今日も魔王は気が弱い
「おい、サクラ。」
「なんなんですか。」
「今日はとてもハッピーなんだ。だから熱~いお茶を持ってきてくれないか?」
「嫌です。」
「お願いします。」
「嫌です。」
さっきから私に茶を持ってこいと言っているのは魔王。今は一人でチェスをしている。ちなみに私はサクラ。本名は桜一三。人間ではなく、魔物だ。
話を戻すと、台所に茶が置いてある。今俺達がいるのがリビングで、茶までは10メートルほど。こいつのために10メートルも動くのは少々めんどくさい。
「そもそも、どうして台所に茶が?」
「いや、実は―
「今日寒っっっ!こんなときは熱~いお茶に限るよね~。」
そう言って魔王は台所へ向かう。
「そうだ!昨日買った新しい茶葉があるんだった~。」
そう言って魔王は茶を煎れる。
「う~ん少し冷たいかな~。ヘルファイア!」
魔王が放ったヘルファイアという魔法はかなり強い魔法で、使えるのは魔王ぐらいだ。あと、この家は木製の家なので、魔王は火事にならないようにウォーターベールという防御魔法できっちり保護している。
「さあ、至福のひとときを…熱っ!ぐはぁ、舌を火傷したぁ。もういいや、一人でチェスしよ。」
―というわけでして…」
「馬鹿なんですか?いまのあなたは5歳の子供より馬鹿ですよ?」
「ひどいっ!」
「はぁ、仕方ないから自分で持ってくるよ。」
「そうしてください。」
今日も魔王は少々気が弱い。