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川島恭介の受難  作者: ゆきち
第四章:二つの祭りと二人

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第25話 小林和也と思わぬ収穫




 川島達から離れ、俺はお好み焼きの屋台を探しに人の群れの中へと足を踏み入れた。

 まだ祭りが始まってまもないというのに人の数は多く、あっという間に川島達の姿が見えなくなった。

 俺はあいつらを待たせまいと思い、屋台へと急ぐ。

 その時だった。

 俺の手を誰かが引っ張った。


「待ってってば! 私も行くから」


 振り返ると、息を切らして膝に手をつく御島がいた。


「あれ、御島ちゃん付いてきたの? 待ってれば買ってきてあげたのに」


 御島の予想外の行動に俺は内心少し嬉しいが、顔には出さずにいった。

 すると御島は姿勢を元に戻した。


「だって小林君、そのまま行かせたら本当に私の分まで払っちゃいそうだったから」


「そんなの気にしなくて良いのに……。でもそっか……てっきり俺と二人きりになりたくて追いかけてきたのかと思ったぜ」


「バカじゃないの? 買うなら早く行くよ。皆待たせてるし」


 御島はまったく動揺せず、そんなことを言った。

 うん。いつも通り辛辣な御島だ。


「はいよ」


 俺はそう返事して、御島と二人歩きだした。

 まさかこんなにも早く二人になれるとは思わなかった。

 この時間をもう少し堪能するとしよう。



 お好み焼きの屋台はわりとすぐに見つかった。

 俺達はお好み焼きをとりあえず人数分買い、祭りの入り口へと戻ってきたのだが……。


「あいつら居ないじゃねぇか!」


「居ないねぇ……。でも、椎名先輩と九頭さんが大人しく出来るとも思えないし、居ないのは当然かも」


「つまり、一度離れた時点でダメだったわけか……」


 思えばそうだ。

 俺は御島に良いところを見せたいばっかりに、そちらについては全く気が回らなかった。

 これじゃあ皆で来た意味がない。

 俺はとりあえずポケットからスマホを取り出した。


「ちょっと恭介に連絡してみるわ。多分、まだそんなに遠くに行ってないだろうし」


「あ、私も望月さんに連絡とってみる」


「頼む」


 そういうと俺は電話帳から川島恭介の名前を見つけると、電話を掛けた。

 だが電話にはなかなか出ることはなく、数回のコール音ののち、留守番電話サービスへと繋がった。

 その後も何度か電話を掛けてみるも、やはり繋がることはなかった。

 俺はもうダメだと判断して、御島の方を見やるも、御島もずっと口を閉ざしたままスマホを耳に当てている。


「俺の方はダメだった。そっちは?」


 答えは分かりきっていたが、一応聞いてみる。やはり御島は首を横に振った。


「私の方もダメみたい。ずっと話し中」


「そうか……」


 俺はスマホをゆっくりと下ろして、ポケットにしまった。

 川島が出れないのはきっと椎名辺りの相手をしているからだろう。

 そして椎名が川島にちょっかいを掛けているとなると、必然的に椎名も電話に出れないということになる。

 九頭と望月の方については二人とも電話番号を知らないから、連絡のとりようがない。

 そもそも、四人一緒にいるとも限らない。

 どうしたものかと考えていると、電話を諦めてかごバッグにスマホをしまう御島が俺の近くに寄った。


「どうしよう? このまま電話繋がるの待ってる?」


「うーん、そうだな……」


 俺は少し考え、御島の考えに肯定しようとしてやめた。

 これはチャンスだ。

 他のやつには悪いが、俺はこの祭りでハッキリさせると決めたんだ。

 それに花火が始まったら、川島達も連絡するようになるだろう。

 花火は、皆で見ようと約束したからだ。


「御島ちゃん、やっぱり俺達だけで祭りを回らないか?」


「え?」


 御島は明かに戸惑ったような声を出した。

 そんな彼女の反応に一瞬心が折れそうになるも、適当な言い訳を考える。


「こうしてここで連絡を待っていても、あいつらのことだ。いつ連絡がとれるか分かったもんじゃない。ならもう、俺達は俺達で祭りを楽しもうぜ。屋台回ってたらそのうち会えるかもしれないしな」


 その言葉に御島は少し考えると「うん」と頷いた。


「そうだね。私達は私達で屋台回ろっか」


 そう言ってにこりと御島は笑った。

 その笑顔が俺に向けられたのが初めてで、俺は少しドキマギしながら視線を屋台の方へと向ける。


「そうと決まったら早速行くとしますか。どっか行きたいところはあるか?」


「そうだなぁ……」


 そうして俺達は、再び祭りの会場へと入っていった。

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