第67話 VSアンドラス
「チェルシー……。いや、アンドラス、貴様をユーギガノスの名の下に、無に葬らんとする」
ムジカは剣を構え、冷徹の表情。
仲間であるチェルシーは、地下世界アストラルに戦争を引き起こした黒幕。仲間の情を欠き消し、代わりに冷たく、そして熱い戦闘意識がジリジリと滲み出す。
「私と戦う気かい?。なら、戦闘領域をチェンジだね」
アンドラスはパチンと指を鳴らす。
ーーーその時、龍老樹の広間全体に生え茂る草花が一斉に悲鳴をあげるように、白い粉塵を空中に発生させ、ズシンと揺れる……。
「まさか……。やめろっ、この場所を壊すなっ!!」
鬼神化フェニックスは何かを察知し、アンドラスに視線を向ける。
ーーーそして、龍老樹の広間全体に生え茂る草花は一斉に粉塵化し、巻き上がる。
地面の土質は死に、褐色に荒廃し、残ったのは、木ノ葉がパキパキに枯れた龍老樹、全体は広域な闘技場と化した。
「これで、スッキリしたでしょ?」
アンドラスは無邪気かつ、残虐なスマイル。
龍老樹の広間に生えていた草花は、地下世界アストラルで生を終えた生きとし生きる者の魂を表し、還る場所を意味している。
「貴様、今やった事の意味を分かっているのか?。ここの花達は皆、地下世界アストラルで死に、生まれた全ての命、それを貴様は全て消したんだぞっ!!」
ムジカは剣を突きつけ、怒りの咆哮。
龍老樹の広間に生える草花を消した事は、人を大量虐殺した事を意味する。
「所詮、花でしょ?。人間と同じで弱く、いつかは朽ち果てる運命。違う?」
「なら、教えてやる。貴様に人間の強さを……」
ムジカは四属性の魔力を宿し、虹色の熱圧を全身に漂わせ、剣を構える。
「なら、遊んであげる。言っておくけど、私は強いよ。力を暴走させて消滅させたローズ・ハットンとは訳が違う。まぁ、用済みになれば彼も消すつもりだったけど手間が省けたよ。もし、君達が私を倒せば、お姉様を返してあげる」
アンドラスは龍老樹の太枝から飛び降り、体勢を立て直す。
ーーー異次元に高い魔力を宿し、全身からドス黒く、熱圧、バチバチとした黒い雷流を漂わせる。
全身に漂わせる熱圧、雷流により、小石や塵が浮遊し、能力値の高さを物語る。
「なら、全力で行く。氷よッ!!」
ーーームジカは氷属性の魔力を宿し、ビシッと左手で詠唱陣を描き、詠唱。
そして、全域にキラキラと光る氷の粒子が充満し、氷の霧を展開。
「ーーーーッ!!」
氷の粒子はパキパキと凝縮し、10体のムジカの造形分身を形成。
ムジカの分身達は剣をスラリと構え、アンドラスに斬りかかる。
(ふん……)と、アンドラスは指を鳴らす。
ーーーーアンドラスが指を鳴らしたと同時に、ムジカの造形分身達はパキっと割れ、消滅……。
奴は指先に自身の魔力を宿らせ、音波を響かせ、造形分身に宿る魔力を解放させ、浄化させたのだ。
「こんな小細工が通用するとでも?」
アンドラスは黒い息を吐き、不敵に笑う。
「ーーーーッ!!」
ーーー鬼神化フェニックスは炎剣を構え、陽炎のスピードで突っ込み、中間距離からアンドラスに狙いを定め、炎剣を振るう。
「クスクスクス……」
ーーーーアンドラスはクスクスと笑い、瞬間移動のスピードで回避し、鬼神化フェニックスの背後に移動。
「ーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは察知。
背後に移動したアンドラスに振り向き、炎剣を脇に振るう。
「甘い」
ーーーアンドラスは魔力を宿らせた右掌をビシッと掲げ、黒熱の衝撃波の放つ。
鬼神化フェニックスを吹き飛ばさし、一回、二回と地面に叩きつける。
「ーーーーーッ!!」
ーーー重力を漂わせ、鬼神化・重力の魔王は黒剣を構え、投げ飛ばされる鬼神化フェニックスの横を通過し、アンドラスを正面から突っ込む。
鬼神化・重力の魔王から漂わせる重力を浴びれば、並の人間なら重圧で動けない。しかし……。
「ーーーーーッ!!」
アンドラスは中間距離からガシッと両手を伸ばし、鬼神化・重力の魔王の黒剣を掴み、グルグルと回し、左側に投げ飛ばす。
「ーーーーーーッ!!」
ーーー投げ飛ばされた鬼神化・重力の魔王は壁に衝突跡を残し、叩きつけられる。
(………)
アンドラスは辺りを眺める。
熱を加えた紅の霧がジワジワと空気中に漂い、パキンと音を響かせ、10体の粒子結晶体に造形化させていた。
「ーーーーーッ!!」
ーーー10体の結晶体はムジカに姿を変え、剣を構え、アンドラスに斬りかかる。
紅の霧の正体はムジカの幻想魔導術、結晶体から変身させ、囮攻撃を仕掛ける戦法だ。
ムジカの分身はいくら破壊しても、魔力が続く限り、再生する。
「ーーーーーーッ!」
アンドラスは屈み、跳脚。
ーーー1体、2体、3体、と、同時に振るう分身ムジカの剣撃を潜り抜ける。
ーーー潜り抜けた先、アンドラスの正面に2体の分身ムジカが剣を振り下ろす。
「ーーーーーーッ!!」
アンドラスは立ち止まり、2体の分身ムジカの剣を両手でガシッと受け止める。しかし……。
パキパキパキ………。
ーーー2体の分身ムジカは紅熱の結晶宝に変化し、アンドラスの全身を摂り込む。
「ーーーーーッ!!」
ーーーアンドラスを摂り込み、結晶体化したアンドラスの左側から鬼神化フェニックス、右側から鬼神化・重力の魔王が剣をガシュと突き刺し、魔力を注入。
魔族には、物理攻撃を加えるより、魔力を直接注入すればダメージの効率はよい。
「何をしているの?」
アンドラスの声。
「ーーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックス、鬼神化・重力の魔王は声の方向である右側に視先を向ける……。
映るのは、ムジカの喉元から片手で持ち上げ、残酷な笑みを浮かべるアンドラス。
分身ムジカの姿は一体も見当たらない……。恐らく魔力解放されて消滅したのだろう。
結晶石に摂り込まれたアンドラスは偽者、いや、摂り込まる直前に、自身の肉体から精神体だけを脱出させ、後方に移動し、精神体から肉体を再構築した……。
「こんなんで私を倒そうと?」
アンドラスはムジカをポイッと投げ飛ばす。
「ゲホッ、ゲホッゲホッ!!」
地面に叩きつけられ、苦悶の様子を浮かべながら咳き込むムジカ。
「さて、準備運動はこの位にして……」
アンドラスは首をコキコキと鳴らし、両手を掲げ、詠唱。
本番は、ここから……。スピードは、準備運動のレベルとは思えない。




