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死んでも私は生き返る  作者: ファイル
5/62

05話 死んでも魔物は受け入れられない

ザリ...ザリ...


前方は森が広がっていて一部が燃えている

景色は一定間隔で後方に流れている


私は今、オオカミに頭の上で組んだ両腕を加えられた状態で引きずられている


全身が痺れていて上手く動かすことが出来ない


首は動かせるのでオオカミの方を向く


テントの中で私が襲われる前にどうやら先にオオカミが襲われていたようだった


テントの中に入ってきたシェリダンに雷魔法を浴びせられて麻痺の魔法陣を使われた


らしい、オオカミがそう言ってきている

いや、随分と正確に伝えてきたな

多分、いや、確実に意思疎通がとれる


何故かは分からないのだけど


その雷魔法でオオカミの右前脚は炭化し右半身が全体的にダメージを受けたようだ


それでも動けるまで回復したのは私の体をくらい続けたから、と言ってるけどそこがどうにも分からない


私の体を食った場合の効果ねぇ...


炭化した右前脚も少しずつ治っているらしい、凄いな


しかし使えないことには変わりはないためゆっくりとした移動になっている


街の外壁はもう見えているらしい

あと少し


「おいっ!」

「止まれっ!」


私の後ろから、街の方から声がかかる


「がぅ」


「その人を離せっ!」


腕を口から離され空を見上げる形になる

上を、街の方を見ると壁にある門に人が複数人いるようだ

鎧をつけた人がこちらに剣を構えている


「ぁあっ...ぐあ...」

声を出すが掠れたか細い声が漏れるだけだ

...もしかして不味い状況か?


「今動いたぞっ!」

「くっ!離れろっ」


バシュンと音がする

ドスッ

「きゃうんっ」

オオカミの横っ腹に矢が刺さる


「...っ!...ぐぅぁっ!」

まてまてまて...こいつは違うっ!


バシュンっ

再び矢が放たれる音


起き上がろうとするが力が入らない

ドスッ


矢は曲線どころかありえない軌道でオオカミに襲いかかった


オオカミは避ける素振りすら見せない

「がぁぅ...」

苦しそうにするオオカミ


なんで避けないんだっ


...このままだとオオカミが死ぬ


オオカミ...逃げろっ


強く想いながらオオカミを睨む


「くぅ...」


バシュン


再び矢の放たれる音

オオカミは避ける気がないのか下を向く


2本目の矢は一本目のすぐ横に刺さった


仮に矢を射った人が確実に当てれるのなら


狙いは同じ...




私は痺れる体に鞭を入れ気力で体を動かす


ドスッ


矢は立ち上がった私の肩に刺さった

「あぐっ...」

「うがっ!」

オオカミが声を上げる


よろめきながら膝をつく

痛い痛い痛い!痛すぎる...


「くぅん...」

傷口を見るように覗き込んでくるオオカミ


ふっ心配しなくても死にはしないさ

いや、死にはするけど


バシュン


はっ!?

まだ射ってきたのか!?

街には背中を向けているので正確では無いが恐らく射ってきている


オオカミっ!逃げろっ!直ぐだっ!


「がうっ」

ビクリと体を震わすオオカミ

大声、では無いが気持ちの大きさが伝わっただろうか


このままではお前は殺される

そんなの私は嫌だ

後で絶対に会えるはずだっ


私の顔の表情は動いているだろうか

私の頬を涙が伝う



「がう」

ドスッ


数歩後ずさりをするオオカミ

オオカミのいた場所に矢が刺さる


少しずつ距離を置くオオカミ


私は私の命よりお前の命の方が大事だ


死んだら絶対許さないっ!


「ガウッ!」


一声鳴いて走り出すオオカミ、右前脚が使えずにぎこちないが速度は十分に出ている



後ろから足音が聞こえてくる

「大丈夫かっ!」

「治療の準備を!」


私を心配する声に紛れて聞こえてくる別のタイプの声


「おい、まだ追えるか?」

「手負いらしいからな行けるぞ」


オオカミを追おうとする声も聞こえる

何人いるんだ?

何とか注意を引けないか...?


足音の近いのはもうすぐそこまで来ている

下手に火を使うと巻き込んでしまうかもしれない...


上、頭上ならどうだ?



ゴウッ


そこそこ大きな火の玉が私の頭上に発生する


「新手かっ!?」

「でかいっ」

「エレメントかっ!?」


口々に騒ぎ出す人達

近くからと少し離れた所から


注意は引けたみたいだ

エレメントは確か霊系の魔物だったかな

その手があったか


バシュン


打つの早いなさっきからお前ぇっ!!


ぼしゅっ


矢は火の玉にあたり燃えたようだ


くらっ


...うっ眠気?


そんな...なんで?


急にきた眠気に逆らえずに私は意識を手放した



「うぅ...んっ」


目が覚めると椅子に座りシーツをかけられていた

目の前は茶色の...木造の壁に扉

眠ったあと運ばれたのだろうか


「ぁっ」

木の扉から覗いていた頭が引っ込みどこかに走っていく


女性...女の子?


周りを見る

ここは...倉庫?

木箱や樽

袋に瓶

何となく埃っぽい気もする


格好は裸に薄い茶色のローブ

まぁないよりマシか


椅子から立ち上がる

扉の向こうからバタバタと足音が聞こえ

扉が力強く開けられる

バンッ

「おきっ...」

「あぁ助かっ...」


バタン

大人の男性が扉を開けて固まり、無言で閉める


「えーなんで閉めるのー?ねー!」

女の子の声だ、さっき顔を覗かせていた子だろうか

ガチャ

扉が少しだけ開く


そーっ

明るい水色のショートの髪の毛の子

が先ほどと同じように顔を覗かせる


「あの」

「はだか?ローブ着てるよ?」


向こうで話しているようだ

「ふむふむ、えっとね?前を隠せだって」

「分かった、そうしよう」

先程の男性は私の格好に文句があったらしい

裸ローブ、前締めず

「...」


ぎぃぃ...

扉が開き男性が入ってくる


「先程目が覚めたのかな?私はマスター、よろしく」

「私はセーラだ、よろしく」

向こうが握手を求めてきたので応じる


「マスター?」

「あぁ、ここの酒場のマスターでね、皆からもそう呼ばれている、いつの間にか自分でも名乗るようになってしまったよ」


はは、と笑いながら話してくる、悪そうな人ではないかな


別の酒場のマスターが来たらややこしそうな名前だな


「ここは酒場なのか」

医務室とかでは無いのだな


「あぁ、私が保護したのもあるのだが」

「っ!オオカミ、オオカミはどうなった?」


「...やはり君は魔物使いだったのかい?」

「あ、いや、そんなところだ」

なんて言うべきか迷ったがオオカミを心配する理由にいいのが思いつかなかった


あのオオカミも結局のところ魔物


「オオカミは行方不明だ、あの場にいた人も数人は森の見回りから帰ってきている、誰も探しに行ってない」


「そうか...矢を射った奴は」

とりあえずは討伐されることは無いと


「あぁ、火傷で治療後はダンジョンの方に...ここじゃなんだ、酒場で食事を出しながら話そう」


「...助かる」

ごめん、お腹すいたみたいだわ


話の途中でクゥとお腹を鳴らしてしまった

街の人にはオオカミがどこでセーラを食べるか場所を探しているように見えてました


魔物は倒すべき、その意識があり受け入れられません

たとえ体を張って守っても...


(2019/04/16)

ナンバリングの修正、後書きに追記しました

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