第79話 創造の戦乙女(クリエイトヴァルキリー)
「お姉さまは、この城の動力源である水晶の中に閉じ込めてある。言っておくけど、この水晶は簡単には壊せないし、私を倒しても壊れない。と、言っても簡単には触らせないけど……」
アンドラスは魔力水晶に指し、ニヤニヤと説明。
水晶は城の動力源、アンドラスの共有感覚は関係ない。奴の属性は、闇と創造の2つの属性魔力を宿している。
「そうか、ならお前を倒してから、破壊するとしよう……」
ーーーアンドラスの背後に、鬼神化フェニックスは俊足のスピードで移動し、炎剣を振るう。
現在、龍老樹の塔の内部はアンドラスの魔力により、魔力回復能力が発動している。
魔力回復能力により、鬼神化の2人は魔力が回復し、全ての能力がアップしている。
「何それ、笑わせてるつもり?」
ーーーアンドラスはギラリとした眼差しを光らせ、振り向き、右の爪手で受け止める。
ーーーーッ!!
と、鬼神化フェニックス、アンドラスは数十メートルの距離まで跳び下がる。
ーーーーッ!!
ーーーアンドラスは瞬間スピードで鬼神化フェニックスの後方に移動し、左の爪手を振るい、紫炎の斬撃波を放つ。
紫炎の斬撃波は黒雷をバチバチと流し、凄まじい魔力を示している。
「ーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは振り向き、アンドラスの紫炎の斬撃波を炎剣で受け止めるが、数十メートルの距離まで弾かれ、後退。
鬼神化を持ってすら、アンドラスのスピードに付いていくのが、やっとである。龍老樹力を得た事により、桁外れにパワーアップしている……。
「龍老の地撃」
アンドラスは右の爪手を地面に押し立て、詠唱。
ーーー地面から尖岩の波が広がり、鬼神化フェニックスに向かい、放流。
「ーーーーーッ!!」
ーーー鬼神化フェニックスは尖岩の波に向かい、駆け走る。
地面から一斉隆起を展開する尖岩の波を一歩一歩、跳び越え、空中から炎剣を構え、アンドラスに狙いを定める。
ーーーーッ!!
アンドラスは瞬間的なスピードで移動。
「ーーーーーーッ!!」
どこに行った……。と、鬼神化フェニックスは空中で辺りを眺める。
「こっち、こっち……」
ーーーアンドラスは鬼神化フェニックスの背後に移動し、左の爪撃を与え、吹っ飛ばす。
ーーーーッ!!
アンドラスの全身にズシッとした感覚。
空中に鬼神化・重力の魔王の属性魔力の重力を漂わせる。
「重力の雨撃ッ!!」
ーーーアンドラスの右側の位置から、鬼神化・重力の魔王は黒剣を掲げ、アンドラスの空中全体に無数の詠唱陣を描く。
しかし……。
「甘いね……」
アンドラスは両爪手を広げる……。
鬼神化・重力の魔王の無数の詠唱陣を打ち消し、バチバチと雷流を行き渡る黒い雷球に変換させる。
魔力変換魔導術、相手の魔力を自身の魔力に変換させる術であり、高度な魔導術である。
「ーーーーッ!!」
鬼神化・重力の魔王は危機を察知し、空中飛行し、後退。
ーーーーッ!!
3体の黒い雷球は地面に入り込み、無数の黒鱗の触手として地面から姿を変え、地上から鬼神化・重力の魔王に伸び、襲いかかる。
「ーーーーーーッ!!」
ーーー鬼神化・重力の魔王はバックステップで伸びる黒鱗の触手を回避し、跳び移り、重力属性の黒熱を宿らせた黒剣を振るい、斬る、斬る、斬る、斬る……。
ーーーー地面にジタバタと震わせ、黒鱗の触手の残骸の上空からアンドラスは眺める。
「重力の爆裂波ッ!!」
ーーー鬼神化・重力の魔王は体勢を立て直し、詠唱。
黒紫の詠唱陣を描き、重力の爆裂波を放射。
ーーーーーッ!!
アンドラスは左の爪手を掲げる。
4体の黒い雷球を自身の正面に移動させ、4重に張った詠唱陣の魔力結界を展開させ、重力の爆裂波を無力化。
「孔雀鳳凰剣ッ!!」
ーーー鬼神化フェニックスは炎剣を上段に構え、右側からアンドラスに空中から振るう。
ーーーーーッ!!
アンドラスは、見切れない程のスピードで鬼神化フェニックスの背後に移動し、魔力を宿らせた右の爪手で掌撃を与え、鬼神化フェニックスを1回、2回、と、地面に叩きつけ、吹っ飛ばす。
ーーーーッ!!
