第90話 ユリアの選択……。
ーーーーユリア、その人は危険よ。アナタに宿る破壊神ラモディウスの封印宝を狙う者、私に任せて……。
リサはユリアの頭中に声を送り、警告。
そして、ユリアの瞳の色をギロリと変化させ、彼女の意識を借り、全身に詠唱文字を浮かばせ、スラスラと詠唱。
創造属性の魔力を宿し、全身に黄金の粒子を漂わせる……。意識を借りている状態とはいえ、リサのパワーは凄まじい。
「すばらしい力だ……。これが、かつて先の終末戦争を活躍した戦乙女の姿か……。しかし……」
ディアブロスはスッと手を掲げ、詠唱。
ーーーーーーッ!!
リサはピタリと全身を停止し、動けない。
まるで、全身が岩のように硬く、そしてズッシリ重い感覚だ……。
無理に動かそうとすれば、僅かにピクピク微動し、バキッと音を響かせる。
「フッハハハハハッ!!。いくらアナタでも、自我を一体していない状態では、この程度か……」
ディアブロスは手を掲げ、高笑い。
魔導の呪縛、相手の全身の感覚を奪う魔導術である。
威力は術者の力量により違ってくる……。ディアブロスは力量が高い術者であり、魔導の呪縛の威力は高い。
(この……、動きなさい……)
リサの支配下のユリアは、停止中にも関わらず、もがく……。
リサの意識とユリアの意識が一致していなければ、完全なパワーではない。完全なるパワーなら、コイツの魔導の呪縛なんぞ、簡単に打ち破れる……。
ーーーパリッ……。
と、リサの支配状態が解け、ユリアの自我に戻る……。
「私は……」
ユリアは正気に戻り、目を覚ます。
しかし、全身はピクピク微動、動かないままである……。リサは、ディアブロスの呪縛能力により、ユリアの意識の中に閉じ込められ、。一定時間、出られない。
「目が覚めたかね、お嬢さん。君の身体には、先の終末戦争時代の元凶、破壊神ラモディウスの封印宝が宿っているのだよ。わかるかい、君がユーギガノスの剣を持つ小僧と出会い、そして私が持っている封印宝の1個が君の存在を映し出来たのだよ……。君の……、身体に、宿る……、そいつになっ!!」
ーーーーディアブロスは、ユリアの胸部にビシッと指を差す。
ーーーー………。
ユリアは沈黙。
「選ばせてやろう。私の元に来るか、否か……。答えは自由だよ。リサのパワーは1つ間違えば核兵器だ、誰からにも日々、狙われ、大切な仲間達が見せしめに傷つけられ、そして心無い人々からバケモノと罵られ、石を投げられ、そして……、誰もいなくなる。先のリサのようにね……。さて、どうするユリア君?」
ディアブロスは冷酷な声を上げ、尋ねる。
脅しではない……。ディアブロス以外に、リサのパワーを兵器利用する組織は必ず現れる。
ユリアのパワーを知った人々は、彼女をバケモノと罵られ、石を投げられ、居場所を失う。
「ゼブラさんは、見捨てませんッ!!」
ユリアは不安な様子を浮かべ、反論。
「見捨てません……。フハハハハハッ!!、若い、若いなッ!!。人間、いざ現実を思い知らされると、すぐ変わるものだよ、少年は現実を知って大人になる。次々に現れる組織との戦い、偏見、孤立に、少年は嫌気と言う名の現実を知り、大人になり、やがては君の側から離れる……」
「嘘っ……。ゼブラさんは、そんな事を……」
ディアブロスの現実的な発言に、ユリアはブルブルと、戸惑う。
「再度、質問する。私と来るか、来ないか、そうすれば、誰からも狙われない。君を孤独から救ってやろう……」
ディアブロスは差し伸べのセリフ。
高圧的、現実的な選択に、ユリアの主張を、子供の反論だと一蹴し、否定。
まず、言葉で精神的に追い詰め、手を差し伸べる……。それが、ディアブロスの説得のヤリ方だ。
「行きます……。ついていきます……」
ユリアの頭中、故郷の人々、ゼブラが思い浮かび、涙をポロポロと流れ落ちる……。
全て大切な人々だからだ……。自分を狙う組織に傷つけられ、バケモノと罵られ、石を投げられる事を想像したら、耐えられなくなった。
だから、巻き込みたくない。自分が兵器だと、知られなくない。だから、着いて行く考えになった。
ーーーー〈倉庫の外〉ーーーーー
幻想空間の町中は、戦いにより、一帯の建物が破壊され、火柱が登る……。
地面全体には幾つもの爆発跡が残り、悪霊の死体が転がり、爆発跡から砂煙がモクモクと空気中に充満……。
「しつこい奴らだ……」
リディクラは地上に立ち、ハァ……、ハァ……。と、面倒臭い声を上げ、息を切らす。
数十メートル前方には鬼神化フェニックス、鬼神化ラクエリオン。
「お前さん、嫌な奴だが、鬼神化使いを二人を相手にするとは、中々やるな……」
鬼神化ラクエリオンは爪拳を構える。
久々の強敵に、彼は何と言うか、戦いを楽しんでいる……。
「覚悟しろ、リディクラ。お前の命運はここまでだッ!!」
鬼神化フェニックスは全身に炎圧を漂わせ、炎剣を構える。
「黙れッ!!。死に損ないがッ!!」
リディクラは具現化させた剣を構え、怒声。
最大に魔力を宿らせ、全身にバチバチと雷流を行き渡らせる……。
姿は、プライドの塊。負けてなるものか……。死に損ない(ゼブラ)に、負けるのが嫌だからだ。
「奴には何を言ってもムダだな、倒すしかない」
鬼神化ラクエリオンは戦闘態勢。しかし。
「ここは俺が……」
鬼神化フェニックスは、鬼神化ラクエリオンの前に立ち、炎剣を構える。
そして……、一直線に駆け走る。
「死ねッ!!、ゼブラァッ!!。死の裁撃波(ジェノサイド・ジャッジメントッ!!」
リディクラは詠唱。
地面に転がる無数の悪霊の死体を分解消滅させ、黒塵を発生。
発生させた黒塵は、巨人に具現化し、咆哮。
地面に詠唱陣が描かれ、無数の骸骨蛇が口を開き、一斉に出現。
無数の骸骨蛇は紫宝の牙をギラつかせ、鬼神化フェニックスにバチャバチャと波を泳ぎ、流撃。
ーーーーーーッ!!
