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死んでも私は生き返る  作者: ファイル
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02話 死んでも私はご飯じゃない

背の高い木が太陽の光の多くを遮っているおうとつは少なく歩きやすい堅い土


ここはどこかの林、だろうか

上を見れば木漏れ日がキラキラと...


えっと、私は誰だろうか


能力で私は不死だとは知っている...能力?いや、魔法、かな?


記憶があまりハッキリとしない

服はボロボロで木の幹を背に地面に座り込んでいる


あぁ、また死んだのか、何故かそう感じる



前方の木の隙間から見えるのは二本足の豚

口からは牙、よく見えないが手には棍棒を持っているのだろう


オークと呼ばれる魔物だ



えっと、首に下げている鉄のプレートを見るに私はセーラという名前らしい


ほかの持ち物は特にはないかな、ないのかぁ

気だるい体を動かし木の幹に隠れながらオークに

近づく


よく見なくてもオークが夢中になって食べてるのは私の体、四肢だ



頭を食べられたから記憶が曖昧なのだろう

しかし何故かそう予想出来る

私の体...


さっきから私の体をむしゃむしゃしやがって、むしゃくしゃするな...


とりあえず殺そう、あいつに1度殺されているんだ、なら私はあいつを殺す権利がある


後ろに回り込むように近づくとその様子がよく分かる


私の四肢が引きちぎられた状態で転がっていた、胴体はないようで、吹き飛ばされたのだろうか、そこで生き返ったと


音を立てないように後ろから近づく

私よりでかい図体 こいつの急所は...



オークの体に飛びつく、飛び上がる時のザッという音にこちらに気がついたようだが遅い、オークにしがみつき 首元に噛み付く


「フゴゴァ!?」

さらに力を込める、歯が折れるかもしれない


「ゴァッ!」

振り向きの力、遠心力で振り払われる


「ンくっ...!」

自分の口から漏れた声が思った以上に高くて驚いた


オークは正面の元私の体と私を見比べている

「ふごッ」「フゴフゴうるさいな」


戸惑っている様子、しかし耳障りだ

オークの真正面に走り出す


直ぐに棍棒を振りかざすオーク


もう一度飛びかかる前に棍棒を振り下ろされる



今からする戦い方は私の体に刻まれているようだ


左腕で棍棒を受ける

ミチミチとなってはいけない音がしているがそのまま左に力をかける


ぶちぃ...


