第4話 鬼神化フェニックス
ーーーー〈宿屋ブランケット〉ーーーー
クーデルカの宿屋は一件だけだ。ご馳走になったパン屋を抜け、ゼブラは町中でフェイトを探した。町一帯は夜、人通りが少なかった為、フェイトを探しやすかった。二人で普通部屋、ベットは二台。正直むさい、女と花が欲しい位だ。
「お前はどこ行ってた?」
フェイトは椅子に腰掛け、ゼブラに言う。
「それはコッチのセリフだよ。フェイトさんこそ、どこに行ってたんだよ?。こっちは野垂れ死になりかけたんだぞ」
ゼブラはベットに寝転び、苦情。フェイトはせっかち、面倒味はよくない。フェイトはポケットから何かを取り出す。
「これ……」
フェイトはゼブラに何かを差し出す。それはゼブラのサイフ、落としたサイフをフェイトが拾ってあげたのだ。
「ありがとう」
取り敢えず、ゼブラは感謝。意外にも良い所はある。と思っておこう。しばらく町に滞在すると、フェイトは言っていた。理由は自身の先の事を考える為。奴らもフェイトが守っている限り、襲っては来ない。普段は無愛想で面倒味が悪いフェイトさんだが、ありがとう。と言いたい。
ーーー後日。
朝、ゼブラは中央広場を歩いていた。パン屋のユリアに会える事を楽しみにしている為、気分はウキウキである。何故なら、彼女の笑みは心のオアシス。気分が癒される。場所は西の町外れ。並木道沿いの公園が目印だ。
「テメェがゼブラか?」
中央広場に現れ、ゼブラに絡んできたのは細身のゴロツキ。
「俺がゼブラだが?」
ゴロツキを睨むゼブラ。
「ジャックとハリーって奴に呼んでこいと頼まれてな、ユリアは預かった。東の町外れに来いとな。確かに伝えたぞ、ヒヒヒヒヒ……」
「何、それはどう言う事だ?」
ゼブラの表情が焦った。
ゴロツキはゼブラは質問を無視し、中央広場から走り去る。ゼブラの表情は一変した。大変だ、ユリアを助けなくては……。
罠、もしくは嘘かもしれない。ゼブラは東の町外れに駆け走る。
ゼブラは表通りを走っていた。息を切らし、ユリアを頭に浮かべながら走る。
「オイ、どうした?」
道中の十字路。右側の表通りから歩いてきたガイと偶然にも再会。立ち止まり、ゼブラは訳を話す。
「俺も協力する。あーゆー奴は何仕掛けて来るかわからねぇからな」
ガイは言った。彼も協力してくれるから心強い。
二人は走る。そして……。
ーーーー〈東の町外れ〉ーーーー
一帯には壁が囲み、人通りが静かな空き地。広さは決闘が行える程の広さを誇る。数十メートル先にはジャックとハリー。気絶させられ、地面に横たわるユリア。もう一人、仮面で顔を隠し、身長は2メートル。濃緑の長髪に上半身は裸、下はホコリを纏った茶色の布ズボン。右手には諸刃の太刀、見た目は強そうだ。
「来たな……」
ジャックは言う。
「大人しく来てやったぞ。さぁ、ユリアを返せ」
ゼブラは言った。
「ああ返すよ。だが、コイツに勝ったらな!!」
ハリーは声をあげ、仮面の太刀使いに目を向ける。仮面の太刀使いはゴロツキ達の前に立ち、太刀をドシッと構える。ゼブラは剣を抜き、ガイは拳を構える。
「俺は前歯」
ジャックは折れた前歯を晒す。
「俺は鼻の骨」
ハリーは折れた鼻を差す。
つまり、奴らは怪我を負わされたゼブラの仕返しの為、ユリアを拉致した。
「腐ってるな。人質を取り、新しい仲間を連れて来ないと戦わないとは、気が弱いな」
ガイは言った。
「ガイさん。赤髪の奴と手を組むなら、アンタでも容赦しねぇぞ。逃げるなら今のうちだぜ?」
ハリーは言う。
「それはコッチのセリフだ。コイツを倒し、そんでテメェらをどつき回す」
不敵の笑みで拳をパキパキと鳴らすガイ。
「お前ら、絶対に許さん」
ゼブラは怒りで身を震わせ、奴らを睨む。
「望む所だ。殺れ」
仮面の太刀使いに命令。
仮面の太刀使いは太刀を構え、ジリジリと威圧感を漂わせ、歩き進む。
「ーーーーッ!!」
ゼブラは突っ込み、剣を脇に振るう。
ーーーーッ!!
