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始まりの形

彼女は一人だった

彼は一人だった

彼らは二人で一つ

出会ったことで全てが変わった


あなたは、奇跡というものを信じるだろうか。人の理解を超えた先にあるもの。それは一体何なのであろうか。一体何のためなのだろうか。神様のいたずら?それは、誰にもわからない。


人は一体何から生まれるのだろう。身体が生まれ、心が宿る。本当に?心の形が身体となって現れる。そんな風にも考えられないだろうか。


これはそんな可能性の話。


------------------------------------------------------------------


「ピピ・・・ピピ・・・ピピ・・・」


スマホのアラームが鳴っている。うるさい。

スマホに手を伸ばし、画面をタップしてアラームを止める。

まだ眠い。とても眠い。

まだ寝ていようか。そう思い、また目を閉じる。


「おい、起きろよ。遅刻するぞ」


ルームメイトの健斗けんとの声が聞こえる。


ここは、とある場所にある全寮制の森乃咲学園という共学の高校の男子寮だ。

俺はこの男子寮で、こいつと2人部屋で生活していた。


森乃咲学園。そこは、緑に囲まれた自然豊かな場所にある高校。少年少女の健やかな成長をモットーにしている伝統ある学校である。

まあ、ぶっちゃけ周りに何もないんだよな、ここ。バスで町まで行かないとマジで何もない。正直、若者がいるような場所ではないと思う。



仕方がない。起きるか。

そう思い、体を起こす。


「おはよ」


そう返事を返した。

目に髪がかかる。髪切らないダメだな。

ぼーっとした頭でそんなことを考える。


「おう、おはよ。早く食堂行こうぜ。ってなんか髪が凄いことになってるぞ。それになんか声が高い気が」


髪?自分の髪を見てみると、確かにめちゃくちゃ伸びてる。何だこれ。


「確かに凄い伸びたな。こんなことってあるんだな。・・・ん?声も確かにだいぶ高くなってるな。何でだろ」


鬱陶しい髪をかき分ける。髪切るまでは、なんかで縛っとくか。


「・・・おい、誰だ?」


健斗が俺を見て固まってる。どうしたっていうんだ。


「誰って、俺だよ。そらに決まってるだろ」


どうしたっていうんだ、全く。今更俺の顔を忘れたっていうのか。


「とりあえず、鏡見てこい」


健斗にそんなことを言われたので自分の顔を見ることにする。


仕方ない。まあ、スマホのカメラでいいか。

スマホのカメラアプリを起動して、インカメにする。

そこには、女の子が映っていた。

・・・?

手を振ってみる。

画面の中でも手が振られていた。


口を開けてみる。

画面の中の女の子も口を開いた。

・・・???