ーーーー鬼神化フェニックスは陽炎のスピードで駆け走り、骸骨蛇の波を潜り抜け、前進。
そしてジャンプし、炎剣を振り下ろし、リディクラの胸に狙いを定め、剣撃。
「ぐっ……。痛いじゃないか……」
剣撃のダメージにより、リディクラは吹っ飛び、踏ん張って体勢を立て直す……。
同時に建物の屋根上にジャンプし、跳び移る。
胸部には炎属性の剣撃により、ジリジリした炎痛が全身に行き渡らせるが、彼は剣撃を受ける時、闇属性の防御力アップを展開しており、ダメージを軽減していた。
ーーーーもうよい、リディクラよ……。
空中に紫の詠唱陣が描かれ、出現したのはディアブロス。ユリアの手を握り、エスコート。
屋根上に足を着地させ、屋根瓦の上をガチャガチャと足音を踏み鳴らし、リディクラに歩み寄る。
(ごめんなさい……。ゼブラさん……)
ユリアはうつ向く。
「ユリアッ!!」
鬼神化フェニックスは、ユリアを眺める。
何で、ユリアがここに、倉庫の中は、リサの領域により、誰も入れないハズだ。
だが、今はそんな事はどうでもいい……。
「貴様が例の小僧か……。悪いが、そなたの彼女はもらっていく。諦めてくれ……」
ディアブロスは見下ろす。
「ふざけるなッ!!」
鬼神化フェニックスは飛脚。
炎剣を横に構え、ディアブロスに狙いを定め、飛びかかる……。
自身に最大まで魔力を宿し、闘志を最大にアップさせ、鬼神化を強化。
「説明させて欲しい……」
ディアブロスは掌を掲げる。
闇属性の魔力を宿した黒い衝撃波を掌から放ち、鬼神化フェニックスを吹き飛ばし、1回、回と地面に叩きつける。
「そんなモン、いらんッ!!」
ディアブロスの頭上、鬼神化ラクエリオンが飛脚し、前転キックを叩き下ろす。
「せっかちな者達だ……。少しは落ち着きたまえ……」
ディアブロスは、鬼神化ラクエリオンの前転キックをガシッと片手で受け止め、投げ飛ばす。
ーーーーーーッ!!
投げ飛ばされた鬼神化ラクエリオンは、100メートル先の建物の屋根上を突き破り、地面に落下。
まるで、ライガすら子供扱いだ……。
「彼女は、自らの意思で私に着いていくと決断したのだよ。皆に迷惑をかけない為、自身を犠牲にし、自ら修羅の道を歩む彼女に、感動したよ……」
ディアブロスはパチパチと拍手。
彼の言葉は皮肉、まるで、相手に自身の無力感を教えているみたいだ……。
属性魔力は極雷。一撃力が強力な雷属性であり、自身の属性魔力を極めに極めた属性魔力である。
「さすが、ディアブロス様。素晴らしい力でございます……ーーーーッ!!」
リディクラは腰を低く擦り寄る……。同時に、口からボトボトと、血を吐く。
胸部に、ディアブロスの雷属性の魔力により具現化させた剣が、グサリと刺さっていた。
「お前は、必要ない。今まで、ありがとう……」
ディアブロスは冷酷な様子を浮かべる。
「そんな……。ディア……、ブロス様……ーーーッ!!」
リディクラは絶叫……。
青い炎を全身に燃え盛らせ、パキパキと消滅。ディアブロスにとっては、色々と目に余るリディクラは、使い捨てのコマだ。
破壊神ラモディウスの力を得た時、リディクラは切り捨てるつもりだった。
「待てよ……、ユリアを……。返せ……」
鬼神化フェニックスは炎剣を構え、屋根上のディアブロスを睨む。
「ほう、まだ戦る気か?。いいだろう、相手にしてやろう……」
ディアブロスは屋根上から、鬼神化フェニックスに迎える様子。
ーーーーーーッ!!
