第48話 戒律勝負のウラ
ーーー死の嵐の技により、無数のコウモリは黒い竜巻と化し、鬼神化フェニックスを閉じ込める。
黒い竜巻の中では、コウモリ達が能力の接収を使い、鬼神化フェニックスの魔力、養分を接収し、荒らしている最中である。
広地一帯は死の嵐の風の音が地鳴りのように響き渡り、地面の砂煙を吹き荒らす。
「そろそろ、死んだかしら……」
マリーは残念な様子で、沈んだ声をあげる。
ーーーーゴウッ!!
その時だった……。黒い竜巻から幾多の紅炎が噴き出し、爆発の音を響きかせ、燃え盛る。
「一体、何が起こっているのっ!!」
マリーは驚きを隠せない。
死の嵐に飲み込まれた者は皆、枯渇死体と化し、死んでいった。異常を引き起こす事はあり得ない。
ゴウッ!!
ーーー死の嵐から紅炎が噴き出し、燃え盛り、そして消滅した……。
(……………)
死の嵐が消滅し、現れたのは鬼神化フェニックス。
鬼神化フェニックスは、死の嵐(デッドストームの中で闘志を最大限に引き出し、パワーをアップさせた。そして炎剣を振るい、コウモリ達は斬り伏せたのだ……。
白銀に輝く鋭い眼。紅炎の光を全身に輝かせ、地面一辺から漂う熱圧。
ーーー鬼神化の覚醒……。鬼神化のパワーと意識が一体となる現象であり、パワーは強大だ。
「嘘でしょ………」
あり得ない光景に、マリーはジリジリと後退。
威圧感に、全身に冷や汗が滴る……。
ーーー覚醒の鬼神化フェニックスは炎剣を片手に持ち、マリーに歩み進む……。
「嫌っ!!」
マリーはコウモリ一匹を突っ込ませる。
「ーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは炎剣を振るい、コウモリを一瞬で消滅させる。
「ハァ……。ハァ……。ハァ……」
マリーは後退、プライドをズタズタにされ、鬼神化フェニックスの威圧感により頬を紅に染まらせ、息を荒げる。
そして後ろの樹木に背もたれ、へたり込む……。
「ーーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは炎剣を振りかぶる。
「嫌っ!!」
殺される……。マリーは両腕を突き上げ、恐怖で瞳を閉じた……。
「これで、気が済んだだろ?……。鬼神化で敵を倒すと、気分が高くなって暴走したりするから……。それに、君は死んではいけない。そんな気がするからだ。じゃ、先を急ぐ……」
鬼神化を解き、ゼブラは剣を鞘に収める。
経験した事の無い程、闘志を高め、鬼神化のパワーにより、意識が飛びそうになって危なかった。
マリーから背を向け、立ち去ろうとした……。
ガシッ……。
マリーは立ち上り、後ろからゼブラの肩を掴む。
「どうした?」
ゼブラはマリーに向け、尋ねる。
「アナタが初めてよ……。私に勝つなんて、凄いわ、おめでとう。さて、始めましょうか……」
マリーは後退。
手を後ろに組み、色っぽく頬を紅く染め、上目遣いで甘い声をあげる……。
「えっ?」
ゼブラはわからない様子。
「えっ?、じゃ無い。子作りに決まってるでしょ、もしかして、初めて?……」
「ちょっと待ってっ、ちょっと待ってっ!!。いきなり、どういう事だ?」
マリーの言葉に、ゼブラは焦りを隠せない。
ただのヤケか、それとも欲求不満……。
「吸血鬼女性の一族は、強い子孫を残す為、勝負に負けた相手を婿に迎えるのが掟よ……。アナタは私に勝った、だから私の婿になった。それだけ……。それじゃ、私からのサービスよっ」
マリーは上機嫌な笑みを浮かべ、ビキニアーマーをカチャと脱ぎ捨て、自慢の乳房を晒す。
「ーーーーーーッ!!」
ゼブラは顔を紅く染め、驚愕。
マリーの乳房をマトモに見てしまい、吹き出す。
乳房の大きさはユリアと同格か、いや、それ以前、ユリアの裸は見た事ない……。
「あら、可愛い……。下も脱ごうかしら、そっちの方が燃える?……」
マリーは悪戯な笑みを浮かべ、腰を落とし、下のティーバックに手をかける。
「待て待て待てっ!!」
「あら、どーしてぇ?」
マリーはティーバックの紐の手をピタッと止め、脱ぐのを止めた……。
「ワケ分からない。いきなり、勝負を仕掛けられて、負けたから結婚してって、めちゃくちゃだし、困る……」
「だって、事前に掟を説明すると、アナタ勝負を拒否するでしょ?」
マリーは誘惑の声をあげ、腋上げポーズを組み、全身をクネクネとした動きで揺らす。
「当たり前だ」
「も・し・か・し・て、好きな人でもいるのかしら?」
マリーはクネクネした動きでゼブラに歩み寄り、正面から抱きつく。
「それは……」
マリーの言葉に、ゼブラは言葉を詰まらせる。
頭の中、ユリアが思い浮かんでいた……。好きって言うか、大切な人であり、自身の心の在処だ。
ユリアは、どう思っているのだろう……。
「どうなの?」
マリーは尋ねる。
「いるよっ!!。だから、諦めてくれっ!!」
ゼブラは声をあげ、マリーの突き放す。
「……………わかったわ、今回は退いてあげる。けど、諦めないわよっ!!。アナタを絶対に私の婿にするまで、じゃーねぇ」
マリーは片手を振る。
そして無数のコウモリがマリーに集まり、竜巻と化す。
ーーーコウモリの竜巻が消滅し、マリーは広地から、ゼブラの前から姿を消した……。
(ハァ………)
ため息を吐き、ゼブラはへたり込む。
婿にするまで、諦めない。と言っていた……。まったく、面倒臭い奴に目をつけられたモノだ。
ーーーアレ、必ずまたやってくるに違いない……。
広地から北の方向、数キロ先には塔がそびえ建っていた。ゼブラは少し休憩の後、塔を目印に、走るのである……。




