20話 死んでも名付けの気持ちは変わらず
ミホのいるテントから出る
雨は勢いが弱まりパラパラとしていた
もう片方のテントは無くなっている
テントのあった所にはスライムがいる
「...テントは?」
可能性的には貰っていこうとしていた
「あれに持たせた」
...!?
言葉が流暢になっていたきがした
が、スライムの指さす方を見ると男が一人歩いているのが見えた、あの男だ、スライムに何かしらされたのは分かる
寂しそうな後ろ姿にも見えた
「スライム」
「なに」
やはり人に近づいている気がする
スライムを触る
肌だ、皮膚だ
「...うわぁ」
ちょっと引いた言葉に出た
「...ふん」
すたすたと歩き出すスライム
慌てて追いかける
進行方向はおそらく水の都
瓜二つの私とスライムは雨の中歩き出した
◇
「ねぇ」
夜どうし歩き、日が昇り始めた頃
スライムが話しかけてきた
「なに」
手荷物などはなく服も軽装
散歩しているようにも見える格好だ
しかし森の中、道はあれど魔物には出くわす、火の魔法で追い返したりしてすすんでいた
その間は互いに無言
「名前、欲しい」
自然と顔を逸らす
「きょうはてんきがいいなー」
曇りである
肩を捕まれ揺さぶられる
「いージャン」
感情が昂ったのかカタコトが出るスライム
まだ進化を残しているというのか...
「きいてル?」
私はこの手の話があまり好きではない
深入りしたくないというのだろうか
「何をいまさら...」
ここぞとばかりに意思疎通で介入してくる
ギルドの補助が無くなったのが原因なのか魔物使いの意思疎通が不安定になっている
使えないことは無いけど...
そんな状態だ
「名前ねぇ...」
深入りしたくない、愛情の深さなのだろうか
なにか思い出せないが記憶のどこかが引っかかるというか...
「いぃんじゃないかな...セーラを名乗れば...」
目を逸らしながら答える
どうせ同じ見た目だし
背丈も同じ
腕を切れば中身は違うが
人が多いところでは球状になればいい
私も球状になれる気がするし
「人の姿が気に入った、セーラは魅力的」
ボソッと
さっきの男が、と追加で言う
男に何してた?
「え?なんて?」意思疎通で伝わってるが
スライムにぐいと迫る
「目が、メが怖いかナ...」
こいつわたしがミホと話してる間なにかしたんじゃないか?
「ナニモしてないヨ」
感情がブレるとカタコトが出てくるのかわかりやすい
「スライム、私の姿禁止」
「ひょわっ...」
私の姿のスライムの肩を掴む
手に炎を纏わせながら
「アツいっヤダヤダ」
肩を切り離して逃げるスライム
そんな人間はいないっ
「これ!コレなら!」
そう言って髪を水色に変える
さらに体型が少し変化する
...胸部が
「...そこを大きくしたのは当て付けか?」
わたしは全然気にしてないけれど?
「チョ、マテ、マッテセーラ」
久しぶりに球状になり逃げ出すスライム
...全力で走ったのはいつぶりだろうか
◇
結局スライムには私の姿をとってもいいことを許した
青髪が条件で
青というか水色
ちなみに私は以前より少し身長を伸ばしてお姉さんという言葉が合うように変えた
変えた、というのは赤スライムになってから人に変わる
うーん、人外っ!
いや、その...やりすぎた
何をしたかは言わないが球状の魔物のスライムが涙を流すとは思わなかった
意思疎通もダダ漏れで悲しい感情が伝わってくる
申し訳なくもなる
「ゴメンって...あんたがいないと荷物も運べないし一人旅って寂しいと思うの、いてくれて助かってるんだよ?」
拗ねたスライムを抱きかかえて撫でながら移動している
「...ゥ」
機嫌を治してくれない
ちなみに日が落ち始めている
ずっと歩きっぱなしに加えて朝は携帯食糧をスライムが出した
昼は追いかけっこで食べてない
「ドーセ荷物もち程度にしかミテナイんでしょ」
顔だけ私になるのはやめなさい
気味が悪い
「荷物持ち以外にも見てるよ、戦力として、相棒としても」
「荷物持ちは否定しないんだ...正直者メ...じゃあ名前をつけてくれたらユルス」
ピョンと私から離れ数歩分離れたところで人の姿になる
青髪の私
ユルス...許すのはこっちな気もするが
「スラ...スーラで」
パチンと指を鳴らしながら
「...」
絶望的な顔しないで
「すーら...スーラかぁ...その流れだとサーラとかシーラとかいそう...」
いやな予想を立てながらも歩く二人旅
ふと嫌な臭いがした
鼻を抑える
スライム...スーラも分かるのか鼻を抑えている
人型スライムは鼻呼吸なのか?
嫌な臭いは消えずむしろ進むほど強くなるような
そんななか
森を抜けた
私の身長の五倍はありそうな壁が姿を現す
灰色のような白い人工の壁
「わー」
スーラが感嘆の声を上げる
私も口を開いたが空気を吸うとむせてしまった
それほどに臭い
「だいじょぶ?」
「スーラは?」
「だいじょぶよ」
スライムには問題なさそうだ
壁は横に続いており、まぁ街を囲っているのだろう
遠目に見張り台のような場所も見える
「あっちに扉」
スーラが指さす方向に門があった
◇
「ここが水の都ってこと?」
大きい門の前に立つ、人はおらず誰も来ず
「入っていいのかな」
スーラに聞いたのだがスーラは門の横にある人用であろう扉を開けていた
「...いいんじゃない?」
開けながら言われても
閉まっていたが大きい門は何に使うのだろう
そんなことを考えながら
街に入る
「...」「...」
押し黙る私たち
水の都と聞いていて
まぁ水が綺麗な街程度に思っていた
確かに水は流れており
先に見える広場のような所には噴水もある
街並みから見て取れるが
大きい街だ
しかし
淀んでいる
空気が、水が、雰囲気が
人通りもなく
水路を通る水も心無しか濁っているように見える
「...きたない」
スーラからはそんな言葉をいただいた
名を付ける、その事にどこまで深く思うところがあるでしょうか
その気持ち、貴重な思いです
スライムだからスーラって訳じゃないですよ...
ちゃんと深くまで考えてます
それほどに、名付けとは重いものなのです