鬼神化フェニックスは飛翔。
ディアブロスに狙いを定め、最大限の鳳凰属性の魔力を宿らせ、孔雀鳳凰剣を放つ。
(ふん…………)
ーーーーディアブロスは鼻で笑う。
バサッと、厚布マントをなびかせ、防御。
「孔雀鳳凰剣ッ!!」
鬼神化フェニックスは、ディアブロスの厚布マントに狙いを定め、炎剣を振り下ろす。
ーーーーッ!!
ディアブロスは、孔雀鳳凰剣を厚布マントで受け止め、跳ね返す。
ディアブロスのマントは、魔力吸収能力を持ち、孔雀鳳凰剣の魔力を吸収し、衝撃波に変えたのだ……。
「クソッ………」
鬼神化フェニックスは吹っ飛ぶ。
空中でグルグル回転するが、態勢を立て直し、炎剣を構える。
ディアブロスの姿は、いない。どこに行った……。と、キョロキョロと眺める。
「コッチだ……」
ディアブロスは、鬼神化フェニックスの背後に移動し、空中浮遊。
魔力を軽く宿らせた右掌をスッと掲げ、極雷属性の衝撃波を放つ。
極雷属性の衝撃波の威力は、1体の大型モンスターを倒せる程、高い。
ーーーーーッ!!
鬼神化フェニックスは、極雷の衝撃波に吹き飛ばされ、建物の壁を突き破り、叩きつけられる。
屋内の壁にもたれ、叩きつけられたショックで鬼神化が解ける……。空気中、チリチリした塵が充満し、視界が不良。
「まだ、生きているかもしれん……」
ディアブロスは地上に降り立ち、ゼブラの着地した建物をジィーと、眺める。
ーーーーすると、ディアブロスの背後に歩み寄る1人の青年。
「ヴァンか、丁度よかった。この先にいる小僧にトドメを刺してこい。奴は生かしておけば、厄介になる……」
ディアブロスは高圧に命を与える。
(…………)
ヴァンは、コクリと頷く。
そしてスラリと剣を抜き、スタスタと足音を響かせ、ゼブラが倒れている屋内に歩み進む。
ゼブラは、壁に背中をもたれかけ、頭を下げている。今なら、楽にトドメを刺せる。
ヴァンの決断は……。短い間だが、互いに共闘した仲だ。どうする……。
(ヴァン…………)
ゼブラはモヤモヤした薄い意識の中、顔を上げる。絶体絶命、今の体力では、どうしようもない。
「この先の墓場樹海にそびえる塔、そこが俺達のアジトだ。これ、塔を出現させる為のブレスレット、これを掲げろ……」
ヴァンは、ボソッと伝える。
ポケットから予備のブレスレットを取り出し、地面にポトリと落とした……。
ディアブロスのアジトの塔は、普段は幻想魔導術により、姿ゆ隠している。認めた部下達には、塔を出現させる専用のブレスレットを渡している。
(……ヴァン………)
ゼブラは薄い意識の中、ブレスレットを眺める。
「じゃあな……」
ヴァンは背を向け、立ち去り、ディアブロスの所に歩み戻る。
何で、コイツ(ゼブラ)を助けたのだろう……。 言葉にはできない、何かこう……、殺したくない気持ち、何かを変えてくれそうな本能的な期待が、僅に自身を熱くさせたからだ。
「早かったな……」
ディアブロスは尋ねる。
「死んでいたからな……。頭を強く打っていた。わざわざ、トドメを刺す必要なかった……」
と、ヴァンは何食わぬ様子を浮かべ、剣を鞘に納める……。
「では、行くとしよう……」
ディアブロスは手を掲げ、全体に展開する幻想魔導術を霧のように、過ぎ去り、解徐。
幻想魔導術を解き、元の領域の正体はボロボロの廃墟町。ここの町は昔、原因不明の伝染病により、多くの人々が死に、滅亡した。
呪い殺されるように、干からびて死に逝く人々の姿に、死霊の呪いとして語り継がれる……。
(ごめんなさい、ゼブラさん……)
ユリアは前髪で表情を隠し、ガシッと拳を握る。
隠した表情から、ポタポタと涙が零れ、約束を裏切ってしまったゼブラに悔しい気持ちが憤る。
「空間門よ。開け……」
ディアブロスは、紫宝の魔導球を地面にポトッと落とし、空間転移の詠唱陣を展開させる。
ーーーーそして、ディアブロス、ユリアは空間転移の詠唱陣に入り、アジトに空間転移。
(待っているぜ、死に損ない……)
ヴァンは、ゼブラが倒れている屋内を睨み、来るか来ないかを期待する……。その後、空間転移の詠唱陣に入り、空間転移。
皆が空間転移した同時に、詠唱陣は消滅した。