仮面の太刀使いは、ゼブラの剣撃を軽く受け止める……。
ーーーーッ!!
両者は切り離れ、二人は中間距離で対峙。
余裕なのか、仮面の太刀使いは息を乱さず、不気味に太刀を構える。上等だ。と、言わんばかりの表情を浮かべ、ゼブラは突っ込み、中間距離で剣を振るう。
「ーーーーッ!!」
ゼブラが剣を振るうと同時、仮面の太刀使いは太刀を振るい、刃がぶつかり合う。
仮面の太刀使いの剣撃にゼブラは力負け、数メートル弾き飛び、後退。
「ーーーーッ!!」
ゼブラが体勢を崩した所に、仮面の太刀使いは太刀を横に構え、突っ込む。すると。
「任せろッ!!」
ーーーーガイが素早く駆けつけ、ゼブラの前列に立ち、両腕を広げる。
自身の肉体付与術である鋼鉄の肉体を唱え、肉体を鋼鉄化。仮面の太刀使いの剣撃を自身の肉体に浴びせる。鋼鉄の肉体で奴の太刀を折らせる考えだ。
ーーーーッ!!
鮮血が宙に撒き散らす。斬られたのはガイ、自分が斬られた事が理解出来ないのか、唖然。
「ガイッ!!」
ゼブラは呼び叫ぶ。
しかし、ガイは気絶し、動かない。
ーーーーッ!!
仮面の太刀使いは太刀を振りかぶる。
「危ないッ!!」
仮面の太刀使いは太刀を降り下ろす。
ーーーーッ!!
同時にゼブラはガイの後ろの首襟を掴み、二人は十数メートル程引き下がり、回避。奴の太刀は空を切り、風斬り音が威力を物語る。
「ワリィ……」
ガイは意識を取り戻す。
斬られた体を押さえ、フラフラになりながらも両拳を構える。
「どうなっている?。お前の能力が通じねぇぞ?」
ゼブラは言う。
「あの仮面野郎、魔導武器の太刀を使ってやがる。どうりで斬られたワケだ……」
ガイは言った。
魔導武器とは魔力貫通と精神体モンスター対策の為に造られた武器である。
ガイの能力は、魔力貫通により破られた。
「ガイ、下がってろ」
ゼブラは剣を横に構え、仮面の太刀使いに突っ込む。そして中間距離で剣を振るう。
ーーーーッ!!
仮面の太刀使いはゼブラの剣撃を受け止める。
ーーーーッ!!
そして二人は下がり、近距離で刃を交じえ合う。
「ぐっ……」
ゼブラは苦悶の表情を浮かべ、剣を振るう。
仮面の太刀使いが振るう剣撃が強く、剣を振るう手首が衝撃で痺れる。
「ーーーーッ!!」
仮面の太刀使いの振り上げに、ゼブラの剣は弾き飛び、地面に突き刺さる。
「ゼブラ、避けろっ!!」
ガイは思わず呼び叫ぶ。
剣を弾き飛ばされたゼブラはガラ空き、体勢を崩している。仮面の太刀使いは太刀を振りかぶり、突っ込む。
ーーーーッ!!
