34話 死んでも戦いは好きらしい
模擬戦の始まりの合図と共に剣を構えて走り出す
バンシーも走り出し、跳躍、回転と降下と、勢いをつけた重い一撃を踏ん張って耐える
ガキィイィインッッ
心地良さすら覚える金属音
あっっれぇぇえ??
軽く撃ち合うだけじゃ...!?
私の認識はスーラと同じ、ならと、勝手に解釈していた、生前のバンシーとドーハの認識も混じってること忘れてた
ズサ...
撃ち合ったままの体制
バンシーは落ちずに高さの有利を残している
どうやってるのそれ...
体制が辛く、持ちそうにないため横に逃げる
「うわとととっ」
ズダンッ
「ふぅー...」
ゆらりと立ち上がるバンシー
長い髪から見える目はまるで獲物を前にした狼のようで
目で鳥でも落とすような眼光に体が疼く
「ふふっ」
◇
セーラには悪いがスーラの認識は置いといてもらう
適当に撃ち合って終わるなんて勿体ない
バンシーとドーハの認識がどうとか後から言い訳でもしよう
さて、初撃は不意をついても合わされてしまった、せっかくだからもう少しやり合いたいのだが
セーラを見据えると
笑っているような気がした
そしてのんびりとしたような空気が変わる
「バンシー、三割」
力を出す割合だろう
ドクンと高鳴る
あぁ、心が跳ねるようだ
きっと私は笑っている
腰を落とし、剣を構える
酷く楽しい時間が始まる
◇
つい楽しくなってしまい鋭い斬り合いをする、それにバンシーも乗ってくれたようで良かった
しかし楽しい時間はすぐ終わりが来てしまう
びしっ...
何度かの撃ち合いの時にバンシーの剣にヒビが入った
力では筋力的に勝っているのもあるかもしれない
安物の剣なんかにするんじゃなかった
バンシーは驚き、ヒビを守るような無理な受け方をしてしまう
それによりバンシーの剣が折れる
「あっ」
「ちぃ、まだ...」
それにより冷静になる
バンシーはまだ興奮状態のようだが
「あぁあっ!」
変わらずに折れた剣を構えて距離を詰めてくる
走りながら剣の足りない部分を水魔法で形にしていく
「わっちょちょっ!」
剣先は比べ物にならないほど鋭くなっており私の剣が綺麗に切りおちる
「ひっ」
バックステップをしながら炎で剣を作りバンシーの剣を受ける
ジュゥゥウ...
水と炎、私の方は物量で何とか防いだようなものだ
剣越しに見えるバンシーの目は変わってない
「んーっごめん」
バンシーを足払いする
「へっ」
じっと剣を見ていたバンシーから気の抜けた声がして
倒れたバンシーにマウントをとる
服で分からないがバンシーほっそいー
乗ったところで
「勝負ありぃぃいいいっっ」
と聞こえて
観客からも
うおおおおっと声が上がる
鉄格子がゆっくりと上に上がっていくのが見える
終わりの合図だ
「あっ、えっとセーラ」
冷静になったバンシーあわあわしてる
最近のバンシー...疲れてる?情緒フラフラしてるよね
「おつかれ、いい模擬戦だったね」
バンシーの手を取り立ち上がらせる
「えっと...うん」
ひとまずは別れて鉄格子のほうに向かう
客達はバトル場からは遠く顔色までは見えないが
不平不満の声ではないだろう
適当に手を振ると喜んでくれた気がした
有名人っぽい!
一度この空間をぐるりと見渡す
いったいどれだけの人がここに居るのだろうか
バンシーも手を振りながら歩いている、笑顔ではあるがどこか尾を引いた表情だ
控え室に戻ると黒服が紙を数枚渡してきた
「お疲れ様です、明日戦うことは絶対にないので安心して休んでください、レベルの高い模擬戦、素晴らしかったです」
では、と立ち去る黒服
そのまま部屋に戻る
レイス達ー
「おちかれ」「おかえり?」「ごはん?おゆ?」「ふくぬいでー」「あらうっ」
おゆはお湯浴びの事だ
ガチャ...
「あ、バンシーおかえり」
「ただいま、セーラ、入口で着替えないで...」
呆れているバンシー
バンシーの服は可愛らしい服になっていた
「何それ可愛いー」
「むぃ、セーラ、手ザラザラ、お湯浴びてきて」
ぺいっと弾かれる
「あ、はい...すいません」
れいすー
「まりょくタンクいどうしたよー」「したー」
「おーけー」
バンシー俯いていたのだけどそんなに汚かったかな...ちょっとショック
◇
なんでなんでなんで...
セーラの顔をまともに見れない
なんか顔が熱いんだけどっ
「ばーしーどしたの」「まっか!」
「びょーき?」「んあー?」
「な、なんでもないっ!」
「バンシーっ!ん?なんか赤い?」
「セーラっ!?いや?そっそんなことないよ?というかなんで裸なのっ」
「あえ?いや、お湯浴びするからだけど...私用になんか服選んどいてー」
そう言って引っ込むセーラ
私に何が起きてるの...!?
「ばーしー?」「をーい」「まっかー」
◇
お湯浴びを終えるとバンシーはドーハスーラチックな頭蓋骨をお面のように被っていた
ちなみに服はお揃いの服
私には似合うかなぁ...
「バンシーそれどしたの」
「強くなれる気がして」
「おぉー」
模擬戦とはいえやっぱり負けは悔しいもんねぇ
次を見据えてるとは、さすがバンシー
「んー、似合う?」
「かーいー」「にあー」「んー?」
「はんはん」「なんかちがーう」
「可愛いっ!」
レイスに混じってバンシーから強い肯定を貰った
「ん、なら良かった」
レイスは数匹首をかしげていたけど
まぁ今まで服を気にしたこと無かったしなー
どうせ茶色ローブで覆うので動きやすさ重視だったし
「そう言えば黒服から貰ったんだけど、バンシーも?」
コクリと頷く頭蓋骨
表情が見えないので何か喋ってください
「んーなになに、あ、お金貰えるんだ」
他には参加者からの挑戦が来ていることや人気度とかも書いてある
バンシーの方は私の二倍くらいあった
「うえ?何その量」
「なんか、手紙だって」
「へっ?誰から?」
「客の人から」
応援してます!とか可愛かったです!とかの短い手紙を沢山もらっていて、それをまとめたやつを貰ったらしい
人気度を教えてもらうと私の数倍はあった
「なん...だと...」
バンシーは見た目人気と一撃目のテクニックで惹かれてるのだと思います
人気者です
バンシーに異変が起きてるようです
病ではありますが病気ではないです
まぁ・・・ね?
セーラの深層には戦いの熱があるようです
それは死んでも消えない魂の熱