「どういうことだ、これ?」

「俺が聞きたいんだが」


朝起きたら、女の子になっていた。ってあり得ないだろ。


「俺のことどう見える?」

「どう見ても女子だな。それも結構な美少女だ」

「だよな」


頬をつねってみる。痛い。

どうやら夢ではないようだ。


「どうすればいい?」

「だから、俺に聞くなよ」


とりあえず、俺は女の子になってしまった。そういうことらしい。

いやいやいや、どういうことだよ。

あー、わけわかんね。

誰か説明してくれ。


少しすると落ち着いてきた。

まずは、状況確認だ。


胸はあるのだろうか。

とりあえず、胸を触ってみる。

柔らかな双丘がそこにはあった。

あー、女の子の胸ってこんな感じなのかな。


次に服を脱いでみる。

上下を全て脱ぐ。

胸元を見ると、膨らんだ胸。

下半身には、男の部分がなく、割れ目がそこにあった。


あー、これはダメなやつだ。どうみても、女子です。本当にありがとうございました。

女子の裸って初めてみたな。

こんな風になってるのか。そんな風に現実逃避を始めていると、


「おい、裸になるなよ」


健斗が慌てて、目を背ける。


「おっ、なんだよ。童貞か?」

「うるせー。早く服着ろ」


ウブな反応だな。かわいい奴め。まあ、男が恥じらったところで可愛くはないんだけどな!俺にその趣味はない。


ハンガーに掛かっている制服を着ることにする。うん。サイズは大丈夫そうだな。髪は鬱陶しいから、ハンカチで縛っておくか。


「食堂行くぞ」


眠いがお腹に何かいれないと、昼まで持たない。健斗を誘って外に出ようとすると、


「おい、お前。その状態で外に出る気か?」

「何言ってるんだ?」

「お前こそ大丈夫か。まだ寝てるんじゃないか?」


言われて気づく。


ここは男子寮。女子がいたら目立つ。というまずい。それにこの顔を見られると、お前誰だってことになって面倒なことになる気しかしない。


「確かにまずいな」

「だろ」

「とりあえず、話し合おう」


そういって、健斗と向き合う形でベッドに腰掛ける。


「まず、お前は空なんだよな」

「ああ。なんなら何でも聞いてくれ」


少し健斗が考えると


「昨日俺らが夜中にプレイしたゲームは何だ?」

「マリカだろ。確かキャラは俺がクッパで、お前がピノキオだったな」

「あってるな。ってことは、お前は空だな」

「当たり前だろ」


とりあえず、健斗は信じてくれたようだ。


「朝起きたら女の子になっていたとか、何そのラノベ展開」

「知らんがな。俺が聞きたい」

「胸触ってもいいか」

「やめろ、キモい」

「それは残念」


しばらく他愛のない会話をすると、


「で、どうするんだお前?」

「どうしたらいいと思う?」

「男に戻る方法を考えた方がいいな」

「例えば?」

「お湯でも被ればいいんじゃないか」

「それはねえだろ」

「まあ確かにねえな」


二人で考えていると、


「あとはそうだな。男に戻るように強く念じるとか」

「おーけー。やってみる」


とりあえず、目を瞑って念じてみる。


男に戻れ。男に戻れ。男に戻れ。男に戻れ。


そんな風に念じていると意識が薄れてきて、途切れた。




意識が戻ってきた。目を開ける。

すると、心配そうな健斗の顔があった。


「近い」

「悪い。いきなりお前が倒れたもんでな」

「なんか意識が途切れたんだよ。どれくらい時間たった?」

「5分ぐらいだな」


大して時間は経ってないのか。

そういえば、声が戻ってる気が。

胸元みると胸が平べったくなっている。

下半身を触ると、男の部分が戻っていた。


「戻ったみたいだな」

「ああ、俺の言った通りだったな。よかったぜ。だけど、髪が長いのは戻ってないぞ」


髪を見ると、確かに長いままだった。でもまあ、これくらいなら問題ないだろう。


「まあ、髪が長いくらいならいいだろ。戻ってよかった」

「こんなこともあるんだな」

「それには同意」


一体さっきのは何だったのだろうか。


「とりあえず急いで食堂行こうぜ」

「ああ。でも、ギリギリなのはお前のせいだけどな」

「不可抗力だろ」

「そうだな」


二人で食堂に向かう。

食堂は学生たちでごった返していた。

空も健斗も朝食のご飯や味噌汁、魚などを皿によそって空いている机を探す。



「こっちだよ」


奥の方から、声が聞こえた。声の聞こえた机に行き、席に座る。


「おはよう、お二人さん」

「やほー」


友人の幹也みきや和樹かずきが声をかけてきた。

幹也は身長も高く身体ががっしりといている一方、和樹は結構小柄だ。

俺たち4人はよく一緒につるんでいる。


ちなみに、和樹はなんだかふわふわしたような感じの奴だ。

男なのに、男っぽくない。中性的といえばいいのだろうか。

そのためか、男子とも女子とも付き合いが多い。


「なんか今日は2人とも遅かったな」

幹也がそんなことを言ってきた。


「まあ、いろいろあったんだよ」

「そういえば、お前やたら髪伸びてんな。どうしたんだ?」

「なんか起きたら伸びてた」

「なんだそれ?」

「俺もわからん」


そんなことを幹也と話していると、和樹が話しかけてきた。


「ねえ、空」

「なに?」

「髪触っていい?」

「まあ、いいけど」


隣に座っている和樹が髪を触ってきた。


「さらさらしてるー」

「そ、そうか」

「髪をといてあげるね」


こいつは、髪を触るのが好きなんだろうか?

そのまましばらくされるがままだった。

他人に髪をとかされるのって気持ちいいな。


いつのまにか、雑に髪を結っていたハンカチの代わりにヘアゴムで髪を結われていた。いわゆるポニーテールだ。


「なんでヘアゴム持ってるの?」

「運動するときに髪が邪魔だから、そういうときに使うんだよ」

「そうなんだ」


女子力高いな。そんなことを思いながらも、さっきまであった頭の違和感がなくなっていたことに気づく。


「空、似合ってるよ」

「ありがと、和樹」



そんなこんなで、4人とも朝食を食べ終えて学校に向かうのだった。

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