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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第1章 ばくやく令嬢 いざ決戦の場へ
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12.ばくやく令嬢 いざ戦いの場に出陣す

 この異世界は意外と広い。

 そして、キャサリンの父親の領土は、とても大きかった。

 セメンタイトから5日間ほどの旅程で、帝国の領内に入った。

 その間、夜は街道沿いの広場での野宿になった。




 帝国直轄領内に入ってから、3日間で帝都ナードハートに到着した。

 当たり前に、キャサリンを乗せた馬車を含む隊列は平穏無事だ。


 さらに帝国直轄領に入ってからは、毎日宿で寝ることが出来た。

 つまり、馬車で1日の距離ごとに城塞都市が栄えているのだ。

 キャサリンは、帝国本国の凄さを肌で実感した。




 やはり、帝都ナードハートは栄えている。

 帝都の城壁の門に着く30分以上前から、街道沿いに市が立っていた。


「立地条件が良いと、こうなるはずってことなのね?」

 キャサリンは、自分で言って納得していた。





 彼女にとって、一生を決定づける地への長旅は終わった。

 ついでに、悪代官の悪だくみもツブしてやった。


 おかげで、爆薬の扱いに随分と慣れた。

 手りゅう弾の威力も分かったし、父や護衛の力を知って、自陣営の戦力を把握できた。


 これからは、帝都で腰を据えて破滅フラグ対策を進めていかねばならない。

 命のかかった勝負の場にいるのだ。




 彼女は、ゲーム『愛の弾丸娘』の詳細、特に学園編の内容を克明に思い出し始めた。

 自分の破滅につながるルートを、つぶしていかないといけない。




 ゲームの主人公は、最初平民のクララだった。

 主人公のクララは、どうしても必要な買い物をするために、母と二人で帝都を訪れる。


 母のビアンカが、お城の近くで騎士団にからまれる。

 それが切っ掛けになって、クララがハイデルベルク伯爵の娘であることが分かる。


 伯爵家の娘と分かったクララは、帝都に呼び寄せられて貴族の一員となる。

 帝都の伯爵家別邸に母と一緒に暮らす。


 その10才の冬、皇帝の6男ゲオルグと7男エドワードと出会う。

 この二人は、上手く振舞えば主人公の魅力でメロメロになる。


 そこに現れるのが公爵令嬢キャサリンである。

 二人の皇子はまだ子供だが、タイプの違う美形だ。

 特にエドワードは、後に伝説の騎士になる優良物件である。

 キャサリンは地位を利用して、エドワードの婚約者になる。



 悪役令嬢キャサリンは、自分の邪魔になる主人公クララを徹底的にツブそうとする。

 主人公は、町の中で、登城したお城で、舞踏会で、嫌がらせに負けずに皇子たちの好感度を上げ続ける。


 15才で魔法学園に入学するが、同じクラスにキャサリンがいて、徒党を組んでのイジメを受ける。


 卒業間近に主人公のクラスは全員、魔物討伐を兼ねた修学旅行に出かける。

 修学旅行中に、突然変異のように強力な魔物軍団に襲われたクララのクラスは、一致団結してそれを倒す。


 そこで、悪役令嬢のキャサリンが不敵に笑いだす。

「ウフ、ウフフフ。

 みなさん、傷だらけですわね。私以外は。

 魔力もマジックアイテムも、タップリ使って底を尽いたことでしょう。

 ここからは、私がお相手いたしますわ」


 実は、魔物軍団はキャサリンが裏で手配したものだった。

 強力な上に、毒やマヒなどの状態異常攻撃を使ってくる。

 回復のために、魔力やマジックアイテムを惜しげ無く使わないと、クラスメイトがやられてしまう。


 だが、黒幕のキャサリンは魔力もアイテムも温存していた。

 彼女率いる爆弾軍ボンバーズは、魔物軍団よりさらに強力だ。

 ゲームの中で初めてこのイベントを経験した時は、ほとんどのプレイヤーは魔物軍団に戦力を削られていて、あっという間に仲間が全滅してゲームオーバーになってしまう。


 ゲームオーバーといっても、ゲームの中ではセーブした所に戻るだけだが。


 爆弾軍ボンバーズは、別に爆弾を使う訳では無い。

 爆薬で得た豊富な資金力で雇った傭兵部隊だ。


 決戦の行方により、主人公の未来は何通りかに分岐するというものだった。


 キャサリンがゲームに登場するのは、ここまでだ。

 99%死んでしまうので。

(ゲームプレイヤーが、皇子の好感度を上げないなんてことは有り得なかった。

 キャサリンが死なないルートを見れるのは、完全コンプリートを目指すマニアだけである。

 明神みょうじんさくらは、マニアだったが)