左腕が体から離れ鮮血が飛び散る


棍棒と左腕が視界の後方に流れていく

少しバランスが悪いが


オークの首元は目の前だ


助走を付けながらオークの首に食らいつく


噛み付かれた首から、噛み付いた口からミシミシと音がする


足でオークの右手を拘束するように絡みつく

「ゴガッ...ホガッ!」


口の中を血の味が締めていく


これが私の血かオークの血かは分からないが


右手でオークの頭を殴りつけているが効いてるかは分からない、とりあえず殴る


左腕のあった場所がホワホワと光り出す

気力を持っていかれるような感覚、そして左腕が何事も無かったように戻る


「ぶもぉあっ!」口を開けたな、オーク


再生した左手でオークの開けた口に殴り掛かる

口の中に手を突っ込み掴めるものを探す

とても気持ちが悪い


「がふっ...がっ...」


力強く左手が噛みちぎられる

噛みちぎったあと、オークの首が柔らかくなった気がする


ミシッ


オークの首の一部を噛みちぎる

血が勢いよく吹き出して


抵抗力が無くなっていく

済まないな、私の勝ちのようだ

オークが後ろに倒れていく


その体を蹴りオークから離れる


「ゲホッ、気持ち悪い」


オークのそばに着地し、オークを見下ろす

オークの死体に向けて言葉を吐きながらその場に座り込む


血の味と血の匂いが不愉快だ


日はまだ高い

いや、むしろ昼時だろう


整理をしよう、私は、火の魔法が使えそうだな

そう私は知っている

「もしかして頭が吹き飛ぶ度に記憶を失ってるのか?私...」


そうだとすると不便だな



右手からボゥッと火を出す、この火から熱さは感じないが、焼くことは出来そうだ


もっと火力は上げれそうだけど、今はその時ではないかな


オークを焼きながら思考を巡らせる

思い出そうとしても思い出すことは出来ないが、知っていることはまだまだあると感じる、まぁ必要な時に思い出せればそれでいいよ



これからどうしようか、頼りは首の鉄のプレート

それにはセーラとありその下に『フェルに』と彫られている

むしろフェル、の周りは削れていて読めない


とりあえずはこのフェルって言うのに会うとして

ここら辺に街はないだろうか、まずは人と接触しよう


ボロボロの服も捨てたいな

あ、この服ほとんど焼き焦げてるわ つまり犯人は私と

赤黒い髪は血の汚れだろうか?なら水洗いもしたいな

腰ぐらいまである髪は赤黒く鈍く光っているようだ

まるで血の色だけど


オークの肉からいい匂いがする、血がぽたぽたしているから美味しくはなさそうだが


お腹に収まればなんでもいいよ



さて、オークのいい匂いから一転、血なまぐさい肉を半分も食べてないぐらい

三匹ぐらいか、こっちの様子を伺っている奴ら

「オオカミか」


匂いにでもつられてきたか

そこそこ太い木の幹に目を向ける


立ち上がり腕を組む、後ろに肉

正直食えたもんじゃない、あげてもいいが無償では何となく癪だ


ぐるるぅぁ...


木の幹からのそのそと出てくる三匹のオオカミ

土で汚れているのと元々黒い毛なんだろう

全体的に黒い 夜に襲うタイプかな


大きいリーダーのようなオオカミはでかい、私よりも


周りの二匹は私くらいだ

充分でかいな


牙をむき出しグルグル鳴いている

「ガウッ...」


でかいオオカミが小さく声を出す

周りの二匹が私を囲むように散らばる



ボッ...

右手を握りしめ火を纏わせる

熱くない、ちなみに服の袖は右側だけ焦げている

自然と構えて火を纏わせたけどいつもこんな感じで構えているのだろう


体が覚えているようだ


「ガウッ!」「ガァ!」「グァッ!」

三匹が同時に飛び込んでくる

連携はいいけど横の二匹が少し早いか?



横の二匹に腕を食わせる

いや、訂正、殴ろうとしたら食われた


両腕が噛み砕かれようとしている

ミシミシと音がする


まぁ右のオオカミは熱いらしく噛む力が弱くなったが


左も燃やすか

ボッ

「ガッ!?」

悲鳴のような声がオオカミから漏れる


「いっ...」

同時に私の頭に衝撃


正面のオオカミに頭突きを食らわせる

違う、頭を丸かじりにされている


咄嗟に左下を向いたので

首の後ろあたりと顔の右側を噛まれている



すごい、右目はオオカミの口の中で左目は外だ

良くはない、全身を発火させることは出来るが服が惜しいな...一応女なのだ


一瞬拮抗した後

右手がオオカミにもってかれる


それを見たのか左手を離される


直ぐに頭に噛み付いているオオカミの首に手を回す


オオカミの毛と肉を掴み


右足で地面を蹴る

左足を振り上げる


見えないから当てずっぽうだが距離感的には当たるだろう


バシ


オオカミの前足に当たったようだ

...当たっただけか

ビクともしない


「燃えろっ」

左足と頭を発火させる

ついでに無い右手も


「ウガっ!」

大きいオオカミにぺっと吐き捨てられる私


「ギャウッ!」

右から悲鳴が聞こえる


右目が機能してないから見えてないが右手が燃えたんじゃないかな、確信はない



左手は離してないからぶら下がる状態になる

左手を軸にオオカミの首元に近づき足で組み付く

右足と左手も燃やす

ボロボロの服に引火したわ


「グルぁッ!ギュアッ!」

ぶんぶんと首を振るオオカミ



「ひゃっ」

ポーンととばされる

べシャっ

「いてっ」

後頭部を地面に打ち付ける


引きちぎられた時の方が痛いけど

「いてて...」

ゆっくりと立ち上がる


見た目はさぞ痛いだろうな

実は腕を持ってかれている割にはそこまで痛くないんだけど



火を収めて右手の場所を左手で擦る

擦った方が早く再生する気がしたから...


体がだるくなりながらも右手に実体が出てくる



半透明からだんだん実体ができる感じ

半透明の時に左手突っ込んでたらどうなるんだろう...

