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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第2章 お父さまとお母さまの間の心の壁も爆破ですわ
21/543

21.恋の駆け引きは爆破できないから苦手ですわ

 パーティー会場では、すでにうたげが始まっていた。


 ここでは公爵ではなく、公国のエンターテイナーが司会を務めた。


 ダイナマイトのお披露目会会場からパーティー会場まで、馬車の渋滞が起こっている。

 パーティー会場に最初の客が付いてから、主だった招待客が揃うまで優に一時間はかかっている。

 その間、会場の客を退屈させないように、余興よきょうを見せていた。




 キャサリンは、とっくに着替え終わっていた。

 しかし、公爵の指示で客が揃うまで控室で待たされた。


 パン、パン、パパパパーン


 パーティー会場の入り口付近に、破裂音が響いた。

 爆竹のたぐいのものを破裂させて、煙を発生させる。


「さあ、本日の主役ノーベル公爵とその娘キャサリン姫のご入場です」

 司会が、陽気な調子で紹介する。


 食事と酒で気分よく過ごす客たちの前に、公爵がドレス姿の娘の手を引いて現れた。


「おお、これはこれはノーベル公爵。

 小さいけれど、本当に美しいご令嬢ですな」


 パーティーの客たちは、次々と賛辞の言葉を述べた。

 これほどの人気商品を売り出す公爵に、お近付きになりたい人が沢山いる。


 順番に挨拶をしながら娘を紹介して、会場の奥へと進んでいく。


 パーティー会場の一番奥のテーブルを囲んで、皇帝の一家が座っていた。


 公爵の到着を見て、全員が立ち上がり、公爵親子に挨拶した。

 ファルマイト公国は現状では、帝国連邦の中で中堅といった位置づけだが、このダイナマイトの発明によって間違いなく最も裕福で強大な国になるだろう。




 皇帝陛下と皇后陛下は、順列を示すためにも、時候の挨拶を交わしただけだった。


 長男と次男は、帝国領の東西の端の砦に陣取っていて不在だ。


 帝国の南北は、強力な4つの公国が陣取っており、その向こうの国々を威圧している。

 帝国の東西は、強力な怪物モンスターの棲み処が点在して、混とんとしている。

 伯爵たちに領地として割譲しているが、なかなか静定には至らない。

 その先には、いくつかの人外の者の国があり、話も通じない。

 その国境を砦で守っているのだ。


 長男と次男は、砦の戦いでより大きい功績をあげた方が次の皇帝の権利を得る。

 帝国は世襲制ではあるが、実力主義なのだ。

 もちろん、功を焦って命を失えば、帝位は手に入らない。




 この会場には、3男から8男までの6人の息子たちと5人の娘たちが来ていた。

 それぞれが、自己紹介をする。


 何と、3男から5男までは既に婚約者がいるそうだ。


「皇帝の家系からは、花婿候補が3人しかいないのか」

 公爵は思わず、小声でつぶやいてしまった。

 誰にも聞こえていなかったようで、公爵は胸をなでおろした。

 誰かに聞かれていたら、不敬罪をとがめられる所だ。


 公爵は、花婿候補として3人を食い入るように観察した。

 6男 ゲオルグ   12才

 7男 エドワード  11才

 8男 ヴェンデリン  5才


 キャサリンが10才なので、ゲオルグとエドワードに絞って娘を売り込む策を練っていた。

 当然、その他の公爵、伯爵家の次男坊以下もチェックは怠らない。


 だが、娘がゲオルグとエドワードをうっとりしながら見つめるのを、見逃すことは無かった。


 実を言うと公爵は自分の娘を、10才とは思えない化け物じみたほどの頭の良さ、素早い判断力、明解な説明能力に、正直本当の怪物なのではないかと不安を抱いていた。


 しかし、ゲオルグやエドワードに対する、憧れを見せながらも奥手な反応しかできない所に、逆に安心感を感じることが出来た。

(キャサリンも、恋愛に関しては普通の女の子みたいだ。

 もし、正体が魔女とかだったら、恋愛も手練手管てれんてくだを発揮するはずだからな)