 キャサリンは、冷静に分析する。

 破滅しないための方策。


 ベストなのは、主人公に一切絡まないこと。

 しかし、魔法学園に入学しない訳にはいかない。


 この世界の貴族は、魔法の力が重視されている。

 科学に力を入れるノーベル家は、魔法のノウハウの蓄積が少ないのだ。

 魔法学園でしっかり学ばないと、魔法について学ぶ機会が無くなってしまう。

 父も彼女の周囲も、魔法学園に行かないことは許さないだろう。


 とにかく、近付かないよう気を付ける。

 近付いても、関係を作らないのが大事だ。




 次善の策は主人公に敵対しないこと。

 戦わなければ、死にはしない。


 ゲーム内でキャサリンが主人公をいじめるのは、主人公が気に入らないからだそうだ。

(ガキの考えよね。まあ、15才はガキか。

 そんな下らない理由でイジメをして、それで破滅するなんて有り得ないわ。

 ただ実際のクララに会ってみないと、何とも言えませんけどね。

 生理的に受け付けないタイプかも知れないし。

 本当に許せないようなやつなら、陰湿にいじめずに爆薬で吹っ飛ばしてやるわ)


 ゲーム内では、爆薬はあくまで資金を得るための道具ツールでしか無かった。

 しかし、今のキャサリンは自在に爆薬を扱える。

 陰湿な攻撃を使わずとも、直接攻撃の手段を持っている。

 血を見るのが苦手な彼女に、直接攻撃は無理だと思われるが。


(大体、魔物軍団をけしかけるって何?

 自分の仲間でもあるクラスメイトたちまで巻き込むなんてどういうこと?

 さらに、仲間が傷ついているのに魔力やアイテムを温存するって。

 そんなこと、出来る訳無いし、あり得ない)




 あと、主人公の仲間が戦いで全滅した場合だけ、ゲームオーバーになる。

 圧倒的な戦力で、クラスメイトごとクララを倒す。

 これは、心情的に選択したくない。


 クララだけでなく、クラスメイトが犠牲になる。

 クララが犠牲になっても良いという事では無いが、クラスメイトの中にはキャサリンの取り巻きもいる。

 主人公を倒すために、仲間ごと犠牲にするなんて彼女には無理だった。


 セメンタイトでリー男爵たちが護衛の者に殴り倒されて、出血していた。

 その場面ですら、キャサリンには直視できなかった。


 戦ってクラスメイトが血を流す場面など、元現代日本人 明神みょうじんさくらには無理ゲーだ。


 戦って勝つのは、本当に戦う以外に助かる道が無くなった時だけだ。

 勝てる準備だけは、念のためにしておくが。




 ゲームでは、二人の皇子とは主人公のクララが先に出会う。

 後から来たキャサリンが、地位を利用して皇子との婚約を決めてしまうが。


 それに対して、主人公は誠実な対応で皇子の心をつかんで、逆転してしまうのだ。




 まだ、10才の夏だ。

 主人公と皇子たちは、出会っていないはずだ。

 先手を打って、出来る限り上手く立ち回る。

 ゲーム世界を、恋愛ゲームで終わらせる。

 戦いは絶対に、ご免だ。


 生き残りさえすれば、キャサリンは貴族の令嬢だ。

 今回の旅で分かったが、父も優秀だし、ゲームには出てこなかったソフィアはとてつもなく強い。

 幸せに生きていく道は、いくらでもある。


 ノーベル家が没落すれば、貴族の令嬢ではなくなるが。

 それも、何としても防ぐつもりだ。


「いよいよ私にとっての決戦の地、帝都ナードハートなのね。

 絶対に負けられない戦いが始まったわ!」


 彼女は自分に気合を入れて、決意のこぶしを握りしめた。


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