40話 死んでも頭はパンクする
「セーラ、一回死んだでしょ」
「そーなのー、久々に痛かった」
熱さが痛みに感じるのは本当に久しぶりの感覚だった
ははは...と笑うがバンシーの目は鋭いまんまだ
今は鉄格子から控え室に戻り、部屋に戻ったところだ
レイス達は変わらず忙しなく動いてくれている
ちなみに私の姿は布一枚巻いただけの姿だ
「もう...」
そう言いながら左腕を中心にぺたぺた触ってくる
「んー?なにー?くすぐったいよー」
怒り気味なので抵抗しないでおこう
別に嫌でもないし
「あれ...肌綺麗になってる?」
あー...そっちに目がいったかー
体を洗うより死んだ方が綺麗になっちゃうのよね
しばらくイイなーイイなーと散々言われたあと
「露出度の少ない、燃えにくい装備を買いましょうっ」
手をパンと叩きながら提案してくるバンシー
「べつに燃えにくいだけでもいいんじゃ?」
「ダメっ!絶対!」
バンシー断固反対の構え
露出度...何か関係あるかな
「ここらしい」
バンシーがメモを片手に一つの店の前に立つ
「ここは?」
「おすすめの服屋だって」
へぇー
外観は至って普通
それどころか周りが民家なのでここも民家にしか見えない
店にすら見えないのだ
商業通りにある訳でもないし
隠れ家的な店...てきな?
カランカラン...
「はーい、どなたー?」
なんの躊躇いもなく入っていくバンシー
店じゃなかったらとか思わなかったのかな
「ガイアから聞いたバンシーです」
「きゃぁっ!バンシーちゃん来てくれたのねっ!」
玄関で背の高い女性に抱きつかれるバンシー
「むぐ...」
少し後ろで勢いに押されて黙っていたがバンシーが助けを求めるようにこちらを見てきている
「あの、えっと...」
「セーラちゃんもっ!ほら入って入って!」
白い糸が飛んできて胸元に当たる
「うえ?」
ぐんっ
その糸に引っ張られるように店の中に引き込まれた
このお店は店主アクネさんが一人でやっているオーダーメイドの服屋らしい
アクネさんは色白な肌に白い長い髪に高身長で
なんというか理想っ!みたいな?
「そんなにキラキラさせても服しか作れないわよ?」
バンシーは服のデザインを書いている
子供のお絵描きのようで可愛い
「アクネさんも参加してるんですか?」
さっきの糸は魔法だろうか
この人は強そう
「あはは...参加者になってるけど戦わないからね?」
戦わなくていい契約を取り付けたとか何とか
「さっきのって特異ですよね」
「そうねぇ、だからここに居ざるを得ないというか...」
自分の手を見ながら何か考え込むような様子だ
「でも私の服を買いに来たってことはあなたも普通じゃないのでしょ?」
私を見定めるように見てくるアクネさん
その目は冷たく自然と背筋が伸びるような目だ
「うん、セーラは体質的に燃えるからね」
バンシーが私が躊躇って言わなかったことをサラリと言う
「バンシー!?」
「ん?警戒してるの?んー」
何か考えてるように上をむくバンシー
手元の服のデザインがちらりと見える
...上手いな
「アクネさんも私みたいな人と思っていい...んだよね?」
バンシーがアクネさんとアイコンタクトを取っている
「そうね...セーラちゃんに授業でもしてあげよっか?」
「授業?」
「うん、それがいい、私に後で教えて」
バンシーはそう言って服のデザインを描き始める
えぇ...
なんかキリッとした服に着替えてきたアクネさん、すごいノリノリだ
「セーラちゃんは特異魔法ってどんな認識?」
「特異魔法...は個人の専用魔法...です」
人それぞれ違う魔法
全くおなじな特異魔法はないと言われている
同じ魔力消費なしでも威力に違いがあったりと差異も含めるけど
「でもおかしいと思ったことは無い?明らかに...私たちの魔法は強すぎる」
小さな声で、この街の人は特に
なんて言っている
ただ、それは確かにそうだ
多くの人は固有名の魔法、例えばファイヤーアローとかが使いやすくなったり強くなったりする、それが多くの人
アクネさんは恐らく糸を出すのだろう、それは固有名の魔法ではなく特殊な部類だ
私は死なない魔法、なんて多くの人からすれば常識から逸脱している
「...あなたは知らないかもしれないけど妖精魔法なんて言うのもあるの、それは妖精の力を借りて行う魔法、私たちのもそれと同じなの」
あーっと?情報過多になってきた
「私たちは何かしらの生き物から力を借りて魔法を使ってる、それは異質だから特異魔法として見えてるだけ本当は他の人と変わらないちゃんとした特異魔法が...」
「おーい...?セーラ?」
窓から夕日が差し込んでいる
「はっ...」
気がつくと目の前にはバンシーがいてアクネさんはこちらを見てクスクスと笑っている
「ちょっと難しかったみたいね」
仕方ない子、と笑われてしまう
どうやら授業中にショートしたらしい
私の頭では理解できなかったらしい
「服は出来てるわよ、バンシーちゃんから教えてくれたのが本当なら毎日着て馴染ませてあげるといいわ、大丈夫、お姉さん口は硬いから」
キュッとお口チャックと仕草をするアクネさん
私を見ているのでバンシーがアクネさんに何か言ったのだろう
多分私が個人的に秘密にしたいこととか
...バンシー!?
「ありがとうございます、私も大事にしますね」
「うふ、魔力で再生するから期待以上だと思うわ」
「足りなかったぶんはまた稼いできますね!では、いこ、セーラ」
...バンシー!?
そのままバンシーに手を引かれて店を出ていく
なんか今日はずっとバンシーに振り回されている気がする
頭も別の角度からの情報過多でいっぱいいっぱいだ
何となくボーッとしながらバンシーとご飯の買い物について行き部屋に戻ってきた
「...ふぅ」
何だかとても疲れた
そう言えば私はお昼食べてないのだけれどどれくらいショートしていたのだろうか
ご飯を食べると明日に私は戦うことを知る
今日は早めに寝ようかな
「セーラ」
後ろを見ると目をキラキラさせたバンシーが一着もって立っている
「...それが私の服?」
「うんっ!」
バンシーの目から獲物を狩るような雰囲気がある
「ね、寝ようかと」
「着て?」
「...」
「ね?」
うるうると上目遣いから圧を掛けてくる「ね?」とは拒否しずらいなぁ
ガシッ
肩を掴まれる
あれ、バンシーってこんなに怖かったっけ
「ダメ?」
「はひ...」
着替えさせられたあとポーズを取らされたり小物持たされたりで私が寝るのは随分と後になった...
セーラの頭が特異魔法の情報を拒否したってことは知らなくてもいいってことです
そういうことです
死んでも情報過多で処理が追いつかなくなればパンクします
知ろうとしなければ知らないことなんて沢山あるからいいのです




