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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第2章 お父さまとお母さまの間の心の壁も爆破ですわ
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15.主人公の安全確保は万全ですわ

 キャサリンは、お城から別邸に帰って来てやしきの入り口の扉の前で、珍しいちょうを見つけた。

 彼女は、そのちょうかれるように駆けだした。


 転生前は大人だったのだが、10才の子供の心が弾けてしまったようだ。

 二人の皇子とお話をして、ハイになっていたこともあるだろう。




 セメンタイトでも同じようなことがあった。

 ただ、あの時は転ばなかった。


 今回は着慣れないドレスを着ていることを、すっかり忘れていた。

 石畳の上で、スカートのすそを踏んで転んでしまった。


「フギャッ」


「キャサリンさん、大丈夫?!」

 テラスから女性が走り出てきた。


 継母ままははのアン・シャーロット・ノーベル夫人だった。


 アン夫人は、キャサリンのスカートのすその汚れをはたき落としながら、心配そうに見下ろしてくる。


「お母さま、大丈夫です。

 ちょっと転んだだけですわ」


「まあ、わたくしのことをお母さまと呼んで下さるのね」

 キャサリンは、ギュッと抱きしめられた。


(えっ? もしかして、このお母さん、良い人なんじゃないの?)

 キャサリンの中の明神みょうじんさくらが、冷静に分析する。


「お母さまの方こそ、ほとんど会って無かったのに、私のことが分かったのですか?」


「それは、愛する人の娘ですから」


(えっ? 今、愛する人って言った?)


 10才の子供が、こういうことに余り突っ込んで聞くのは不自然だ。

 アン夫人の胸に抱かれながら、キャサリンは調査方針を考えていた。






 夜になって、夕食の用意が出来た。


 今日も、父と娘で食卓を囲んだ。

 キャサリンは、父に聞いてみた。

「どうしてお母さまは、一緒にお食べにならないの?」


「うん、昔一度だけ3人で一緒に食べたことがあるんだが、それっきりだな」




 そう言われて、キャサリンは思い出した。


 4年前ナードハートのお城で盛大に行われた、父の結婚式の次の日の夕食の事。


 その日、疲れていた幼い彼女は、食べ物が何ものどを通らなかった。


 アン夫人は、心配したのだろう。

 その夜、使用人に頼まずに、わざわざ自分で彼女の寝室にお夜食を持って来てくれた。

 それに対してキャサリンは、

「あなたが一緒にいたら、何も食べられない!

 私にはお母さまは一人しかいないわ。

 私から、お父さまを取らないで!」

 と言って、わんわん泣いたのだ。


 確かにそれ以来、アン夫人はキャサリンと食事を共にしたことが無い。


(まずいですわ。

 これって、私が原因じゃないの。

 愛する人の娘から絶対的に拒絶されて、そのショックで今に至っているってこと?)




 さらに、父は話を続けた。

「アンさんは、父さんより10才も年下なんだ。

 彼女は美人で、家柄も良くて、当時本当に引く手あまただったんだ。

 父さんも正直言うと、あんな人と結婚出来て嬉しかったんだよ。

 ただ、キャサリンのお母さまが亡くなって、そんなに時間も経っていなかったし。

 キャサリンも、父さんがお母さまの事を忘れたら悲しいだろ?」


「私は、もうそんな子供ではありませんわ。

 それでしたら、お父さまの気持ちが伝われば解決ですのね?」


「いや、彼女からすると無理やり結婚させられて、嫌だったんだろうね。

 こうやって食事も共にしないことでしか、その不満を表現できない。

 本当に、彼女にとって不本意な結婚をさせてしまって、申し訳ないことだ。

 あっ、つい小さな子供に、こんな大人の話を聞かせてしまったね。

 こういう所も、彼女に嫌われる原因なんだろうなあ」


 父は、吐き出すように語る、語る。


(ううっ、私のせいで二人の関係が、こんがらがってしまっている。

 しかも、お父さまの方も本当は、お母さまを好きなんじゃ無いの?

 昔の私、凄くやらかしてしまってるじゃないの)




 食事が終わって、彼女はベッドの中で対策を考えたが、いつの間にか寝てしまっていた。

 気付いたら朝だった。




 その日、父と母の関係修復どころではないような、大事件が起こった。


 東門の警備隊長から、ビアンカ、クララ親子が帝都に入門したと報告が上がってきたのだ。


 彼女は直ちに、ファルマイト公国の騎士団から精鋭2名を護衛に派遣した。

 2名には、目立って護衛するように命令してある。

 帝国騎士団も街のチンピラも、親子にちょっかいを出さないように。


 キャサリンは、ソフィアと共に少し離れた建物の屋上から、千里眼の魔法道具を使って状況を監視する。


 ソフィアが不思議そうだ。

「お嬢様、あの二人は何者なんですか?

 エルフとハーフエルフの親子。

 母親は確かに美人ではありますが、みすぼらしい格好ですし。

 とても、公爵家に関わりのあるような人物には見えませんが」


 主人公であるはずのクララは、髪の毛がボサボサで、野生児のようだ。

 美しくつぶらな瞳も、前髪に隠れて見えない。

 服も、毛羽立けばだった灰色の、センスのかけらも無いものだ。

 このままなら、皇子たちがかれるはずもない。


 伯爵の娘とバレなければ、あの格好のままになる。

 ここは、何としても無事に門の外まで送り出さねばならない。


「今は、何者でもないのだけれど。

 放置しておくと、私にとって破滅的な状況を起こしかねない親子なの」


 キャサリンの答えに、ソフィアは一応納得したようだ。

「お嬢様のお考えは、私には計り知れません。

 ですが、信じております。

 私達は指示通りに動くだけです」


「ありがとう、本当に助かるわ」


「でも、お嬢様に破滅的な状況を起こすような危険な親子なら、ご命令頂けば、二度と帝都に足を踏み入れられないように、痛めつけて差し上げますが」


「や、やめて、それだけは!」

 そう言いながらも、キャサリンは一瞬 (そういう手もあるかな) 等と考えてしまったことに自己嫌悪していた。




 親子は、雑貨屋に行ってエルフ特有の工芸品を売って、現金を手に入れた。

 そのお金を持って、近くの宿に部屋を取ったようだ。


 平民の親子は、帝都まで何時間も歩いて来て疲れたのだろう。

 日が沈む前に、宿のレストランで食事をした後、部屋から一歩も出てこなかった。

 仲の良い親子の様で、時折笑い声が聞こえてきた。





 翌日、親子は魔法専門店マジックショップで、生活用の魔法石を幾つか買って、何事もなく帝都を去って行った。

 もちろん、徒歩で帰って行った。


 キャサリンは、心の中でガッツポーズをしていた。

(ヨシッ。

 クララ達は年に2,3度しか、帝都への買い出しはしない。

 つまり、皇子たちと出会う秋までに帝都にやって来ることは無いはず)


 一番根本になるフラグをへし折った彼女は、上機嫌だった。

 そして、ゲームのグラフィックとは全く違って、野生児のようなクララを見たことも彼女を安心させた。

(これで安心して、お父さまとお母さまの関係修復に着手できますわ。

 2人の皇子との関係も、邪魔者はいなくなって。オホホホ)


 安心しすぎたかも知れないと、後で後悔することになるが……


沢山のポイント、ありがとうございます。

おかげで、モチベーションがすごく上がります。

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