第89話 ディアブロス登場
「そうだな、今は鬼神化にクヨクヨしてる暇ないよな……。アドバイス、ありがとう」
ーーーゼブラは再度、鬼神化フェニックスに変身し、翼部に炎を羽ばたかせる。
今度は気持ちが安定し、パキパキと炎を全身に燃え盛らせ、いい感じだ。
戦う訳、今の自分には分からないが、気持ちの中に、ユリアが浮かび上がっている。
「別にアドバイスのつもりじゃねぇよ……。俺の場合、失敗に悔いている暇がなく、何が何でも進み、自力で克服するしか無かったからよ……」
鬼神化ラクエリオンは、ドシッと足を踏み、辺りをキョロキョロと眺める。
我ながら、クサイ台詞を言ってしまった……。と、照れ臭く呟くライガである。
「自力でか……。カッコいいな……」
鬼神化フェニックスは、鬼神化ラクエリオンの相互に背中を合わせ、炎剣を構える。
何か、ライガの言葉に吹っ切れた感じがする……。と、ゼブラは安堵。
ーーーーすると。
「おや、作戦は失敗だったかな……」
鬼神化フェニックスの数十メートル前方の先にはリディクラが嫌な笑顔を見せる。
「もう、通用しないぜ。オラ、さっさと来いよ」
鬼神化フェニックスは、コイコイと手を招き、逆挑発。
「……その前に、取引しよう」
リディクラは腕を組む。
「取引?」
鬼神化フェニックスは臨戦体勢。
「あの娘を渡せ……。そうすれば、命は助けてやるし、俺達の仲間にしてやってもいい。そもそも、俺の目的はリサの生まれ変わりの娘の確保だ。あの、娘はどこだ?」
リディクラは尋ねる。
「嫌だね……。お前なんかに、ユリアは渡さないッ!!」
ーーーー鬼神化フェニックスは、全身に炎を燃え盛らせ、威圧で返答。
奴が、リサが言っていた(破壊神の封印宝)を狙う者達である……。破壊神ラモディウスの力を手に入れ、世界を支配する事を考えているのだろう。
しかし、終末戦争時代の元凶のパワーをコントロール出来る程、甘くない。
「なら、殺してやるよ……」
リディクラの裁炎の属性魔力の付与し、全身に白銀の炎を燃え盛らせ、髪をトゲトゲに逆立てる。
右手に白銀の炎剣を具現化させ、片手に構える。
ーーーーーッ!!
鬼神化フェニックスは炎剣を構え、駆け走る。
「裁炎の刺撃(ジャッジ・ブレイクッ!!」
リディクラは詠唱。
空中に無数の魔力ポイントを広げ、詠唱陣を描き、ガシュッガシュッと、一斉に展開させる。
空中、地上から、無数の詠唱陣から白銀のトゲをビシッと隆起し、鬼神化フェニックスに放つ。
ーーーーッ!!
鬼神化フェニックスは察知。
詠唱陣から伸びるトゲを潜り抜け、飛び越え、回避し、前進。
地上、空中の詠唱陣から一斉に伸びたトゲは、地面に突き刺さり、針地帯化。
ーーーー……。
鬼神化フェニックスの中間距離、リディクラは悪霊に変身し、鎌を振るう。
ーーーーッ!!