仮面の太刀使いは振り下ろし、ゼブラを切り裂く。そして跳び下がる。
「グハッ!!……」
鮮血が胸から撒き散らし、ゼブラは吐血。
「ゼブラッ!!」
ガイは呼び叫ぶ。
ゼブラは倒れそうになるが、歯をくいしばり、踏みとどまる。仮面の太刀使いはゼブラに再び狙いを定め、斬りかかる。
「ーーーーッ!!」
中間距離から太刀使いは剣を振るう。
「あぶねぇッ!!」
ゼブラは左側に跳び、避ける。
地面に突き刺さる剣の方に駆け走り、手に取る。
「派手なダメージを負ったな」
ガイは胸の傷口を押さえ、ゼブラの左側に駆けつける。
「お前も人の事言えんのか?」
ゼブラは腹部を押さえ、笑いかける。
「こんな傷、生きていりゃ慣れっこだ。それより、アレ倒せそうか?」
ガイは言う。
「倒せると思ったんだけど、今まで相手にしてきた奴より強い。油断してたよ」
「なら耳貸せ」
ガイはゼブラの耳に小声で吹き込む。
「わかった……」
ガイの言葉に、ゼブラは首を縦に振り、納得。
「いくぜっ!!」
ガイは拳を構え、上体を左右に激しく揺らし、仮面の太刀使いに突っ込む。
仮面の太刀使いは太刀を横に構え、ガイに狙いを定める……。
「ーーーーーッ!!」
ガイは何もせず、中間距離で仮面の太刀使いの右の横腹を潜り抜ける。
「ハァッ!!」
そして、ガイが奴の右の横腹を潜り抜けた同時に、ゼブラは奴の胸に狙いを定め、剣り下ろす。
走るガイの後ろにゼブラが隠れ、ガイが奴の右の横腹に潜り抜けた所に、ゼブラが剣を振るい、一撃を喰らわせる作戦だ。
ーーーーニヤリ……。
鮮血が宙を舞う。
しかし、鮮血が舞っているのはゼブラ。仮面の太刀使いは、走るガイの後ろにゼブラが潜めている事を見切っていた。
仮面の太刀使いは剣を脇に振るい、ゼブラの下腹を切り裂き、剣圧で数メートル吹き飛ばす。
「ゼブラッ!!」
ガイは呼び叫ぶ。
一方のジャックとハリーは無惨な光景を嘲笑う。
ガイの声が聞こえ、気を失っているユリアか目を覚ました。
「ゼブラさんっ!!」
ゼブラの無惨な姿に、ユリアは思わず口を塞ぎ、悲しく声をあげる。
「よぉ。目を覚ましたか?」
嫌な口振りのジャック。ユリアはジャックに掴みかかる。
「お願いします。店を売りますから、もうやめてください!!。あの人達は無関係です!!」
ユリアは必死に訴える。しかし。
「嫌だね。アイツには怪我をさせられた。その仕返しに、殺してやる」
ジャックは言う。
「安心しろよ。借金は毎月返していけばいいから。やさしいだろ、俺達は。キヒヒヒヒ……」
嫌な笑い声をあげるハリー。
「ハァ……、ハァ……、ハァ……」
傷口を押さえ、ゼブラは息を切らす。
全身から大量の血が吹き出し、意識が薄い。戦える状態とは思えない程、重傷だ。
ーーーー仮面の太刀使いは太刀を片手に構え、ゼブラに歩き進む。ガイは奴に立ち向かおうとするが、ダメージの影響で動けない。
(クソッ、体が動かない。死ぬのか、ここで?)
視界がぼやく中、ゼブラは思い浮かべる。村を滅ぼされ、帰る所は無くなった。行き倒れになった所をユリアに救われた。村を守れなかったように、ユリアを見殺しにするのか……。
ーーーー仮面の太刀使いはゼブラの前に止まり、太刀を振りかぶる。
「やめてッ!!、お願いしますッ!!。何でもしますから、あの人を助けてくださいッ!!」
ユリアは必死にジャックに訴えている。当然、二人は無視。
自身の闘志の異形を本能で思い浮かべよ、さすば力は目覚めん……。
(イチかバチかだ…)
ゼブラはフェイトの言葉を思い出し、剣を両手で構え、思い浮かべる。
「ーーーーーーッ!!」
仮面の太刀使いは太刀を振り下ろす。ユリアは思わず瞳を閉じる。
「ーーーーッ!!」
次の瞬間、ゼブラの全身は紅炎に包まれ、爆発。
ーーーー仮面の太刀使いは爆撃で吹っ飛ぶ。
爆煙が充満し、視界不良。
ーーーーそして煙の中、人の形をした何かが姿を現した……。
(………)
ーーーー強靭な体格、身長は180センチ。
炎圧がジワジワと広がり、姿は翼の生えた戦士。
尖った紅の長髪、シャープな顔形。闘志に満ちた鋭い眼光に炎のような袖無しの赤ベスト、両肩には紅宝の長殻ショルダーアーマー。
両肩のショルダーアーマーから1メートル程の赤刃の羽根が生え、翼部となる。
両手には紅宝のガントレット、右手には炎の太刀。下は純白のゆったりしたズボン。両腰には紅宝の腰アーマー 、紅宝のブーツ。