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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第2章 お父さまとお母さまの間の心の壁も爆破ですわ
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29.お父さまとお母さまの仲直り

 本当に、色々なことがあった一日だった。


 公爵夫妻がオークの集落カーボン村を訪れて、同盟アライアンスを結ぶ。

 その結果、自由商業都市カサイが生まれる。


 これからダイナマイトで莫大な収益が生まれる。

 その収益を使って、整備される商業都市。

 恩恵は人間ヒューマンにだけではなく、辺りに住む亜人たちにも行き渡る。



 火の魔法で調理したり暖をとったり、氷の魔法で冷蔵したり、風の魔法で換気したりなど、人間ヒューマンが開発した魔法道具を買うために、オークやエルフの様な亜人たちも貨幣経済に取り込まれつつある。



 そんな中、一大産業が生まれようという時に収益を独り占めせずに幅広く配分しようというトップが造る街。

 その産業は、ひとつ間違えれば膨大な血を流すことにつながる危ないものだ。


 世の中の常として全て上手くいくわけでは無いが、公爵は領土欲のために戦争を起こすような人ではなく、私利私欲のためというより領地内の人々が幸せに暮らすために頑張る人だった。


 そしてキャサリンの前世明神みょうじんさくらは、その危ない爆薬を人の命を守るために使用する、エアバッグの開発をしていた。

 現代日本人の感覚を持っているため、ファンタジー世界としては考えられないほど合理的で平等な場所を作ろうとしていた。


 そんな夢の街が生まれる、ターニングポイントとなる重要な日になった。




 それだけでも大変な一日だ。

 だが、キャサリンの『愛の吊り橋作戦』によって、不必要なほど盛沢山もりだくさんな出来事の起こった一日になってしまった。


 カーボン村の副村長が裏切って、公爵夫妻を人質に取る振りをすることになった。

 副村長はこれをチャンスとばかりに、本当に二人を人質に取ってしまった。


 村長は最初からそれを前提に動いており、これは事なきを得た。

 村長はしかし、キャサリンを人質に取ってさらに好条件を引き出すことを画策していた。


 キャサリンを慕うハーフオークのソフィアを見て、キャサリンの真っ直ぐな思いを聞いて、村長は全面的な協力を約束してくれた。


 結果的に全て良い方向に行ったから良かったが、一家は護衛の面々も含めてヘトヘトになった。




 その日の夕食。

「お父さま、お母さま、今日は本当に申し訳ありませんでした。

 まさに、『策士、策に溺れる』を地でいってしまいましたわ」


「まあ、難しい言葉を知っておいでですのね。

 キャサリンさんは、賢いと聞いていましたが、すごいですね」


 いつも、食事の時にほとんど話をしないアン夫人が、今日は良い反応だ。



「でも、今日のジェームス様は素敵でしたわ。

 わたくし、惚れ直してしまいました」

 今日のアン夫人は雄弁だ。


(おっ、お父さまに対してもこの言い方。

 結構ピンチの連続だったし、吊り橋効果があったのかしら)

 キャサリンがほくそ笑んでいる。


※吊り橋効果

 吊り橋のような危険な場所や、不安、恐怖を感じる場所では、恋愛感情を抱きやすいという心理効果。



「えっ? アンさん、惚れ直すっていう言葉は、元々好きな人に使う言葉ですよ。

 僕の事、少しでも好きでいてくれたのなら、嬉しいことですけどね」

 公爵も、ちょっとハイだ。


「わたくし、昔からずっと、本当に小さな頃から、ジェームス様に憧れておりましたのよ。

 色々な式典の時も、舞踏会の時も、ずっとジェームス様を見ておりました。

 こんな方と一緒になれることを夢に見ていたので、結婚が決まった時は、本当に嬉しかったんですから。

 ジェームス様も私を好きでいてくれたら、本当に良かったのに」

 アン夫人は、ハーッとため息をつく。


「何を言うんですか。

 僕の方こそ、ずっとあなたのようなキレイな方と結婚出来て喜んでいたんですよ。

 キャサリンの母のことは残念でしたし、あなたとのことを表立って喜ぶことがはばかられたのは、確かです。

 あなたのような若くてキレイな方が、僕のようなバツイチのおじさんと結婚させられて、本当に申し訳ないと思っていたんです」


「おじさんだなんて、そんな……

 頼りがいのあるお兄様のような、存在でしたのよ。

 わたくし、本当に、ほんとうにあなたのことが大好きですのよ!

 キャーッ、言ってしまいましたわー」

 両手をほほにつけて、今まで聞いたことが無いような高い声で話す。


 いくら吊り橋効果といっても、おかしい。


 キャサリンは気付いた。

 二人が飲んでいる、お酒。

 今日オークの村長からもらった酒は、口当たり良く飲みやすいが、かなりアルコール度数が高かったようだ。

 二人とも酔いが回っているのだ。


「あんなに苦労して準備して、あげくの果てに失敗して、自己嫌悪に陥る程だったのに。

 結局、強いお酒があれば、二人の仲直りは楽勝だったのですね。

 ショックですわあ」


 うなだれるキャサリンを、ソフィアが慰める。

「お嬢様、二人でピンチを乗り越えたからこそ、お酒の助けでこんなに仲良くなっておいでなのです。

 お嬢様の苦労は、無駄では無かったのですよ」


 キャサリンは割り切れない思いで、いちゃつく両親を眺めていた。

(仲直りが出来たっていうより、仲睦なかむつまじくなってしまいましたわ。

 あー、私もお酒飲みたい)



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 自由商業都市カサイの采配は、優秀な事務方の人間に任せた。


 キャサリンの一家は、帝都ナードハートに帰って来た。


 苦労して両親の間を取り持ったキャサリンだったが、実は辟易へきえきしていた。

 両親が帰りの馬車でも、宿でもずっとイチャイチャしっ放しだったのだ。


 お互い好き合っていることも知らず、4年間秘めていた心が一気に表に出てしまったのだから仕方なかった。


(来年の今頃には、私には弟か妹がいそうですわね。

 ゲームの中では、キャサリンは一人っ子でした。

 破滅フラグの回避には、つながりますわね)


 などと、平静を装ってはいたが、

(私も、あんな風に誰の目も気にせずにいちゃつける相手が欲しいものですわ)

 と思い、落ち込んでしまった。



 その第一候補と言えば、ゲオルグ皇子とエドワード皇子だ。

 ゲームの主人公が登場しないなら、キャサリンにもワンチャンスあるはず。

 皇子二人のいる帝都に帰ることに彼女は、ちょっとワクワクしていた。

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