第51話 声はゼブラ、姿もゼブラ。
(…………)
ダンタリオンの指の音に、ムサシは沈黙。
一体、何を始めるのだろう……。と、油断大敵な様子でダンタリオンを警戒。
緊張感を張り、額と全身から気汗を滴らせ、頬を紅く染める……。
ーーーすると。
「ムサシ……」
「ーーーーーーッ!!」
ムサシはダンタリオンの声と姿に驚愕。
「何を驚いているんだ?。俺だ、ゼブラだ……」
ダンタリオンは変身。
ーーー姿はゼブラ、そして声もゼブラに姿を変えていた。対象者の瞳から奥を覗き込み、対象者の思い入れが強い人に変身する能力、敬意の眼。
敬意の眼により、変身した者の能力も使用する事が出来る。
「ーーーーッ!!」
ムサシは十メートルの距離まで跳び下がり、鼻息を荒し、氷刀を中段で構える。
「どうした?。凄い汗だし、鼻息が荒いぞ……。もしかして、欲求不満か?」
ゼブラ姿のダンタリオンは悪戯な声をある。
「うるさいっ!!」
ムサシは氷属性を付与術を使用し、全身に氷圧の粒子を漂わせ、突っ込む。
(おやおや、逆効果ですかな?……)
ゼブラ姿のダンタリオンは穏やかな様子で危機を感じた……。
ゼブラに変身した事により、ムサシの戦意を促し、不利な状況になっている。
「ハァ…、ハァ…、ハァ…」
ゼブラ姿のダンタリオンの前頭に、ムサシは額から汗を滴らせ、氷刀をギリギリに止めていた……。
偽物とはわかっているが、気持ちの中にゼブラが思い浮かんでいるので、躊躇っている。
それが、ダンタリオンの狙いである……。思い入れの強い者に姿を変えれば、対象者の気持ちにの強弱よっては気迷いし、動きが鈍る。
「綺麗な髪だな……」
ゼブラ姿のダンタリオンは、ムサシの黒髪を右掌で撫で、褒める。
「ーーーーーーーッ!!」
ムサシは恥ずかしく顔を紅く染め、中間距離まで跳び下がる。
ーーーゼブラの姿が心の中に浮かび、胸がドキドキと脈動し、構える氷刀がカタカタと揺れる……。
「君が尊敬する者は、良い能力を持っているな……。ハァッ!!」
すると、ゼブラ姿のダンタリオンは鬼神化フェニックスに変身。
「それはアイツの能力……」
ムサシは驚く。
「そうだ……。尊敬の眼は変身するだけでなく、変身した者の能力も使う事も出来る……。そして……」
「ーーーーーーッ!!」
ーーームサシは右側を向き、驚愕。
右側、数メートルから鬼神化フェニックス姿のダンタリオンが紅炎のスピードで移動し、炎剣を横に構えていた。
気迷いにより反応が遅れ、鬼神化フェニックスのスピードを見切れなかったのだ……。
「ーーーーーーーッ!!」
ムサシの胸に、鬼神化フェニックス姿のダンタリオンの炎の剣撃がヒットし、衝撃で吹っ飛ぶ。
数メートル後方の樹木ドスッと背中から激突し、血ヘドを吐き、ダメージで腰を落とす。
「スピード能力の強弱も、思うがまま……」
鬼神化フェニックス姿のダンタリオンは不敵な声をあげる。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……」
ムサシは胸に炎斬の剣傷を残し、苦悶の様子で立ち上がり、氷刀を構える。
ーーー氷属性の付与術により、全身に氷粒子を漂わせ、炎斬によるズキズキとヒリヒリした剣傷のダメージを和らげる。
「ーーーーッ!!」
鬼神化フェニックス姿のダンタリオンは炎の熱圧を全身、そして一辺に漂わせる。
ーーー灼熱の刃を片手で構え、紅炎のスピードで突っ込み、剣突きを放つ。
「ーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスの剣突きに、ムサシは数センチ出前でギリギリに察知し、左側に跳び、回避。
ーーーーゴウッ!!
鬼神化フェニックス姿のダンタリオンの炎の剣突により、ムサシのいた場所である森林を焼き払う。
ーーー数十メートル以上、縦幅の範囲の森林帯が灰塵と化し、熱煙を吹き立てていた。
(…………)
灰塵と化した光景に、ムサシは腰を抜かし、眺めていた……。
「凄い能力だ……。鬼神化、人では闘争心を高め、パワーをアップさせる事が出来るが、意識に限界がある。限界を超えてしまうと、意識を失い、モンスターと化する。しかし、魔族である私には意識の限界はない。それが、これだ……」
鬼神化フェニックス姿のダンタリオンは灰塵と化した光景に、心酔。
ダンタリオンの高い闘争心により、鬼神化フェニックスは全身に炎の粒子、ジワジワな熱圧を漂わせ、最大限にパワーアップ。
「白虎氷結斬っ!!」
ムサシは氷属性の粒子を漂わせ、鋭い表情。
ーーー刃先に十数メートルの大きさを誇る氷刃をパキパキと造形させ、突っ込む。
「ムダだ……。強大な炎の前には、氷は無力」
鬼神化フェニックス姿のダンタリオンは炎剣でムサシの白虎氷結斬を、冷静な口振りで受け止める。
ーーー氷属性と炎属性が激しくぶつかり合い、一辺に強力な周波がバチバチと広がる……。