アンドラスの空中に無数の詠唱陣が描かれ、重力をズシッと漂わせる。
「重力の雨撃ッ!!」
ーーーアンドラスの空中に描かれる無数の詠唱陣から黒熱の光線を一斉放射。
「削除……。創造の爆裂」
ーーーアンドラスは右の爪手を掲げ、無数の詠唱陣を消去。
同時に自身の魔力に変換、紫の魔力剣に具現化させ、鬼神化・重力の魔王の位置に一斉に放ち、黒金の球形爆発を展開。
「ーーーーーッ!!」
ーーー鬼神化・重力の魔王は、創造の爆裂を浴び、吹っ飛ばされる。
地面を1回、2回、と叩きつけられ、空中でクルリと立て直し、黒剣を構える。しかし……。
「創造の直通撃」
ーーーアンドラスは右の爪指から金の光線を放ち、鬼神化・重力の魔王の胸に直撃を与え、貫通。
「があっ………」
ダメージの衝撃に、ヴァンの鬼神化が解け、うつ伏せに倒れ伏す。
胸に風穴が開き、口から大量の血を噴き出し、ピクピクと全身を痙攣させている。数秒後、ヴァンは顔をあげる事も、身体も動かなくなった……。
「ヴァンッ!!」
鬼神化フェニックスは、ダメージを負い、倒れ伏しているヴァンの方向に視線を移す。
ーーーーーッ!!
アンドラスは、鬼神化フェニックスの正面に移動し、左の爪を胸にグシャと突き刺す。
「グハッ……」
胸を刺された事により、ゼブラの鬼神化は解け、口から血を吐き出している。
吐き出した血は、爪先から地面に向かい、ポタポタと滴らせる。凄まじいダメージにより、痛覚を失い、全身をピクピクと痙攣させる。
「はい、おしまい……」
アンドラスはゼブラを投げ、地面に叩きつける。
肉を叩きつける生々しい音が響き渡り、静寂の雰囲気が充満……。
「……リ……アッ……」
うつ伏せに倒れ、力無く手を伸ばし、ゼブラは虫の息で声をあげる。胸をグサリと刺された事により、満足に事はあげられない。
白濁にジワリと広まり、染まる視界、魔力水晶に閉じ込められているユリアを、力無く眺める。
ーーーー……。
その時、地面全体に無数の穴がブツブツと現出し、穴から赤い液体が噴出。
赤い液体は地面全体に広がり、赤い海と化し、屋内全体は、赤い光を不気味に照らす……。
赤い液体に、ゼブラ、ヴァンはヒタヒタに染み渡り、瀕死状態により、瞳孔は開いたままである。
「今、この赤い液体は、血よ。それも、何人も何人も、ユーギガノス時代から現代まで、幾万、幾億の人の血なんだ。人間の憎しみ、悲しみ、怒り、全てが具現化した光景がコレなんだ。龍老樹は負の遺産、同時に、力だ……」
アンドラスは、血の海の上をフワリと足元を浮かせ、語る。
龍老樹は、リサから授かった人々の希望、母なる大樹であり、同時に、負の遺産でもある。アンドラスの魔力により、ユーギガノス時代から現代まで送ってきた負の歴史を、ありのまま再現している。
ーーーーッ!!
叫び顔を浮かべた無数の霊体が、空中をフワリと漂わせる。
「いい眺めだ……。憎しみ、悲しみ、怒り、魔族である私のエネルギーだ。力が沸いてくるよ……」
アンドラスは両爪手を広げ、ピキピキと無数の血管を膨らせ、全身から黒い熱圧を漂わせる。
そして、野望を語る……。魔界を、支配してやる。力による圧倒的支配、歯向かう者は、容赦なく紅の粛正。現実は、目の前だ……。
ーーーーその時……。
ーーーーッ!!
ユリアを取り込む魔力水晶が、黄金の光を輝かせ、異空間全体を照らし、血の海は消え、全域に漂わせる霊体は、浄化され、消滅……。
眩く、温い……。魔族の嫌いな光であり、リキリした感覚がアンドラスの全身に広がる。
「何だ、この光は?……」
アンドラスは冷や汗を流し、魔力水晶を眺める。
ーーーーッ!!
