42話 死んでも神秘的で幻想的
「そんなに構えなくてもいい」
師匠さんがそう言ってくれる
いや、これは勝手に...
「向かう」
緊張感のある雰囲気の中
ガイア、師匠さん、バンシー、私と
進んでいく
入口は膜のようなものが張ってあり先に進んだ三人の姿は見えない
グワンとした感覚を覚えながら先に進むと目前に広がるのは神秘的な場所だった
周りは暗いが中央は光が差し込んでおりその光が当たる場所は周りより少し丘になっている
その丘は緑が広がりキラキラと輝いてみえた
そこにいる白い龍
そんな様子を少し見下ろすほどの高さと遠さの場所に私はいた
先に行った三人の姿は見えない
「クルルルゥゥ...」
白い龍は大きなトカゲのような体躯
ただ、首は長く前足は小さい
背に折りたたんであるようなのは羽だろうか、そんなんでは飛べないだろうなっていう感じで体の大きさとは釣り合ってないが
...私ならエンシェントドラゴンって名付けるね
そのくらい神聖な雰囲気が漂っていたから
そのドラゴンが私を呼んでいる
申し訳程度の魔物使いになった時に受け取った特殊魔法の意思疎通が反応したような気がした
ドラゴンの様子に目を奪われながら近づいていく
『人の子...よ』
人の子?と聞くように声が響く、自信なさげに聞かないでください
「人の子です、特異魔法で多分年相応の姿じゃないですけど」
姿詐称はいつからだっけ
まぁスタイル良くて悪いことはないでしょ
「それで、ここは、みんなは?」
『ここのダンジョンはその者にふさわしい場所に誘導される...お主の姿は...』
言いずらそうに躊躇っているドラゴン
「なに?」
『その、見えすぎている、本来人の子の魂は肉体に隠れているものなのだが、お主は剥き出しだ』
「へぇー」
身体は戦いの中で順応化されていった結果としては脆くなった
肩が外れるどころかもげてでも懐に入ろうとしたりする時とか有効的に働く
あれ?魂が剥き出しとは関係ないのかな?
『ここに誘導したが、良かった、お主に助言を与えよう』
「...ありがとう?」
『魂を護る、加護か保護を得るといい』
ばさぁと翼を広げるドラゴン
「...え?それだけ?」
翼を広げ上にグリンとしなりながら宙に浮く
『経験者は足が早い、混沌の者もお主を探しているようだ、ふさわしい存在を与えねばな』
翼は羽ばたかせないで浮いたまま言う
そしてグワンと羽ばたくと
シャラシャラしながら光の差し込んでいる上の穴から飛んで行った
「...羽いらなくない?」
細かい助言が欲しかったとか、割と何言ってるか意味不明だったとかも言いたかったけども
零れでた言葉はそれだった
◇
「セーラっ」
いつの間にか壁に穴が三つ空いていてそれぞれ姿を見せる
バンシーは私の元まで駆けてきた
「ここがバラバラになるとは思わなかった」
ガイアはそんなこと言いながら歩いてくる
師匠さんは首をかしげてる
ぐるぅうあぁ...
四人が中央に集まった辺りで空からドラゴンの鳴き声がする
「...来るぞ」
ガイアがそう言うとそれぞれ武器を持って構える
槍、片手剣
バンシーは背中から蛇の尾っぽを二つだす
特注の服の素材は内緒って言われたが絶対スーラの一部だと思うんだ...穴もあかないし
私もレイス達に意識を通す
レイス...
「あい」「ていさつっ」「かこって」「うえからっ」「うえにもきてっ」
私を半球状に囲う
レイさーの姫なう
うぅんっ
そして炎の魔法を濃縮させた短剣を右手に
物理的に剣ともやりあえる私の武器だ
全てが深紅の短剣、元は特異魔法で生み出された魔法石とか何とか
...アクネさんを通して発注されており事情も通して作って貰った
会ったことは無いが...
薬だと言われて飲まされた魔法石、実は武器でしたーとイタズラ顔で言ってきたアクネさん
あれはひどいと思う
ズオン...
急降下から急停止、私達の目の前に現れたのはドラゴンさんの仲間だとすぐ分かる体躯だった
ただドラゴンさんよりかはスリムで羽の大きさも相応だが
...騎乗するには丁度良さそう
「グォオオオオァアアッッッ!」
叫び声を上げる赤いようなオレンジのような色の龍
ただ知能はあまり高くないようで...
師匠さんはもう斬ったようで龍の後ろにいる、宙で屈んだように静止している
レイス達が押さえ込み、バンシーが羽の根元を蛇の尾っぽで押さえつけている
ガイアは龍の目の前に歩いていく
...私も意思疎通の手伝いをしないと
短剣から手を離すと炎となって消える
出番はなかったね
登場して咆哮をあげる暇があるわけないだろう、バレバレの登場でこっちは姿が見える前から戦闘が始まっていたのだから
まぁサイズだけは龍として見合ってるね
ぐぅと唸る押さえつけられている龍に触れるガイア、私は龍とガイアの触れている所を包むように両手を乗せる
知能のある魔物と深く話し込むためにやるんだっけ?魔物使いとして契約する時だけだっけ?
バンシーがどこからか探してきてくれたやつ見直さなきゃなぁ...
一瞬、クラっと意識がとぶような感覚に襲われる
立ちくらみにもにていたが
手が離れて数歩、後ずさり、ガイアたちを見るとどうやら上手くいったようだ
レイス達...
「おつかれー」「しゅー」「りょー」
「かえるー」「もどってー」
スー...と私の元に戻ってくるレイス達
うん、外でも団体行動に統制がとれるようになったね
「みな、助かった、無事に契約出来た」
ガイアがそう言いバンシーと師匠さんも集まってくる
「呆気ない?」バンシーがとたとたと寄ってくる
「以前は風圧と咆哮にも困ったが修道女の幽霊が風と圧を...黒の娘が足場を設けてくれた」
師匠さんが私達のおかげだと言ってくれる
バンシー、この子は何者だ?的なニュアンスで言われてるよ
「助かった...では、帰るとしよう」
グオォと龍が唸るとひと回り大きくなった
...おぉ
その背には四人乗ることが出来て上の穴から空に羽ばたいていく
バンシーが先頭で私がその後ろでバンシーを守るように龍の首元に跨る
「風があまり来ない?」
バンシーに抱きついて顔を乗せてとろけていたらそんな質問をされた
「一応レイスにも働かせてるけど必要ないくらいには龍が何かしてる」
つまりは乗り心地もバンシーも最高ということです
景色もいいし...
森は深い上に広い森だとは分かった
そのまま上に上がっていく
一瞬、雲の中に入るがすぐに抜ける
雲の上はどこまでも続いていくような空と
川のように流れる雲
遠くに落ちていくような日がとても幻想的だった
契約する瞬間はこの間一秒...的な感じで外の人達とは時間の感覚がズレます
今更ですけど戦うほどにセーラとバンシーは人から遠い存在になってますね
死んでも神秘的な場所や幻想的な景色は独特な感覚に陥ります




