなく匂わせてみた。


 一週間後には、父のノーベル公爵は母を連れて公国に帰って行く。

 ダイナマイトは、今は細々とパーライトのお屋敷の実験室で作っている。


 今の生産量では、今の需要を満たすだけで何十年もかかってしまう。

 工場の建設や物流体制の構築など、広範囲にわたって指示を出さないといけない。


 基本方針さえ伝達できれば、ファルマイト公国の事務方は優秀だ。

 ただ、優秀ゆえに放っておくと、てんでバラバラな方向に全速力で進んでいく。

 キチンと手綱を握って、制御しないといけない。


 公爵は一刻も早く領地に帰って、陣頭指揮をとらなければならない。


 この状況では、娘の恋愛のために何かするなど、とても無理に思えた。




 だが、ジェームス・W・ノーベル公爵は、出来る父親だった。


 娘を帝都に置いて帰るのは、当然娘の意向もあったが、エドワード達との関係を深めるためとも考えていたのだ。


 ちゃんと、手を打っていた。

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