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ユーギガノス  作者: やませさん
破壊神ラモディウス編
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第98話 突きつけられた現実

「ハァ……、ハァ……、ハァ……」


 ゼブラは息を切らし、鬼神化を解く。

 変身後の急激な精神変化により、両手足はプルプルと震え、何も考えられない。

 ヴァンとの勝負に勝った。しかし、嬉しい気持ちが沸いてこない。奴は死んだのか……。鬼神化フェニックスの孔雀鳳凰剣(くじゃくほうおうけん)の一撃により、壁を打ち破り、叩き飛ばされた……。


ーーーーゼブラは眩む意識の中、上層階広間に続いている螺旋階段を登り、ユリアの所まで駆け付ける……。


「ユリア……」


 ゼブラは上層広間にたどり着く。

 石の寝台に眠るユリアに駆け寄り、そっと彼女の頬に手を差し述べる。


(…………)


 ユリアは……、ピクリとも動かない。

 息はしていないが鼓動はしている……。

 しかし、体温は温かい……。何とも言えない、死人同然の状態である。

 勝ったよ……。と、ゼブラは静かに瞳を閉じ、ユリアに心に語りかけ、報告するのだった……。



ーーーー〈墓場樹海〉ーーーー


 ゼブラはユリアをオンブし、死霊の塔を脱出。

 外は夕闇に暮れ、冷たい風が骨柱を不気味な音を響かせ、突き抜ける……。

 地面に広がる骨の海、パキパキと踏み鳴らし、目的もなく、歩き続ける……。


(とは言うものの……)


 ゼブラは、ヴァンの言葉を思い出していた……。

 本気であの娘を助けるつもり気か……。と、ヴァンの言葉が突き刺さっていた。

 戦いの中、勢いで助けると吐き捨てたが、方法はない。一体、どうすればいい。

 現実が重くのしかかり、言葉に出来ない……。彼には勝ったが、言葉は正しかったかもしれない。


ーーーードサッ……。


 ゼブラはユリアの下敷きになり、倒れた。

 急激な精神変化、ズッシリした疲労感が全身を行き渡らせ、フラフラな体調であった。

 