魔力水晶はパリン……。と、ガラスが割れた音を響かせ、砕かれる。
割れた所から、夜明けの閃光が全体に広がり、アンドラスに、希望が大粒の額汗となり、現れる。
何だ、この感じは……。人間の裏の本質である闇が感じられず、逆に希望味が溢れ、暖かい気持ちになる。
「光……、光……、光……」
アンドラスは額を掻き掴み、険しく息を切らす。
ーーーー………。
夜明けの閃光が晴れ、白銀の粒子煙を地面一辺にに充満させ、魔力水晶から姿を現したのは戦乙女。
サラリとしたサクラ色のロングヘアー、シュッとした細い美顔。
瞳は透き通るように青く、袖無しの黄金のビキニアーマー、銀のガントレット。
広背部には紫宝エレメントの翼、下は紅のミニスカート、腰部には黄金のウェストアーマー。脚には樫革のブーツ。
「何者だっ!!、お前はっ!?」
アンドラスはガタガタな声をあげる。
ーーーー……。
戦乙女は、アンドラスに視線をキリッと、向ける。
全身から創造エネルギーの粒子を漂わせ、アンドラスの力量を遥かに凌駕する力量を、全体に展開している。
ーーーー創造の戦乙女。終末戦争時代、破壊神ラモディウスと戦った伝説の戦乙女、リサの鬼神化である。
ユリアが閉じ込められ、生まれ変わりであるリサの人格が意識の中から目覚め、鬼神化が発動した。
「バカな、リサの鬼神化が発動するなんて、極めて低いっ!!そんな、ハズがあるかぁ!!」
ーーーアンドラスは左手に魔剣アメジストグリモア、右手に魔剣サクリファイスロータスを現出させ、体勢を低く構え、鬼神化・創造の戦乙女に突っ込む。
後、一歩、魔界支配が実現化するというのに、壊されてたまるか……。と、険しい様子を浮かべる。
ーーーーッ!!
一瞬だった……。鬼神化・創造の戦乙女は、左手に聖剣、右手に大盾を具現化させ、瞬間スピードでアンドラスの右側を通り過ぎ、止まる。
そして、涼しい様子を浮かべ、アンドラスに振り向く……。
「ーーーーッ!!。があぁぁぁぁ、腕が、腕がぁぁぁぁぁぁッ!!」
ーーーーアンドラスの右腕は、魔剣サクリファイスロータスごと地面にゴトリと切り落とされ、浄化。
切り落とされた左腕の断面から、浄化煙がブスブスと吹き出し、痛々しい。
奴の再生能力は、創造エネルギーにより、無効化されている。
ーーーー……。
鬼神化・創造の戦乙女は剣を掲げ、全身から黄金の光粒子を漂わせ、詠唱。
「負けて、なるものか……。負けて、なるものかぁっ!!」
アンドラスは右手の魔剣アメジストグリモアを片手に構え、突っ込む。
全身から極闇の熱圧を最大級まで漂わせ、最大級の魔の意思を伺わせる。見苦しく、意地汚く、そして……、哀れ……。
ーーー創造の光撃。
鬼神化・創造の戦乙女は術を発動。
ーーーーーッ!!
ーーー地面全体から、無数の光の棘柱が隆起。
アンドラスの全身に無数の光の棘柱が、肩、胸、腹部、至る所に突き刺さり、串刺し状態。
串刺し状態のアンドラス、黒血がポタポタと地面に滴らせ、無残な姿。
創造の光撃、創造属性による下位魔導術である。
ーーーー……。
鬼神化・創造の戦乙女は、剣を掲げ、軽く詠唱。
「うぁああああああっ、やめろ、やめてくれぇぇぇぇぇぇっ!!。ツタが、ツタが、私の身体から、生えてくるっ!!」
ーーー無残な姿で吊るされ、アンドラスは絶叫。
アンドラスの両手足、腹部から、植物の触手がパキパキと発芽し、全身の肌表面から緑の苔が広がり、足から腰、そして徐々に腹部、腕に広がる。
「捕らえられた2つの魂は生命の樹に還った。土に還りし魂は、風、植物、動物に生まれ変わり、誕生する……」
鬼神化・創造の戦乙女はコツコツと歩み寄り、アンドラスの運命を見守る。
「私は、これから死を迎える……。魔族に生まれ変わり、地下世界アストラル、そして次は地上のグレイランドを侵略してやる、覚えていろ、キャハハハハハハ……」
アンドラスは不安定な笑い声を響かせ、植物触手を絡ませた1本の樹に変わった。
鬼神化・創造の戦乙女のは、自身の属性魔力に、生命に還れ……。と、命令し、アンドラスに宿している創造属性から植物を展開させた。
つまり、アンドラスは、自身に創造属性を宿し、パワーアップした事がアダになった。
ーーーーそして……。
空間全体に緑が広がり、地面全体から植物のツタが無数に茂り、闇は消滅した。
創造の治癒……。
鬼神化・創造の戦乙女は剣を掲げ、ゼブラ、ヴァンを緑の球体に包み込み、回復。
緑の球体に包み込まれ、ゼブラ、ヴァンは宙に浮き、ダメージを受けた肉体を癒していく……。
創造の治癒は、全てのダメージによる仮死状態から回復し、ダメージを受けた肉体を再構築し、蘇生させる能力である。
ゼブラ、ヴァンはギリギリであるが、全回復し、死亡は免れた……。




