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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第2章 お父さまとお母さまの間の心の壁も爆破ですわ
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19.爆薬運搬のための物流体制

☆まえがき

 本当に、爆薬運搬のための物流体制のお話です。

 途中で退屈した方は、この回は読み飛ばしても大丈夫だと思います。

 でも、この小説を読むのをやめるのだけは、勘弁してください。


 その日、キャサリンはビジネスの話がしたいと言って、父に時間を取ってもらった。


「かしこまって、何の話だい?」

 ノーベル公爵が、ニコニコしながら聞いてくる。


「ダイナマイトの商売を進めるにあたって、新しい商売の形態についてですわ」

 キャサリンは、真面目な顔で答える。


「新しい商売と言うのは、ダイナマイトの活用法かい?」


「違いますわ、お父さま。

 ダイナマイトのお披露目は、明後日でしたわよね」


 公爵は、急に話題が変わった気がして、少し慌てた。

「ああ、恐らく大反響で注文が殺到すると思うよ」


「ダイナマイトは、大量に必要になる訳ですね。

 でも、市場いちばに並べる訳にはいきませんが、商談はどうするのですか?」


 公爵は、当然という感じで答える。

「今回、私たちが帝都に来るまでの間にお披露目の場を準備しておいた。

 そこは岩場で、いつでも爆薬の威力のデモが出来る。

 そのお披露目の場に、事務所を作っておいたんだ」


「商談の場は、すでに用意されているのですね。

 今後どうやって、そこまで運ぶおつもりですか?」


「そりゃあ、今回のように馬車隊を編成して運んでくるよ。

 帝都の近くまで運べば、帝国の連邦国家や同盟国も買い付けに来るからね」


「ファルマイト公国の都市、マルテンサイトやパーライトなどで売ったりはしないのですね?」


「ああ、それは出来るだけ避けようと思っている。

 このような戦略物資を、皇帝から見えない所で大量にやり取りするのは、政治的に危険だからね。

 ウチの国の領土を通らないと帝都に来れない国には、直接売っても良いだろうけど」




(さすが、父はよく考えてくれている)

