21話 死んでも命の一つや二つ賭けようか
扉から入ってすぐの所で立ち尽くしていると近くの家から女性が一人出てきた
ゴホゴホと咳をしている、顔色も良くなさそうだ
「ゴホ...冒険者ですか?旅人ですか?どちらでも構いませんがこの街からは早く立ち去ることをオススメします」
「それは...どうしてでしょうか」
スーラは喋りかけられた時に私の後ろに隠れる
対話する気がないのだろう、なのでまぁ、私が聞いた
「それは、ギルドの方で聞くといいかと、こんなでも人はいると思います」
指差しで場所を教えて貰い、大きい建物だから行けばわかります、と言って家に戻って言ってしまう
「こんなでも」
スーラが気になったであろうフレーズを声に出す
「とにかくギルドに行こう」
街の中心だろう噴水、しかし水は出ておらず静かだ
ギルドは周りの建物と比べても大きく、見ただけでわかった
外から見るとカーテンもかかっている
ギルドに入る
「はーい、いらっ...ってこの街のギルドは運営してないです」
反射的であろう声を上げ私たちを見ると
我に返った用に沈んだ雰囲気で説明をしだす
荷物をまとめていた女性
服的に受付嬢
「運営してないんですか?」
「はい、この空気で分かるでしょ?この街は死んだの、生活すら出来ない」
頼み込んで話を聞いた
受付嬢は仕方ないといったように話し始める
この街の地下は水路が入り組んでいるらしい
その奥には水路を管理する部屋がある、そこに魔物が住み着いたらしい
その頃から街で毒霧が発生するようになり解決できずにとうとう放棄することになった
「私がこの街の最後の一人です、気は済みましたか?貴方達も一緒に雷の街に行きますよ」
街の人の一旦の避難地として雷の街が協力してくれたらしい
放棄する目処が立ったから数日前から移動を開始していたとの事
「どうにかならないの?」
「今まで多くの人が調べに行ってくれましたがほとんどの人が帰ってきませんでした、ゴースト系の魔物も多く確認されていて、奥に行くほど毒も濃くなって普通の人じゃ無理なんです
せめて助かる手がかりを探しに行ったと言う領主の娘さんでも帰って来れば可能性がゼロから上がるとは思うんですけど」
ゴホゴホと咳をする
喋るだけでも辛いらしく、その毒はこの街を、住む人をだいぶ蝕んだようだ
私は...苦しくないことは無いが...
少なくともスーラは大丈夫だろう、スーラを見るとやる気に充ちた目をしている
「奥の管理室に行ければ毒霧は何とかなるんですか?」
「うーん、そうですね、浄化の仕組みを機能させるだけでも、ただそこまでたどり着けなくって」
「じゃあ私たちが行くわ」
「えっでも...ダンジョンとは違うんですよ?助けられないし、だからギルドも手の打ちようがなくって」
「私は冒険者じゃない、元から助けられることに頼ってない」
「...でも、毒です、死んじゃいます」
「私は死なない」
「そんな、嘘です、解毒魔法も効かなかったんです、解呪も試しました、手はつくされたんです」
「じゃあ諦めるの?」
「それであなたはいいの?」
受付嬢がふるふると震えて涙を貯める
「でも、だって...」
「...いえ、そうね、私は、私達は特殊な魔法がある、だから大丈夫、それを同じ水準で求めるのは違ったわ」
受付嬢から涙が溢れ出す
「いいわけ...ないじゃないですか、生まれた土地ですよ?この街を愛してるんです、街の放棄は昨日で完了って出てます、私がここに居るのは、一人でもこの街を救うために戻ってきたんです!」
荷物から瓶やら魔導書やらが出てくる
「これはギルドマスターに無理を言って用意してもらった魔法陣です、攻撃から守り、回復に浄化、私の今までを詰め込んでもらいました、救えなければ、死にます」
念入りに用意された鞄、魔力を回復する瓶に色々な人に書き込まれた地下水路の地図など
「...私の言葉はいらなかったみたいね」
この人は本当に救う気で準備していた、なんとかなると軽い気持ちで行こうとしていた私たちとは違って
受付嬢が座り込む
「でも、いざ行こうとしたら足がすくんで...怖いんです、だって...まだ...しにたくないよぅ...」
掠れて震えた声
受付嬢は人によるが冒険者からなる人もいる
ただこの人...この子は受付嬢からだろう
そういう子は魔法に恵まれなかったりと冒険に出れない、でもせめて助けにでもなれば
という子が多いと聞いた
怖いだろう、死にに行くなんて
この若さだと魔物と戦ったこともないんじゃないか?
「...名前は?」
「え?...メイル、メイルです」
「そっメイル、行くわ案内して」
「どこに...ですか?」
「地下水路の最奥よ、あなたは私たちが護る、絶対に死なせない」
メイルの気持ちになら私の命の一つや二つ賭けようじゃないか
◇
地下水路の出入口は昇り降りするための小屋の中にあった
小屋の中に井戸のように梯子が降りていてそこから地下水路に入る
「...暗いわね」
「通気口は閉めてますし魔石も回収してますので」
「ふーん、まぁ灯せばいいでしょ」
そう思い指先に炎の魔法を使う
「アッ」
スーラが声を上げて素早くメイルに駆け出す
キュイン...
指先が暴発し私は消し飛んだ
「ガボガボ...ゲホッゲホッ、スーラさんいきなりなんです...か、なんですかコレ...」
スーラとメイルの周りは一面焦げていて遠巻きから見ていた魔物や降りてきた梯子ですら消し飛んでいた
「これは、いったい...」
二人の前に光の粒子が集まり出す
「あー、これも魔法だから、騒がないでね」
粒子は集まりセーラを形取る
「あー死ぬかと思った、というか死んだ」
メイルは口をパクパクしている
「この毒、火の魔法を増幅させる?」
「増幅...って言うんだっけ?少し違う気がするけど...まぁ周りの毒が薄くなってるから消費はされたかな?」
「セーラさんって何者ですか?」
悩んだ挙句メイルはセーラを人かどうか怪しむことにした
「私は死んでも死なない魔法...が特異魔法ってことで」
「えぇ...ええ?」
首を捻るメイル
「お前達か」
暗闇の向こうから声が聞こえる
足音なく近づいてきたのは街の門で出会った女性だった
命をかけるに値する
賭けるのなら最後まで見届けてあげます
命に代えてでも
それがセーラのやり方




