行間
あたしはただ、楽しく過ごしていたかった。
別にあと数日の命というわけではないけれど、それでもあたしは、少しの時間も無駄にしたくはなかった。
だから思い立ったらすぐに行動した。
ある時は寝起きバンジードッキリを仕掛けたり、またある時はバスタオル姿のまま外に出たりした。
他にも沢山あるけど、そういうことをしているうちに沢山の人があたしから離れていったように思う。
そして影でこう言われていた。
『頭がおかしい』
そのことを知っても、あたしはそこまで傷つくことはなかった。
一人じゃなかったから。
いろんな人が離れていくなかで、一人だけあたしから離れなかった人がいた。
一つ年下の男の子。
あたしの突発的な行動にいつも文句を言いながらも、最後まで付き合ってくれる優しい人。
その人を中心に、少し個性的な人ばかりだけど人が集まった。あたしもその一人。
あのままだったらきっと、今のあたしではいられなかった。周りに順応しようと今の自分を押し殺して、空っぽで変わり映えのない日々を送る。そんなつまらない人間になっていたと思う。
だから、彼と居ればあたしはずっと笑っていられるような気がした。
そしてそれは、いつまでも続くと思っていた。
高校生最後の夏祭り。
本来なら楽しい思い出になるはずだったこの日を境に、あたしは彼とまともに話せなくなっていた。
切っ掛けはきっとあの瞬間。
祭りの会場の階段の上から見た景色に映った、望月と彼の姿を見たときだ。
お互いがお互いの背に手を回している姿は、端から見れば微笑ましい光景だっただろう。
だがあたしにはそう思えなかった。
胸は張り裂けそうなほどに痛み、それを中心に何かもやもやとした感覚が全身に広がった。
それは不安? 嫉妬? それとも別の感情か。
何かは分からないけれど、一つだけハッキリしていることがあった。
あたしは彼との時間が減ってしまうのが嫌だった。
居場所がなくなってしまうような気がしたから。
またあの頃のように一人になってしまうのはもう嫌だった。
それなのにあたしは、彼との距離感が分からなくなってしまった。
今まで何を話していたか……。
どんなことをしていたか……。
彼はあたしをどう思っているのだろうか……。
あたしは彼を……川島恭介をどう思っているのだろうか……。
あたしは川島君に嫌われてしまったのだろうか……。
その事だけが、頭の中をぐるぐると回っていた。




