動く記憶
美しいラインだ。
美術教室にあった石膏像……
スケッチされるために、
象られたような横顔を見かけた。
また一枚増えた。
静止画が何枚か、記憶にある。
重なり増えていくその絵は、
自分が求めてきたものなのか、
どうなのか、わからない。
ほんとうは、
生きてきた全ての動画が、
記憶の棚にはあって、
再生できるものはその断片で、
美しいもの、恋しいものは、
静止画にしかならないのでは
ないか。
動画になると、今の現実よりも、
その記憶ばかりを追いかけるから。
時々、町ですれ違う、
焦点の抜け落ちた目は、
動く記憶を見ているのだろうか。
くだらない夢の競争に、
付き合っていく日々。
あの横顔……
ああ、動き出さなければいいが。