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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
27/262

第26話 いざ、アロウン砦へ…

 演習グラウンドの出入り口の門を抜け、増援部隊が町の広場に向かい、歩いていく。

 門前には恋人と熱く抱き合い、口づけを交わす兵士の姿も、珍しくもない。戦場に向かう前の門前は、兵士達が恋人や家族と、僅かな時間を過ごすのが恒例である。

 人々が兵士を見送るのは日常茶飯事、戦場に向かう兵士達の足音が、町中に響き渡る。


「じゃ、行ってくるよ…」


 門前、ゼブラは不敵な笑みでユリアに告げ、広場に向かい、ユリアに背中を向ける…。

 兵士達が、広場に向かう光景を見てしまうと、戦場に向かうのだな…。と、いう緊張感がゼブラの気持ちにピリピリと張りつめる。


「待って下さい…」


 ユリアはゼブラの手首を掴み、引き止める。

 そしてポケットから謎の赤い腕輪を取り出す…。


「これは?」


 ゼブラは尋ねる。


「お守りです。昨日、ムジカさんに貰って、ゼブラに渡してくれって…」


「ありがとう…」


 ユリアに渡された腕輪を、ゼブラは右の手首にカチャと、装着した。

 赤い腕輪は、地下世界アストラルの特有の生還祈願のお守りだ。

 生還祈願のお守りは、気休めにしかならないが、着けないよりマシだ。しかし、皆は生きて帰れる可能性を高くしたい為、気休めでも、お守りの腕輪を着ける兵士は珍しくもない。


「外しちゃダメですよ…」


 ユリアは心配な様子で警告。


「外さないよ。少しでも生きて帰れる可能性を高くしたいからな…。まぁ、心配な顔をするな、絶対に生きて帰るから…」


 ゼブラは自信気な笑みを浮かべる。


「ヤダー、私もイクーーーッ!!」


 すると、門前で駄々をこねる小娘。

 小娘の正体はチェルシー。大詰めのリュックを背負い、アロウン砦に赴く為の準備満タンな状態だ。

 チェルシーをなだめるのはムサシ。チェルシーの説得中だが、言うことを聞いてくれないので苦労をしている。


「お前は町の警護と司令に言われたハズだ」


 ムサシは言った。


「そんなー。じゃあ、昨日から徹夜して用意したこの荷物はどーするのさーーーー?」


 と、チェルシーは詰め詰めのリュックを見せる。

 リュックの中に入っている物が多すぎて、何がなんだかわからない…。

 チェルシーの勝ち気な声に、ゼブラとユリアは歩み寄る。


「よう…」


 ゼブラは片手を上げ、挨拶。


「貴様か、コイツを何とかしてくれないか?。一緒にアロウン砦に行きたいと、聞かないんだ…」


 ムサシは両手を軽く上げ、呆れた様子で観念。

 セクラハ剣士と呼ばれるよりマシだが、貴様より、ゼブラと呼んでほしい。


(そう言われてもな…)


 困惑し、後頭部を掻くゼブラ。

 一方のチェルシーは、ゼブラをジィーと睨む。

 説得しようとすれば、面倒臭い事になるのは確実である…。チェルシーが戦場に行きたい理由、それは簡単、暴れたいだけだ。


「とにかくお前は町に残れっ」


 ムサシはチェルシーにビシッと指を差す。

 実力者のチェルシーが去れば、町の警護が手薄になり、敵に攻め込まれたら対処が難しくなる。


「チェルシーも役に立つもんっ!!。兵士達の娼婦になるし、口では言えないあんな事やこんな事も何でもするもんっ!!」


 と、色々な覚悟を示すチェルシー。


「アホかっ!!。娼婦になろうが、口では言えないあんな事やこんな事をしようが、ダメなモノはダメだっ!!」


 チェルシーの頭をグゥーで叩くムサシ。


「イターイ、何も叩かなくてもいいじゃない…」


 涙粒を流し、叩かれた頭を撫でるチェルシー。

 ムサシに叩かれると、痛い…。さて、どうやってこのガキを説得しようか…。


「あの、チェルシーさん」


 ユリアは尋ねる。


「あっ、お姉様っ!!」


 ユリアにガバッと、抱きつくチェルシー。

 

