43話 死んでも森で迷子になります
ガイアの依頼も済んで、いつもの生活が戻ってきた、まぁ対戦も減ってぐうたらしてるようなものだけど
そんなときに黒服が持ってきた話
「それで、この地図の場所で調べて欲しい、と?」
「はい、これも依頼扱いでこなすことが出来ます」
ある街に出現したオオカミの調査
場所的に転移の恩恵は無いようで直接向かう必要があるらしい
「旅、か...」
久しぶり、そんな感情が湧く
「うぅん...」
途中から話を聞いていたバンシーが唸る
「どうしたの?」
「私、しばらく対戦の予定いれてて...だから行けない...セーラ、一人で大丈夫?」
...バンシーは私をどう見てるのかな?
まるで子供みたいに
「いけますぅ!黒服、これを受けるわ!明日の朝には出ます!」
「えぇ?セーラ?」
「大丈夫っレイス達も前より使えるし、道なら野鳥に聞けば行ける気がする」
大丈夫大丈夫っとバンシーに言う、今回バンシーなしでも大丈夫ということを分からさなければ
◇
翌日、準備したバッグをレイスと私が持って街を出る
馬車を使おうと思ったが雷の街からは隣町への馬車はなるべく急ぎの冒険者に使いたいらしく、自分から辞退した
のんびりと歩いていく
今回の依頼の期限は迷いの森と呼ばれる森を通ることもあってないらしい
期限なしとは、気楽にもなる
隣町からは空いてる馬車に相乗りさせてもらったりして順調に進んでいく
食事の準備は私の火とレイス達で特に問題なし
寝る時がふかふかに慣れすぎたのかテントはあまり寝付きが良くない
そのくらいか
特に事件が起きるとかもなく
迷いの森の入り口に着いた
「迷いの森、と言うよりも魔法の森じゃない?」
少し先は暗く、道は明るいのに先は見通せない
レイス達も私から離れたがらない
曰く、離れると攻撃されるらしい、誰によ
常に魔力操作をしている感覚が漂っていて、森が一つの魔物のような感じさえする
あと動く木、魔物の木が普通にノシノシと歩いているので目印も付けずらい
火は魔力でかき消されてしまうのは予想外だった
「馬車の人達もここには近寄るなって言うのも少しは分かるなぁ...」
そう言って後ろをむく
「...ねぇ、レイス」
「はい」「なにー?」「うい」
「私達、森の入り口にいたよね?」
そこから先に進んでいない
はずだった
後ろは、いや、周りは既に森の中に居て
私達は迷子になった
◇
「ありえない!」
私達が森にのまれてから三日がたった、のまれた場所に目印を作った、大人数で囲うようなキャンプ用の火のやつを
そこから先に向かうが、その目印に何度も戻ってくる
レイスを上に行かせたが
下から出てきたのはギャグかと思った
そうはならんでしょ...
ゴオォオッッッ
日が落ちたのもあるが、キャンプの木組みに火をつける
正直なところここに戻ってくる腹いせだが
「もえろー!」「あついー!」「もえろー!」「きゃー!」
レイス達は楽しそうに火を囲んでいる
私は出られないのではとか不安になっていた所があったのだが
レイスは木の実取れますしー
と、別に平気そうだった
基準は知らない
朝、テントの外が騒がしく思い目が覚める
チュン
小鳥...
チュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュン...
「何事っ!?」
地面いっぱいに広がる丸っこい小鳥たちに驚き声を荒らげる
すると一斉にバサバサと跳び、飛んで私に向かってくる
「はっ!?」
...私は止まり木になった
いやいやっ
「おー」「うまったー」「ふかふか?」
外から見ると小鳥で埋め尽くされているようだ、どちらかと言うとくすぐったい
あと直だとくい込んで痛い
パタパタ...
前髪を引っ張られている
グイグイと引っ張られるまま進む
「レイスー、片付けてこれについてくよー」
「あいー」「わかた」「まってー」
後ろでガチャガチャ音がする
首周りにも小鳥がいるので振り返りずらい
あー、レイス達、ちゃんと出来てるな、よしよし
ある意味での鳥人間となりながら森の中を進んでいく
丸っこいふわふわの鳥
懐いているのもいるのかスリスリしてくる子もいる
可愛い
ただピヨピヨうるさい
チュンチュンよりかは...いや、どっちもうるさい
「お前...何しに来た...言葉は通じるかっ」
左から声がする
「あー、はい、聞こえてます」
「うわしゃべった!?」
ちょ、鳥、邪魔
チュンと鳴くとバサァと飛び上がる鳥達
視界が晴れる
「...ちっ、人間か!」
そう言いながら襲いかかってきた...
怪我をした...天使...鳥?鳥人間?
女性の顔、声、体型なのだが
私に近づいてくると右手と右腕が鳥の鉤爪に変わっていき、腕には赤い羽根がワサワサし始めている
...左側、顔も、腕も足も、何かに轢かれたように血で真っ赤になっている
「この...うっ...ちか...づ...」
私の前でへなへなと倒れ込み、しかし必死に攻撃しようと腕を伸ばしている
息も絶え絶え、今にも死にそうな状態だ
「レイス、秘薬の準備」
この鳥人の血は乾いている、何日もたったのだろう、足の方を見れば血の上から砂を被っている、こんな状態でどこかから移動してきた?
いつ死んでもおかしくない
座り、レイスから受け取った秘薬を口に押し当てる
「これを食べて」
「う...」
「はやくっ!」
「あぅ...んぐ...」
喉を通ると鳥人の顔色が良くなっていく
ああー嫌だ、こんなので元気になってしまうのが嫌だ...
秘薬の素材は私だ
そう、私なのだ
頭を抱えたい、しかも作らされてはいるが製作者も私だ、狂ってる
出来たのは美味しい一口肉団子
もう嫌だ
バンシーに情報を流した誰か絶対許さない
...まぁ、助かる命があるなら私も救われるけど
「...何を食べさせた」
「...秘薬」
「私にはお前からあまり良くない雰囲気を感じるぞ」
のそりと動きながらこちらを訝しみながら見てくる鳥人
「私を好きになる薬入り」
間違ってはない、少なくとも敵対心は薄れる、あと再生力は私のお墨付き
嫌だけど
美人が台無しになるほど苦い顔になる鳥人
「...まぁ助かった」
意思疎通が取れやすくなるおまけ付きなので、意思疎通の魔法的にこの鳥人は魔物、使い魔の対象とも言える
言葉を喋れる魔物とのエンカウント事態がそもそも初めてだけども、効くのか...
「何があったの?」
「う...私達を、助けてくれないか?」
私の質問の回答はなく
お願いをされた
これが鳥人、ハーピーとの最初の出会いだった
セーラの認識ではレイス達はセーラの一部のような感覚です、まとめてセーラ
迷いの森とは良く言ったもので、正確には迷わせてくる森です、性格は悪そうですけどね
んー、うまいっ!(どこからかグーパンチ
そういう訳で死んでも迷子です




