53話 死んでも劣勢は変わらない
ミスラが黄色の髪を揺らしながら
右の剣を振り下ろし、勢いで回転、左の剣で狙いを定める
「ぐっ、出てくるのは短剣だし、炎も効かない...」使えない...と言ったように、いや、実際シャドウはそう言っていた
「熱いよ、ただ、それだけ」
ビュンッ
止まったシャドウを水の玉が襲う
ミスラは、シャドウと一定の距離を保ちながら戦えていた
セレナの援護もでかい
セレナは全体にちょっかいを出しているようだけど、コルの方が厳しいらしい
「この炎が効かないはずがない...」
確かに、実際肌は少しずつ黒く染まっている
ただそれを見せれば向こうが増長するだけだ
「...ぐぅ、そうか鳥の方がメインか」
ぶつくさ言いながらシャドウが走ってくる
ジャンプして、殴りかか...らずに?
私の上を超える
目線をあげると
炎の羽を広げたシャドウがいた
「だいぶ慣れてきた、待たせたね」
炎の棒を投げてくる
一方的に攻撃が始まる
時折、体を雷に変えて速度を上げて避ける
上にジャンプしても羽ばたきもせずに横移動して避けられる
「ふふっくくくっ!あっはっはっ!」
シャドウが高笑いをする
...性格変わった?
「飛べるならっ上から攻撃し続ければ勝てるじゃんっ!どうしてみんなしなかったのさっ!」
みんながし始めたらただの空中戦...とは言わなかったが
「私の教えられた歴史に、空から一方的に攻撃をする戦法はあった、だけど廃れたらしい」
「は?何言ってんの?」
ヴウン、と私を中心に魔法陣が展開される
空中戦法と共に廃れた
空中の敵にしか使えない魔法
ただの追尾魔法よりも威力も上乗せできる魔法
「広範囲追尾炸裂雷弾」
地面に威力を吸われないからこそ真価を発揮する魔法だ
チュイン...
「え?」
シャドウは必死に移動をして逃げようとするが一発当たると全身を震わす爆発が起きる
その一撃で動きが止まり、躱されて後ろに行き、戻ってきた雷弾も当たる
「ぐぅ...」
そしてこの魔法は炸裂により、震えた分だけ魔力が描き乱れる、飛ぶことが出来なくなるのだ
ドサッ...
追い打ちをかけるために近づくとセレナが叫ぶ
「魔力が変わり始めてる!注意して!」
炎が消失していく
少し距離をとり、雷を放つことにする
バチッ...
「うぐ...えっとシャドウ・フュージョン、タンザナイト」
焼けたところが青くなっていく
青い鎧を着ているような姿だ
「お前、後悔させてやる...」
髪の毛が青くなり、セレナのようなショートカットになる
声も...変わった?
シャドウが手に作ったのは、模様付きの水球
セレナが一番使っている魔法だ
「...!」
急いで距離を取ろうとする
「魔水爆発」
何とか避けれた、ただ、本当に、セレナの魔法と同じな気がした
...いや、本当に同じだね
シャドウに近づく
目の前に来た時に水球を投げられた
「馬鹿め、これなら避けれない...!」
双剣で同時に斬り掛かる
バシュンっ
水が、かかった
ザシュッ
私の双剣がシャドウに深々と刺さる
「あが...」
細かい仕様まで真似してくれて助かったよ
よくいる私と、今だけコルはこの爆発を受けない、セレナの改良を重ねた魔法だ
「人の真似してるだけ、負ける気がしないわ」
パーティー制の勝ち判定詳しく知らないんだけど...こいつ何回倒せばいいっ!?
体力ゲージみたいなのをバトル場の外に見かけるが片方は半分くらい減っていて、片方は減ってない
周りを見るとセーラとセーラの言っていたバンシーと言う子が何か話しをしている
コルは...倒れている、セレナが割り込んでいるけど...相手は悪魔?
「シャドウ・フュージョン、オパール
エーリュシオンっ!」
目を離したのは間違いだった
世界が歪み出す、シャドウから黒い光が放たれる
「私を見せやる、全てを堕とし、糧とした、私の人生をっ!」
◇
コルが白い髪を揺らす
この吸血鬼に、魔法が効かない、オラクルが水球を飛ばしたが、たどり着く前に掻き消えてしまう
...そういう意味では私たちが相手をして良かったのではないか、と思った
魔人化した鳥人が全線をはってオオカミが隙をついて攻撃する
ダメージを負ったら離れてレイス達が運びオラクルの水と私で癒す
回復をすればダメージのゲージが増えたので何とかなるかもしれない
そう、思っていた、そうだといいなと希望を抱いた
スカージレットにとって、私達は雑魚に過ぎなかった
いくらオオカミと鳥人が頑張っても傷を負わすことが出来ない
その場から動かさないほどの攻撃間隔は維持できていたが、その攻撃がダメージにはなっていない
「ちぃ...鬱陶しいな」
スカージレットはそう言い攻撃を受けながらも叫んだ
「眷属たちよっ」
スカージレットから蝙蝠が飛び立つ、どこにいたのか分からなかった、いや、いなくて、今生まれたのかもしれない
蝙蝠達が飛び、スカージレットの上で集合し始める
この時、相手側のゲージが削れているのを見逃さなかった
すぐさまレイスにも言う
「レイス、みんなの方でダメージになってそう?」
「なってなィよ」
「じゃあ、やっぱりスカージレットが作り出した眷属はあいつにとってダメージになっているみたい...」
集合した蝙蝠達が降りて、スカージレットと鳥人、オオカミとの間に入り、飛び回る
「めんどくさかったよ」
目の前に現れたスカージレット
頬を触れるように触られ、そう言われた
視線を横に向けるとオラクルも同じようにされている
...分身?幻?
目の前のスカージレットが蝙蝠になっていく
鳥人達も触れられていたようで
思考が停止し、触られたところを撫でる
「アウェイク」
その言葉を聞いた瞬間思い出す
今まで受けた攻撃を、トラウマを、ダメージを
無力だと教えられたあの背負い投げを
逃げる事になったあの魔法を
見ることしか出来ない回復魔法という立場を
「...うぐ」
心が、苦しい
涙が溢れて、助けて
オラクルが鳥人達が膝をつく
私も...もう...
薄れる視界で、蝙蝠が集まりスカージレットになっていくのを、同時にダメージのゲージが回復していくのをみた
スカージレットと私達の間に入ったのはセレナだった
「トラウマの想起とはね...腹立たしい、でも私は倒れない、姑息なお前なんかに私は負けない」
私...だって...ま...
その決意虚しく意識が途切れる
ミスラ、コルの視点です
多少時間の前後が起きてはいます
死力を尽くしても劣勢には変わらない