と、鬼神化フェニックスは炎剣を振るい、悪霊を一撃。
「こっちだ……」
鬼神化フェニックスの左側の建物の屋上、リディクラは不敵に手をあげる。
悪霊を身代わりに、建物の屋上に移動したのだ。
「忘れてないか?」
リディクラの頭上からだ。
鬼神化ラクエリオンが空中で一回転し、リディクラの頭上に前転キックを叩き込み、バキバキと音を響かせる。
リディクラは屋上から地上まで突き破り、降下。 建物は鬼神化ラクエリオンの前転キックの蹴撃により、倒壊。
「君達こそ、忘れてないか?。ここは私が作り出した幻想空間、どこにでも移動出来るのだよ……」
鬼神化フェニックスの後方、リディクラの声。
リディクラは地上に空間転移し、クスクスと笑っている。
そして、指をパチンと鳴らし、倒壊した建物が巻き戻り、復活。地面、空中全体に詠唱陣が無数に描かれ、悪霊の集団が出現。
幻想空間は、リディクラの空間転移範囲でもあり、自在に魔導術を展開出来るのだ。
「またモンスターか……」
鬼神化フェニックスはリディクラに向かい、炎剣を構える。
「おたくの知り合い、楽しい奴だ。どんな得物を持っているか楽しみだな……」
鬼神化ラクエリオンは、鬼神化フェニックスの隣に移動し、両爪をガシッと構える。
手練れの魔導師に、莫大な得物が付き物。と、ライガは思っている。得物を売買すれば、どれ程の所持金が増えるか楽しみだ。
ーーーー〈廃倉庫〉ーーーー
その頃、ユリアは荷袋の山に足を伸ばし、静かに座っていた。
待機し、やること無いので、辺りを眺め、沈黙。
倉庫全体にはリサの領域が展開し、人間は察知出来ず、悪霊等のモンスターは近づけない。
ーーーーズウッ……。
外の戦闘による衝撃が建物の中に響き、天井からパラパラとホコリやチリが降ってくる……。
地面を動き回るトカゲ、クモ、ネズミは音に反応し、床穴やスキマに逃げ込む……。
「へっくしゅ……」
ユリアはカワイイくしゃみ。
どれ程、時間が経っているのだろう……。外は壮絶な戦場、出られない。
外の戦場とは違い、倉庫の中は静寂で平和だ。2人が無事に帰って来ますように……。と、ユリアは祈る……。
倉庫全体の窓ガラスがパキパキと音を響かせ、見つかった。と、思い、ハラハラした気持ちになる。
ーーーー2人なら大丈夫よ。反応が消えていないかり無事よ……。
リサはユリアの頭中に声を送り、伝える。
「ありがとうございます」
ユリアは頭を下げる。
ーーーーところで、聞きたい事がある。アナタは、ゼブラの事をどう思っているのかしら?
リサは、ユリアの頭中に声を送り、尋ねる。
「ええっ!!。私は……、そね……。ゼブラさんの事は……、その……」
リサの質問に、ユリアは思わず顔をカァーと赤くし、アタフタアタフタと焦る。
ーーーーアナタの気持ちから伺うと、ゼブラの事が浮かび上がっている事がある。アナタの気持は?
リサは尋ねる。
「私は……。その……」
ユリアは言葉を詰まらせる。
しかし、ユリアがゼブラに対する気持は……、何とも言えず、ハッキリした事を言えないでいる。
嫌いではない、好き以上恋人未満の状態だ。
ーーーーもう、いいわ。あと、ここにアナタ一人しかいなくて良かったね……。他の人に見られたらアナタ、妄想に悶える変な人よ……
と、リサは声を送る。
「もう、イジワルしないで下さい」
ユリアはムスッとした様子を浮かべる。
今の状況、独り言に悶える危ない人である。他の人が見れば、スルスルと距離を置くだろう。
しかし、人によれば可愛いと思う……。
ーーーーズウッ………。
その時、地面に出現した詠唱陣。スラスラと自動的に詠唱文字が描かれ、光る。
モンスターだろうか……。しかし、リサの領域により、外部からの侵入は不可能なハズだ。一体、何が起こるのだろうか……。
ーーーーーーッ!!
ユリアは顔を隠し、ピカッと輝く光を防ぐ。
「はじめまして……」
詠唱陣から現れたのは、一人の男。
身長は2メートル。クシャクシャの白髪、彫り深い顔、長い髭。歳は60代、ガッチリした体格に黒曜の鎧を全身に装備し、広背には厚毛のマント。
姿は老年の魔導騎士、カチャカチャと鎧から音を響かせ、ユリアに歩み寄る……。
「アナタは……」
ユリアは声を上げ、後の壁際までズルズルと下がる……。男の威圧に、気持ちがキュッと臆する。
「私の名前はディアブロス。迎えに上がりました、ユリア……。いえ、リサ・ドラグーン」
ディアブロスは礼儀正しく、お辞儀。
元々は名のある地位の騎士だったのか、威圧的な姿とは裏腹に、落ち着いた様子である。
奴の威圧から漂わせる熱圧、高い能力を有し、力量を表している。