 キャサリンは、満足しつつ話を続ける。

「原料となる珪藻土けいそうどが無尽蔵に出るパーライトに、ダイナマイトの工場を作ることになりますね。

 そこから帝都まで、ものすごい量を輸送しないといけません。

 今回のような隊列が、何編成も必要になるのではないですか?」


「ダイナマイトは今の所高級品だから、輸送にお金をかける値打ちはあるよ。

 気にはならないな」


 ここでキャサリンは、大きな巻紙をテーブルの上に広げた。


 紙の上に、形の崩れた平行四辺形を大きく描く。

「この四角形を、私たちのファルマイト公国と考えて下さい。

 そして、ここが首都マルテンサイト」


 公国の中心辺りに×印を描いて、『マルテンサイト』と記す。

 ×印の南西に小さな〇を描いて、『パーライト』と書いた。


「パーライトから北に3日間行った所が、『セメンタイト』になります。

 セメンタイトには、お父さまも知っての通り、リー伯爵が沢山の倉庫を作っていました。

 多分修理すれば、簡易倉庫が大量に作れるでしょう」


 彼女は、パーライトの北に□印を描いて『セメンタイト』と記す。


「倉庫の屋根を簡単な構造にすれば、万一の爆発の時も天井から爆風が抜けます。

 作ったダイナマイトは、ドンドンこの倉庫に運び込みます。

 倉庫が一旦一杯になったら、使った分だけ作るようにします。

 これで、セメンタイトはジット倉庫となります」


 そう、セメンタイトに爆薬を集約すれば、彼女の実家は暴発で吹っ飛ぶことは無くなる。

 つまり、ゲームの物語ストーリー通りに公爵家が没落することも無くなる。

 そして、当初は需要が多すぎて意味が無いだろうが、ジャストインタイム物流の要であるジット倉庫を導入して、効率も上げる。



※ジャストインタイム物流

 雰囲気を出すために、難しい言葉を用いています。

 ここは、「エターナルブリザード物流、相手は死ぬ」

 とかに読み替えてもらっても、影響はありません。


 一応、意味も書いておきます。

 工程間の仕掛在庫しかかりざいこを、最小に抑えるための物流体制のこと。

 ジット(JIT)は、Just(ジャスト) Inイン Timeタイムの略。

 ジット倉庫で減った分だけ作れば、需要の無い生産はしなくて済む。


☆注意:需要の無い小説を書くのは止めないのかとか、聞くのは無しでお願いします。




「セメンタイトからは街道沿いに5日間で、帝国領に入ります。

 その5日間、休んだり補給したり出来る規模の都市はありません」


「なるほど、その間に中継点を作る訳だな?」


「さすがは、お父さま。 その通りですわ。

 そして、ここからが今日の本論になります。

 セメンタイトまでは、公国軍の輜重隊しちょうたいに運ばせるのも良いでしょう。

 そこから先は、商人たちに運ばせる気はございませんか?」


輜重隊しちょうたい

 軍隊の輸送部隊の事。




「そうだな。

 ある程度経って価格がこなれてきたら、考えないといけないな」


「その時商人たちは、危険な爆発物を無条件で運んでくれるでしょうか?」


「その言い方は、何か案があるんだね?」


「運送費の1割のお金を払った商人には、万一の爆発の時の損害を補償します。

 そして、それは会社組織が運営します。

 爆薬保険という商品名になります。

 また、同様にその会社は、旅程での盗賊被害の補償の保険も売ります。

 こちらは、ダイナマイト以外の商品の運搬にも適用できます」


「盗難被害の補償なんてしたら、盗られたことにして商品と補償を2重取りするやからが発生して、大損するんじゃないか?」


「だからこその中継点なのです。

 中継点には、保険会社の事務所を置きます。

 そこで、積み荷のチェックをします。

 キチンとルールを守って輸送していないと、補償されないことを明確にしておきます。

 どの程度の戦力の護衛が必要かもルール化します。

 チェックのための人員、輸送の商人たち、護衛と沢山の人が集まります。

 その人たちの日用品、食糧も要りますし、宿や食堂、酒場も出来るでしょう」


「なるほど、中継点に人を集めて、都市を作るんだね」


「そのとおりです。

 マルテンサイトや帝都を見ても分かるように、人が集まる所は自然に、城壁の外にも町が出来ます。

 中継点には城壁の区切りを作らなければ、際限なく都市は広がっていくでしょう。

 武装した護衛部隊や、軍隊が駐留していますから、城壁が無くても盗賊が襲うことは無いと思います。

 城壁にかけるお金を、利水のような暮らしの為と、商工業のための施設に使って、住民が豊かに暮らせるようにします」


「しかし、城壁は盗賊だけでなく怪物モンスターや人間に敵対する亜人たちを防ぐ意味もあるんだよ。

 街道上に都市が無いのは、この辺りには亜人の集落や怪物モンスター棲み処(すみか)が点在することも理由なんだ」


 キャサリンは、こういう問題について考え抜いていた。

 想定通りの答えを返す。

「まず怪物モンスターですが、街の中で定期的に爆薬の着火実験をすれば良いでしょう。

 パーライトでの爆発実験で分かったのですが、怪物モンスターたちは、爆発音が四六時中鳴るような所からは、離れていくようです。

 亜人については、ここを中継点にすればよろしいかと」


 そう言いながら、セメンタイトと国境を結ぶ線上に☆印を描いた。

 そして、『自由商業都市 サカイ』と記す。


「なぜ、ここに中継点を作れば亜人の心配が無くなるんだい?」

 公爵は、娘に質問した。


「この近くに、強力なオークの集落があります。

 そして、我々の最強戦士の一人ソフィアは、この集落の出身なのです。

 お金がオークの集落にも行き渡るようにして、アライアンスを結べば、他の亜人は手を出せないでしょう。

 他にも亜人の集落があれば、オークの集落が豊かになるのを見て、アライアンスを結びたがるはずです」


「そこまで考えていたのか。

 我が娘ながら、空恐ろしいほどの構想力だ」


「差しあたって、お父さま。

 自由商業都市 サカイの予定地に看板でも立てて、宣言しておくべきですね。

 そして、オークの集落に公爵自ら家族同伴で訪ねて、正式にアライアンスを結ぶことを出来るだけ早くお願いします」


「よし、今回のダイナマイトのお披露目会が終わったら、すぐに動き始めよう」


(さすがお父さま、決断が早くて実行力がある)

 キャサリンは、大満足で話し合いを終えた。


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