いまはその時じゃない 前を向く



大きいオオカミは後ずさりをしている

右のオオカミは地面に伏せながらこちらを睨んでいる

左のオオカミは体の側面をこちらに向けて顔だけこちらを向けている

今すぐにでも逃げ出したいようだ

「はぁ」


どうやら再生したら力が抜けるらしい

なるべくしない方がいい


両手を上げる

オオカミ達はビクリと体を震わす

「心配しなくてももう何もしないよ」

そのまま後ろに倒れる

ドシャ

後頭部を強打する


カッコつけなければ良かった まぁ可愛らしく倒れる方法なんて知らないけど


「おやすみ」


死なないなら眠い時に寝ても問題ないだろう

あとはオオカミの自由にさせよう



腕がくすぐったい

ぺろぺろと舐められているような

「んぅ...?」

空は夕暮れで薄暗くなっている

そんなに時間は経ってなさそうかな

気だるい感じはなく

むしろみなぎっている!っていう感じだ


ハッハッ


右腕を舐められる、手か、くすぐったい

オオカミが私の右手を舐めていた


「...お前は残ったのか」

周りを見るがオオカミはこの一匹だけで大きいやつと逃げ腰のやつはいない


つまりは右手を喰らったやつか

なんだ?私の腕の味が忘れられないのか?

腹の中で燃えてスパイシーだっただろう?

「きゃぅん...」


耳と尻尾をへたらせてその場で伏せるオオカミ

少しニヤってしただけじゃないか...そんなに怯えるなよ...

「ふむ」


立ち上がり改めて周りの様子を見る

オークの肉は食い散らかっている


「あっ」

パサりと落ちる服だったもの

ついにボロ服がボロ布キレになった


別に体温調整は炎で勝手に、無意識にしているからいいんだがそういう問題ではない


羞恥心的な方だ

ない胸も見られて嬉しいものでは無い


とりあえず炎でも纏うか

ボゥッ

「ガウッ!」


ばっと後ろに飛び去るオオカミ


「あっごめん」

いや、居座るこいつが悪いのでは...


ジト目を向けてもオオカミは動じない


まずは服だな、そのために街か

適当に林を歩き始める

炎は服にも明かりにもなるから大変便利だ

うん


服にはなんねーな



しばらく歩き続けると日が完全に落ちた

たまに石ころをふむのが地味に痛い


炎の服を纏うのも疲れたので

少し先に火の玉を出して明かりとして

服は消した


これは変質者


そして少し後ろから腹を鳴らしながら

のそのそとついてくるオオカミ


わたしが立ち止まればオオカミも止まり

歩けばついてくる

どこまで来るつもりだろうか


「はぁ...」

少し木の間隔が空いているところに座る


気だるさも少し出てきたし、ここで寝よう

オオカミに手招きをする

「がう...」


そばまで来てちょこんと座るオオカミ

ぐぅぅ...

「がぅ...」


しおらしくなるオオカミ

「お前、私の言葉は分かるか?」

こちらを見るオオカミ


返事はない

ただぐぅぅと返ってきた

右手を水平に伸ばす


上げる時にビクッとするオオカミ

怖いなら来なけりゃいいのに...


「ほら、たべな」

別に腕の一本や二本くれてやるって

「ガウッ!」

腕を肩まで甘噛みで噛みつき、味を確かめるように舐められる


舐めるのを辞めたかと思えばこちらに目線を向けてくる


...そこまでしてか

こくりと頷く


力強く噛みちぎられる

あぁ、痛い


くっそ、一気に持っていきやがって


いや、少しずつってのも嫌だな


まだ右手を動かせる感覚はある

炎も使えそうだ、燃やしてやろうか?


私のジト目には反応せずにガジガジ食うオオカミ

「はぁ...」


あいつにとって私は減らない食料か?

うわぁやだな、不死をそんなことに使うなー


まぁいいさ

そう言えば腕を持ってかれているのに血は持ってかれる時にしか流れてないな



傷口をみると炎の複雑な魔法陣がある

傷口よりも魔法陣の方が頭にくるな

見てると酔いそうだ

ホワホワと光り出す右手のあった場所

少し気だるくなってきた



月は明るく、風は心地いい

今日はもう寝よう

「おやすみ」

誰に言うでもなく私は呟いた

少し長くなりました...

痛覚と女の子らしさが見当たりませんね

どこかで拾ってきてくれるといいのですが


一応別作品「氷の魔法を使う者」の続編にあたります

同じ世界線ですがフェルは名前だけの登場です、当分出る予定はありません


楽しんで貰えるよう頑張ります

セーラ共々よろしくお願いします

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