17話 死んでも恨むことは無い
魔導書とは言うなれば魔方陣をかき集めた束のようで
誰でも魔法が使える道具、である
でまわっている数が少なく研究は進んでいない
ただ魔方陣に関して少しだけ分かっていることもある
そのひとつに
一度魔力を注入し発動させようとした魔方陣は手を離さないと注入は止まらず
本人の意志とは関係なく発動される
「それが不意に発動してしまった水魔法の原因か?」
コクリと頷くセレナ
炎の魔物、セーラは跡形もなくなりあの場はひとまずは、と皆ギルドに戻ってきた
「しかしみんなどうかしたようだった」
「誰かが状態異常の魔法を使っていたかもしれない」
状態異常の魔法
私の使った麻痺もそのひとつだが
あの様子だと
「狂気...か?」
これも頷くセレナ
でもどうしてあの時使う必要が...
「疑いたくないから、だけど例の黒蛇が使ったんじゃないか、っていう話も出てる」
「それが自然ではあるけど」
「ただ門の前にいた人の中で
「雷の嬢ちゃんが炎の魔物に襲われてる、助けに行くぞ」っていっる人もいて」
えぇ...と顔を顰める
「私はむしろミスラに近づくのは危険と言ったのだけれど」
その認識であっているし、皆にもそう伝えているはず
私の雷の魔法は殆どが範囲に影響を及ぼすものだからだ
「とにかく...いえ、きっと誰が悪い訳でもないわ、まずは魔方陣の改良をしましょう」
それは遠回しにセーラは忘れろと言っているのか?
あいつにたどり着く鍵かもしれなかったのに
「...分かった」
私はセーラを見殺しにしてしまった...
◇
真っ赤なスライム
今の私がそれだ
ちなみにめっちゃ熱い
「ツイテコレテル?」
私を覗き込むように見てくるスライム
私の体を再現している
うん、跳ねると少し崩れるけど
怒涛の水魔法をくらいかなりの時間
空気中を漂った私の存在だが
ようやく集まり始めた
魔力も不十分で体を保てないがこれは炎の水を使い始めたのも影響ありそうだ
ただこの場を離れたかったから球状になっている
あの街には戻れないとすると早めに宿探しでもと思ったのだ
っていうかスライムさっき喋ってなかったか!?
「ナニヨ」
違和感しかないカタコトだが喋っている...
偉いぞー!手があったら撫でてやろう
なでなで
スライムが私を撫でてくる
「アチチ...」
少し蒸発したようだ
私には触らない方がいいぞ...
制御出来てないからな、ひょんな事で爆発するかもしれない
「コワー」
棒読みである
「コレモテル?」
そう言って差し出してきたのは使い魔に付けるアクセサリー
...をい
「チガウ、ツクタ」
もう一個同じのを見せてくるスライム
どういうこと?
「ヒマダッタカラ」
そっかー、私全然復活しないもんねー
いや、そうじゃなくて
ジュオッ...
私に押し付け少し溶かしてしまう
ごめん、そんなつもりじゃ
「シッテタ」
そう言って歩き出すスライム
まって!跳ねると体が崩れるの!
少し拗ねたようなスライムを追いかける
まってってば!
◇
「アイツラキライ」
日が落ちて洞穴の少し奥の場所で夜を過ごすことにした
私が少し暗めの明かりになるので日が落ちてからの移動は誰かに見つかる可能性を考えてだ
スライムは球状にならずに足を抱えて座っている
表情はなくアンニュイな感じ
なんかエロいな
つやつやしてるのもある
「ムー」
頬を膨らませるスライム
...アイツらって?
「マチ」
街の人達のことだろうか
「タスケタノニ、オイダシタ」
思うところがないと言えば嘘だが
いずれギルドは離れるつもりだった
魔導書もあるし、不死を隠してパーティーを組むことなんか無理だ
強ければそれだけ先に行こうと欲が出る
どこかで死んでたさ
リンドの時や今回のことで色々わかった
私の死に際に転移は発動しないし
無理やり動くと体はついてこれない
時間をかければオークも倒せる
焦らない、別に死んでも大丈夫なんだから
「ワタシモシンダ」
スライムが死んだ、という
死んだ時どうだった?
「オシエナイ」
口ではそう言って膝に顔をうずめる
しかし思考が伝わってくる
暗くて
ひとりぼっちで
しかしどこか私を感じる気がして
気がつくと魔力がなく体をたもてずに水の状態で目が覚めた
少しずつ魔力を使うと体が戻っていく
私と似たような感じか
私も魔力を数値で表すとマイナスなようなものだし
「コレカラドスルノ」
その言葉と同時に入口の方から声が聞こえてきた
人だ
聞いたことのある声、忘れるものか
酷く気持ち悪い顔がよぎる
...シェリダンっ!
周囲の魔素からセーラの体を生成して復活してます、散り散りな程時間はかかりますが死にません
セーラは自分の命を軽く見ている傾向があります
命あるなら儲けもの、死なないなら...と
だから、私を殺しても恨むことは無い...と
...ふーん