 ただ、8男のヴェンデリンは、無邪気にキャサリンに甘えている。

 キャサリンもかわいい男の子として可愛がっている。

 8男で名前がヴェンデリンという所に、彼女は少し引っ掛かるものがあったが。


 公爵は、年下の婿養子も良いかもとか考えていた。


※ヴェンデリンは小さくて恋愛対象にならないから、恋愛が苦手なキャサリンでも可愛がることが出来るだけだが。




 公爵が、あちこちで商談を始めた。




 キャサリンは、お腹が空いたので食事を取ることにした。

 ラザニアを見つけたので、そこへ行って自分の分を取ろうとした。


「お嬢様、ラザニアがお好みですか?」


 男たちが群がってきた。


※ラザニア

 イタリア料理。この異世界でもイタリア料理と呼ぶのかは不明。

 平たい板状のパスタを用いた料理。




「この平たいパスタは、ウチの国の特産品で……」

「パスタ料理がおいしいのは、ウチの国のどこそこで……」

 すごい勢いで、ウンチクを語ってくれる。


「はあ、それはすごいですね」

 適当に相槌を打ちながら、一生懸命お腹に収めようとする。

(このラザニア、おいしい。

 ミートソースとホワイトソースの混じり具合が絶品だわ)

 などと考えて、男たちの語るウンチクをスルーしていた。


 それもそのはず、彼女は現代日本人明神みょうじんさくらの美意識を持っていた。

 中世ヨーロッパの貴族はでっぷり太っているのが良かったそうだが、本当に言い寄って来る男たちは、揃いも揃ってふくよかだった。


 10才の中身現代日本人少女から見て、男のふくよかな体形は全くプラスにならない。


 キャサリンの父は、最愛の妻を亡くした悲しみからか、痩せたままだった。

 皇帝の息子たちは皆、戦に出ることも考えて戦う男の体形だった。


(この世界では、どうして貴族の男はデブだらけなのー?)

 キャサリンは叫び声をあげてしまいそうだった。


 しかし、よく見ると貴族たちのお付きの者たちは、戦う男の体をした者ばかりだ。

(そうか、騎士職も貴族のはずだから、あの中から選ぶのもありかも?)

 などと考えた。


 だが恋愛奥手の彼女は、考えるだけでお終いだ。




 そこへ、皇帝陛下がゲオルグとエドワードを引っ張ってきた。

「お前らも、キャサリンさんの争奪戦に参加せんか!

 やるからには、ちゃんと勝利して報告をしろよ」


 そう言って、皇帝陛下は去っていった。


 群がっていた男たちも、皇帝陛下の息子と勝負するのは恐れ多いので、退散した。


(皇帝陛下、グッジョブです)

 キャサリンは、心の中で親指を立てていた。


「キャサリンさん。

 ご迷惑かも知れませんが、父もああ言っているので、暫くお付き合いください」


「いえ、ご迷惑だなんて、とんでもございませんわ」

(さすがゲオルグ様。美形キャラなのに、さりげない気づかいが出来る。

 まさに、完璧超人!)


「ゲストのお相手が大変で、お腹空いているんじゃないか?

 俺が色々取ってきてあげるよ。

 何か欲しいものは有るかな?」


「ええっ? エドワード様の見繕って下さったものなら、何でも」

(俺様キャラのエドワード様も、今日は優しい!)


 キャサリンは美男子二人に囲まれて、おいしいものを食べられて大満足だ。


 後でやはり、せっかくのチャンスに何のお話も出来なかったことに気付いて、落ち込んだのだが。

 せっかく主人公の登場フラグをへし折ったのに、自分の恋愛フラグは全く立たない。


 しかし、よく考えたら共通の話題が無いから話が出来ないのだ。

 『二人の皇子の趣味を調べなくては』と心に誓うキャサリンだった。

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