「私も町に残りますから、一緒に留守番をしましょう…」


 ユリアは言った。すると…。


「はーい、残りますっ!!。では、行ってらっしゃい…」」


 と、あっさり納得するチェルシー。

 戦場に行きたい意思より、大好きなユリアと一緒にいたい意思が、勝った…。

 無事に解決したので、良しとしよう…。


ーーーー〈アロウン砦方面林道〉ーーー


 ゼブラとムサシは町の広場に向かい、増援部隊と合流。アロウン砦方面の正門を抜け、増援部隊に混じり、ゼブラは灰色の地面の公道を歩いていた。

 崖上、崖下には緑が生い茂り、一帯には木々が鬱蒼と立ち並ぶ。

 蒸し暑い霧が漂い、行進する兵士達の足音により、ダルい感覚になる。


ーーー1時間後。


 増援部隊は公道を抜け、数百メートル先にはアロウン砦が見えてきた。

 岩造りの巨壁がそびえ、圧倒的な光景である。

 巨壁に近づけば、次は巨大な門が立ちはだかる。

 蒸し暑い霧が一辺に充満し、増援部隊からは緊張感がピリピリと張りつめる。


「報告を受け、サイモンの町から増援に参った。門を開けてもらいたいっ!!」


 ムジカは砦の奥まで聞こえる位の声を上げる。

 すると、十メートルの高さを誇る見張り台の兵士がムジカの声に反応し、下の兵士達に手刀を掲げ、開けるように、命令した。


ガチャ…


 砦の巨大な門は鈍い音を響かせ、開いた…。

 増援部隊は緊張感を漂わす足音を響かせ、門を潜り、砦の中に入る。


ーーーーー〈アロウン砦・屋内広場〉ーーーー


 アロウン砦に配属されている医療部隊の兵士達は、広場に横たわる負傷兵の救護の作業の最中であった…。

 一列にズラッと並び、地面に横になって倒れているのは負傷兵。脚、腕、下半身自体が生々しく吹っ飛び、血臭が漂い、広場一辺には血が滴り、芝生の地面が赤く染まっている。

 倒れている負傷兵の周りをブンブンと飛び回るハエ、負傷兵の傷口にはグチュグチュと音を響かせ、貪る大量のウジ虫。

 傷に悶え、負傷兵達の悲痛な叫び声が広場中に響き渡り、屋内広場は想像を絶する光景だった…。


「ハァ…ハァ…ハァ…」


 一人の兵士が痛みを堪え、息を切らしながらムジカの所にヨタヨタとした足取りで駆けつける。

 頭は血がにじみ、包帯でグルグル巻かれ、右腕にはギブス。一目でわかる、重傷だ。


「砦の戦況はどうだ?」


 ムジカは尋ねる。

 広場の状況を伺えば、絶対ロクな答えは返ってこない事を覚悟をするしかない。


「ハイ。アロウン砦の兵力は90パーセントが壊滅。砦の防壁の耐久率は20パーセントを切り、戦える兵士がほとんどいません。奴ら、本気でここを突破する気のようです…」


 負傷兵は言い残し、ドサッと 倒れる。


「ダメか…」


 ムジカは倒れた負傷兵の手首に触れ、脈を測る。

 しかし、残念ながら兵士は死んでいる…。

 最後のセリフを言う力しか、彼は残されていなかったのだ。


「総指揮、命令を…」


 増援部隊の1人の兵士がムジカに尋ねる。

 するとムジカは気持ちを切り換え、立ち上がる。

 そして増援部隊に向け、渋い口を開く。


「全部隊は負傷兵の救護、戦死体の処理、以上だっ。すぐに作業に取り掛かれっ!!」


 ムジカは増援部隊に命令。

 今は、広場の混乱の応急処置が優先と判断した。

 砦の状況が混乱していては、マトモに兵士が動けないからだ…。


「ーーーーーッ!!」


 ムジカの命令に、増援部隊の兵士達は敬礼。

 増援部隊の兵士達は、すぐに作業に取りかかる。


「ゼブラとムサシ、お前達は俺と砦の中に来てもらう…」


 ムジカは言う。

 

「ハイッ!!」


 ゼブラとムサシは返事し、ムジカの後を追い、階段を登り、建物の中に入る。

 屋内広場の前側にはダリウス平原方面の門、後側には義勇軍の町サイモン方面の門と、2つに分かれている。

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