ーーーー〈広地〉ーーーー


ーーーーパキパキパキ……。と、焚き火が燃え盛らせる……。


「ああっ……」


 ゼブラはダルそうな声を上げ、ポリポリと頭を掻き、目を覚ました……。

 薄くなった視界を凝らし、徐々に慣らし、辺りをジィーと、眺める。あれから、どれ程、意識を失っていたのか……。と、考えたくなる。


「やあ、目を覚ましたようだね……」


 ゼブラを安心な様子で見下ろすのはホーク。


「ホークさん、久しぶりです」


 ゼブラは頭を下げ、立ち上がる。

 全身にブルッとした寒さが身に染み渡る……。夕闇により、墓場樹海は白い息が出る位、寒い。


「鬼神化で墓場樹海の空を飛んでいたら、君が気を失っていた姿が見えたのでね……。それより、彼女はずっと眠っているみたいだが、何かあったのかい?……」


 ホークは尋ねる。

 一方のユリアは、焚き火の側にマントを被せ、横たわっている……。


「ユリアは……」


 ゼブラは沈んだ様子で声を上げる……。

 しかし、話せば長くなり、どこから話せばいいか、わからない。

 それに色々あって、気持ちはガタガタであり、話したい気分にもなれない。


「その様子だと、色々あったみたいだね……。コーヒーを飲むかい?」


 と、ホークは焚き火で沸騰させた湯ヤカンを持ち上げ、コーヒー粉が入ったコップに湯を注ぎ込む。

 コップから湯気が立ち上ぼり、コーヒーの香ばしい匂いが漂う……。


ーーーー2は焚き火に当たりながら、コーヒーを飲んでいた……。


 ゼブラは、これまでの事を全てを話した。


「なるほど、そんな事が……」


 ホークは腕を組み、焚き火を眺める。


「ユリアに宿る破壊神の封印宝を取り除かれて、心臓は動いているが、目を覚まさないって……」


 ゼブラは言った。

 現実的に考えてみれば、無理かもしれない。そんな気持ちであった。


「ユーキガノス……」


 ホークは指で顎を撫で、思い浮かべる。

 歴史の本で見たことがある……。太古の時代にて最強の組織として聞いた事がある。

 破壊神ラモディウスを封印した最強の戦乙女リサ・ドラグーン。彼女(ユリア)がリサの生まれ変わりと、ゼブラから聞いた時は、思わずユリアを眺めてしまう。


「俺は、ユリアの心の居場所になるって、約束したんです。お願いします、ほんのおとぎ話でもいいんです。彼女を目を覚まさせる方法を教えてくださいッ!!」


 ゼブラは頭を下げる。

 ホークは旅人、あらゆる場所に足を踏み入れた経験豊富な旅のスペシャリスト。

 インチキな情報でも、無いよりマシ。貴重な情報であり、希望である。今、便りになるのは彼(ホーク)だけである。


「私は今まで色んな所を見て、触って、感じて来たが……。そうだな、この先のマルクの田舎町に様々な理由で受け入れ拒否された者達が来る病院がある。そこの医者は凄腕らしく、その人に見合った額で治療をするらしく、病人の駆け込み寺と呼ばれている……」


 ホークは言った。

 マルクの田舎町は、王都北東部とバービック領北西部の境域に位置している。

 

「ありがとうございます……」と、頭を下げるゼブラ。まずは希望が持てた……。


「他にも、ファンタジア共和国の北中部の森の民族の長老による奇術治療。ホワイトファング王国の隣のアルビオン帝国には、全身のあらゆるツボを指先で刺激し、刺激によって開いた肌穴や、ガタガタ上げた声から悪い病菌を排出させるテクニシャン、烈火の国エストラーダには……」


(………)


 ホークの旅話に、ゼブラは沈黙。

 どんな場所を旅をしたのか、怪しい話ばかりだが、ホークの話は面白く、絶望的な状況だが、笑ってしまった……。

 ホーク曰く、女性経験は豊富らしい。時にはヤバイ組織の女性と関係を持ってしまい、1ヶ月間、ヤバイ組織に命を狙われ続け、追い回された事があるらしい……。


ーーーー次の日。


 2人は墓場樹海の道を歩いていた。

 ゼブラはユリアをオンブし、ホークは辺りを眺め、モンスターを警戒。

 数キロ、進んだ先には山脈に囲まれた街道が伸びている。 街道の先に、マルクの田舎町。


ーーーーホークの方向が合っていた為か、墓場樹海の骨の景色は徐々に変化し、そして抜けた……。


 2人は山脈に囲まれた街道を歩いていた。

 マルクの田舎町は、徒歩では一時間弱。そんなに遠くはない……。


「ある酒場で、流しのフルートの演奏をしていた話だ。酒場の雰囲気は賑やかで、その雰囲気に合わせて落ち着いた曲を奏でていたんだ。そして演奏が終わり、拍手や黄色い声援が流れ、酒場は繁盛した」


「凄いですね、音楽も出来るんですね……」


 ゼブラは関心。

 ホークはフルートだけでなく、ギター、太鼓、歌などを演奏する事が出来る。音楽の才能を発揮し、流しの演奏で利益を得ている。

 音楽だけでなく、他にも料理、絵画も得意だ。


「繁盛はした。しかし、私の前に並んだのは男ばかりだった、普段は女性が多いのだが、何故かその日はソッチ系の男達に好かれてしまったのだよ……。しかし、その気になれば私は相手をしたかも知れないな……、まずは手錠でカチャリと拘束し、それから優しく……」


 ホークは両手の指をワシワシと握り、話ながらゼブラの方に視線を移す。


ーーーービクビクビク……。


 ホークの話に、ゼブラは木の影に隠れる。

 ホークさんは、ソッチ系の人なんじゃ……。と、危機感を覚えてしまう。


「冗談だよ、全く君は冗談というのも通じないのかい?。ホラ、おいでおいで……」


 ホークは爽やかな声で手招き……。


「そんな声で説明されたら、逆に怖いっての!!」


 ゼブラはぶるぶると身を震わせ、ツッコむ。

 ヤッパリ、ホークは変人なのかも知れない……。

 彼は良い人だが、本能的に気をつけなければならない……。と、覚えてしまう。


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