第76話 希望は、託された……。
「待て、2人共……」
ムジカは決心の声を上げ、ゼブラとヴァンを呼び止める……。
自分は間違っていた。勝利の為に、大切な人を犠牲し、勝利したとしても、祖先のアストラルは喜ばない。彼なら、自身の命を犠牲にしても、大切な人を助けに行くだろう。
ーーー2人は、ムジカに振り向く。
「ーーーーッ!!」
ムジカは2人の肩を後ろから掴み、詠唱。
「ーーーーーッ!!」
ゼブラ、ヴァンの足元に詠唱陣が描かれ、回復。
全身から緑の光粒子が放出し、与えられたダメージ、重い疲労感が、抜けていく。
体調はまるで朝起きた様に軽く、よい気分……。
「うっ……。頼んだぞ、2人共……」
回復魔導術を唱えた後、ムジカの髪は白濁に変色し、顔中はパキパキとシワが広がる。
彼は全ての魔力を2人に流し込み、回復させたのだ。今の自分が戦うより、2人に託した方が、得策と判断したのだ。
「ああっ……」
ゼブラは鬼神化フェニックスに変身。
「俺は、あのクソガキにムカついたから貴様に協力するだけだ。奴に借りを返さなくてはな……」
ヴァンは、鬼神化・重力の魔王に変身。
彼は魔界軍に追われ、殺されかけ、死にかけた……。 と、アンドラスから見せる冷酷な表情により、ここまでの思い出に腹が立ち、許せない。
ーーーー2人の鬼神化使いは、黒い異形を睨む。
同時に、黒熱の微風が、地面全体に暖かく吹き付け、漂わせる……。
「かはっ……。ハァ……、ハァ……」
ムジカは咳き込み、へたり込む。
全身の感覚は軋むように痛々しく、多大な疲労感がズシッと現れていた。
「ムジカさんっ!!」
ムサシはムジカの肩を抱き、支える。
ーーーーッ!!。
2人の鬼神化使いは飛翔し、黒い異形に向かい、空を切るスピードで飛行するのである。
2人を、信じよう。待っているのは、地下世界アストラルに生きる者達全てである。
ーーーユーギガノスに選ばれし刃
戦地を駆け抜ける時
始まりの戦乙女は目覚め、運命は2つに1つに別れん……。
~ミュードロウ黙示録来の詩。
(頼んだぞ……。二人共……)
ムジカは瞳を力無く閉じ、何を思ったのか、ミュードロウの黙示録を思い出した。
先の運命は2人次第、先は希望、終末か……。
ーーーー〈エボルド森林上空域〉ーーーー
ーーー鬼神化フェニックス、鬼神化・重力の魔王は、森林上空を飛行。
地上の森林全体は、黒い異形から広がる魔力により枯渇し、荒廃の地帯となっている。
荒廃地帯には、逃げ切れなかった小動物、兵士の戦死体の白骨死骸が散らばり、黒熱の毒素が充満。
ーーーーーッ!!
ーーー黒い異形は空中にズウッと地鳴りを響かせ、地上に黒熱の毒素を噴出させる。
ーーー鬼神化フェニックス、鬼神化・重力の魔王は空中で停止し、眺める。
「近くで見ると、凄い威圧感だな……」
鬼神化フェニックスは炎剣を構え、伺う。
ーーーーーッ!!
黒い異形は全体に黒熱の毒素を放出させ、震わせる。
「ーーーーーーッ!!」
ーーーーすると、鬼神化フェニックス、鬼神化・重力の魔王は察知し、一辺に離散し、空中移動。
ーーーーッ!!
ーーー離散した所から黒球の粒子爆発が発生。
黒い異形は、空中に漂わせる毒素を無差別な場所に凝縮させ、粒子爆発を発生させる。
1発の粒子爆発の威力は、龍老樹の力を宿している事により、大きい。
「ーーーーーーッ!!」
ーーー鬼神化フェニックス、鬼神化・重力の魔王は粒子爆発の場所を察知しながら、空中移動。
空を切るスピードで飛行し、回避、回避、回避。
ーーー空中に広がる黒球の粒子爆発。
爆煙が充満し、爆煙から魔力を凝縮させ、粒子爆発を繰り返す。
「クソッ。入り口が分からないし、爆発で近づけないっ!!」
鬼神化フェニックスは数百メートルの距離まで下がり、空中停止し、黒い異形を眺める。
黒い異形の空中爆発は、範囲が限られている為、鬼神化フェニックスの距離まで届かない。
しかし、長くは戦っている時間はない……。
「何だ。大層に言ってた割には言い訳か?」
ーーー鬼神化・重力の魔王は鬼神化フェニックスの隣に移動し、炎剣を片手で
構える。
「言ってるお前も、こっちに来てるじゃねぇか?」
と、鬼神化・重力の魔王をムッと睨む鬼神化フェニックス。
「貴様とは理由が違う。こっちは入り口に入る作戦を思いつき、実行しようする所だ……」
鬼神化・重力の魔王は黒剣を構え、黒い異形を眺める。
ヴァンは空中移動の中、鬼神化の思考力から戦術を想像し、考えていた。現役の傭兵である彼は、戦術が豊富であり、ゼブラとは経験が違う……。




