25.村長と副村長、どこまで信用できるか
案内者はドンドン進んで、村の柵の外に出ていく。
「おいおい、副村長は村の外に住んでいるのかい?」
案内者は、公爵の質問に無言でうなずく。
柵の外には、2足歩行の恐竜と言うかトカゲというか微妙な生き物が6頭いた。
「ケラトサウルスですね」
アン夫人の護衛についている魔術師のナタリアが、博識な所を見せる。
※ケラトサウルス
体長4~6メートルの中型肉食恐竜。
鶏のような赤い冠を持つ。
この世界では、多くの恐竜も生息している。
地球も急激な気候変動が無ければ、この世界のように恐竜と共存していたかも知れない。
村を仕切る柵の外に、ケラトサウルスが整列する。
オークは馬に乗れないが、この村では恐竜に乗るようだ。
6頭の恐竜には、馬のような鞍が取り付けられていて、手綱を引いて操るようだ。
「変わった乗り物だね」
「わたくし、上手く乗ることが出来るかしら」
公爵夫妻は、少し戸惑う。
恐竜たちは従順なようで、夫妻の前に2匹歩いて来て、乗りやすいようにしゃがんだ。
「ハハハ、結構簡単に乗れるぞ」
公爵が喜んで乗ったのを見て、アン夫人も乗ってみた。
問題なく、鞍の上に座ることが出来た。
他の4名も恐竜に乗ったのを見て、案内人の一人が号令をかける。
「ゴー!」
恐竜たちは一斉に、すごいスピードで走り始めた。
「おおっ、すごいスピードだよ」
公爵は上機嫌だが、異変が起こっていた。
6頭のうち4頭だけが走り始めていた。
公爵たちの護衛を乗せた2頭は、そのまま動かなかった。
「しまった、置いていかれた」
護衛の二人は、焦った。
走り出した4頭は、あっという間に崖を登って、見えなくなってしまった。
公爵の護衛、戦士のアイマールが恐竜から降りて、走って追いかけようとする。
それを夫人の護衛、魔術師のナタリアが止める。
「土地勘のない場所でむやみに動いても、迷うだけです。
まず目的地を確認しましょう。
村長は、場所やいきさつを知っているはずです」
二人は村に戻り、村長の所に駆けていった。
「「ええっ?
お嬢様とソフィア?」」
村長の所へ駆け戻った護衛二人は、意外な人物を見て驚いた。
「今回の件は、お嬢様がご夫妻の距離を近付けるために仕組んだものです」
ソフィアの説明を聞いて、公爵護衛のアイマールは激昂する。
「公爵夫妻は、一国のトップですよ。
万一のことがあったら、どうするんですか?
護衛と引き離すなんて、常識はずれにもほどがあります!」
「ごめんなさい。
でも、前もって村長さんと手紙をやり取りしていたの。
少しくらい危険が無いとお二人の仲は修復できないと思いました」
(私には時間が無いので、少々の危険なら決行する選択肢しか無かったのです)
キャサリンは、ペコリと頭を下げた。
「お嬢様が子供らしい考えで、危ない事をしてしまうのは仕方ありません。
しかし、ソフィア!
貴様! なぜお嬢様を諫めて、思いとどまっていただかないのだ!」
アイマールは、大声で叫ぶ。
「私は、キャサリン様の僕です。
どんな命令だろうと、私はどうすれば実行できるかしか考えません。
お嬢様が死ねといえば、死ぬ覚悟で仕えております」
ソフィアは迷わず言い切ったので、それ以上追及できなくなった。
「では、みんなで副村長の所に行きましょうか?」
村長が落ち着いた口調で提案した。
村長の家の前に、沢山のケラトサウルスがひしめく。
一行は、ケラトサウルスにまたがった。
キャサリンだけ、ソフィアに抱っこされていたが。
恐竜に乗った一団は、あっという間に崖を登って目的地に着いた。
「馬よりもはるかに速くて、こいつら自身が戦えそうだ。
しかも、森の中も自在に走って、崖や障害も簡単に超えていく。
こんな恐竜で騎馬軍団を編成したら、すごい戦力になるな」
アイマールが感心する。
「この村の騎馬軍団と言うより騎竜軍団は、なかなか強力ですぞ。
今回、色々とご心配をかけたお詫びに、恐竜を何匹か進呈いたしましょう」
村長が、ケラトサウルスの頭を撫でながら言う。
「えっ? 本当ですか?
繁殖させれば、近隣諸国が羨ましがるだろうな」
アイマールは、すごく嬉しそうだ。
さっきまで怒っていたのが、ウソのようだ。
一行は、副村長の家が見下ろせる高台の上に位置した。
キャサリンの作戦は、こんな感じだ。
副村長は、護衛と別れた公爵夫妻が到着したら、二人を人質に取ろうとする。
公爵は手りゅう弾などを使って、夫人を守りながら逃げ出す。
追っ手に追われながら一本道を逃げて、峡谷にかかる吊り橋を二人で渡って逃げる。
渡り切った所で、みんなが現れて種明かしをする。
助け合って危機を脱した二人は仲良くなるという、段取りだ。
間もなく、副村長の家の窓が閃光を発した。
「さあ、お父さまとお母さまが飛び出してきますわ。
みなさん、準備して下さい。
あ、あれっ」
しばらく待つが、副村長の家の扉は開かない。
「やはり副村長の奴、本当に裏切っておったか」
村長がポツリとつぶやいた。
「ええーっ!
本当にって何?
本当に裏切るってどういうことですの?」
キャサリンは村長を問い詰める。
想定外の事態が発生した。




