20.ダイナマイトのお披露目会
(これだけの建物を、こんな短期間で用意するなんて。
さすが、お父さまですわ)
キャサリンは、心の底から感心した。
ダイナマイトのお披露目会会場は、帝都ナードハートから近くて、人里からは離れている。
岩がゴロゴロしている荒野の横の平地に、事務所が上手に建ててあった。
短期間で建てられるような木造の平屋建てだったが、十分広い。
まず、馬車を降りたお客さん達は、高台の上に集められた。
落ちないように、崖沿いには手すりが付いている。
「いやあ、今日の主役はダイナマイトという名前らしいですな」
「何でも、大きな岩を木端微塵に吹っ飛ばすような威力らしいですぞ」
「いくら何でも、それは大げさでしょう。
ウチの最強の魔法使いの爆裂魔法でも、岩を破壊するのは無理ですよ」
「岩を相手にすると、剣や鎚鉾では歯も立ちませんからな」
貴族たちが、少し浮かれた感じで会話している。
魔法の拡声器で、ノーベル公爵の声が会場に鳴り響く。
「お集りの皆様、本日は帝都から離れたこんな岩場までお越し下さり、本当にありがとうございます。
しかし、ここまでいらっしゃったことを後悔する必要は全くありません。
まずは、この辺りの岩の固さをお見せいたしましょう」
高台から見える位置に、帝都でも指折りの魔法使いが男女二人並んでいる。
二人は魔法を詠唱すると、直径1メートルほどの岩に向かって爆裂魔法を放った。
ドドーン
岩は、魔法を受けて半回転ほど転がった。
「これほどの岩を、転がすほどの威力。
皆さま、このお二人の魔力の強さに、拍手をお願いします」
魔法使い二人の魔法の凄さに、皆本気で拍手した。
「すごいですなあ。
あんな岩を転がすほどの魔法とは。
さすが、帝都にいる魔法使いは一味違う」
貴族の一人が、皇帝におべっかを言う。
「いや、この程度の魔法で驚いておったら、公爵のデモで驚きますよ」
皇帝が、訳知り顔で解説する。
今の魔法より凄いのが、本当に見られるものなのか?
みな疑いつつも、「おおー」と声を上げる。
公爵の声がまた、会場に鳴り響く。
「それでは皆様。
本日のメインイベント、大きな岩が木端微塵になるご様子をご覧ください」
魔法使い二人が避難のために、転移魔法で高台の上に登ってきた。
高台の横にいた軍楽隊が、ファンファーレを奏でる。
演奏が終わって、みんな岩場の方をジッと見ている。
ズズーン、ガラガラ
先ほど半回転転がった岩の横に、2倍くらいの大きさの岩があったが、爆発音とともに形を失い、崩れ落ちていった。
観客は、オオーッと歓声をあげた。
「すごい!
本当に岩が砕けたぞ!」
ズドドーン、ズズズズ、ガラガラガラ
さらにその横の、直径10メートルはあろうかという岩も、爆発音とともに煙に包まれた。
煙が晴れると、岩は影も形も無くなり、小さな岩の塊が辺りに転がっていた。
「ええーっ!
あ、あんな大きな岩が、爆発で崩れ落ちたのか?」
皆が皆驚きの声を上げ、会場はざわついた。
暗くなり始めた会場に打ち上げ花火が上がる。
ドーン、パパーン、パラパラパラ
赤、青、緑など、色とりどりの花火が打ちあがる。
この世界にも花火はあったが、この様な色の付いたものは無かった。
キャサリンが、炎色反応の知識を駆使して、作らせたものだった。
※炎色反応
金属類を炎の中に入れると、元素特有の色を示す反応のこと。
現実世界でも、花火の色を出すのに使われている。
「この美しい花火も、先ほど岩を破壊したダイナマイトと同様、ファルマイト公国の特産物です。
爆発するモノは、なんでもご相談ください。
ダイナマイトも花火も、必要な方は明日以降、目の前の建物の事務所で申し込みを受け付けております。
ぜひ、沢山のお買い上げをお待ちしております」
公爵の声が響くと、地鳴りのような歓声が起こった。
「わ、ワシに優先的に売ってくれ!」
「いや、うち、うちの国が先だ!」
皆の叫び声は鳴りやまない。
公爵の声が、また響く。
「皆さま、ご安心ください。
まず領民にアピールできる花火は、十分な量をご用意しております。
少しお高いですが。
そして、ダイナマイトについても、鋭意量産中でございます。
少しずつのご注文受け付けになりますが、皆さまに行き渡りますよう頑張りますので、ぜひ継続的にご注文をお願いいたします」
ウオーッという地鳴りのような声は鳴りやまない。
もはや、何を言っているのか聞き取れない。
「皆さま、残念ながら商談用の事務所では十分なおもてなしが出来ません。
帝都の迎賓館にパーティーのご用意をしております。
2時間後に、パーティー会場でお会いしましょう」
公爵の声が響くと、皆我先にと馬車に乗り、帝都に向かった。
帝都の門の前に渋滞が起きるほどだった。
公爵も娘と一緒に馬車に乗って、帝都に向かった。
「キャサリン、想像以上に大きな反響だったよ。
これは、予想以上に沢山のダイナマイトを用意しないといけないみたいだ。
下手すると、十分用意したはずの花火の方も足りないかも知れないな」
公爵は困った顔をしているが、声が弾んでいる。
「お父さま。これからのパーティーは、私も参加しなくてはいけませんか?」
人付き合いが苦手なキャサリンは、本当に困った様子で聞いた。
「もちろんだよ。
花火とダイナマイトのお披露目会は、さっきので終わりだ。
ここからは、キャサリンのお披露目なんだから」
「ええーっ? 聞いておりませんですわ!」
「もう遅い。皇帝の息子も全員参加されるんだ。
多分みんな、お前のことを気に入るだろうけどね。
あまり継承順位の高い皇子に結婚を申し込まれたら、困るなあ。
キャサリンは一人娘だから、婿養子に来て欲しいんだ」
「お父さまったら。
私、まだ10才ですよ」
「10才なら、婚約者の一人や二人居ても不思議じゃ無いさ。
それよりも、キャサリンの聡明さは10才とは、とても信じられないよ」
公爵は、自分の事のように胸を張って言った。




