第22話 合格?不合格?
合格条件と言う名の任務は理解した…。
鬼神化フェニックスは炎剣を構え、燃え盛る光景を眺める。一辺から睨むムジカの分身達、見極めるのに苦労を要するだろう。
「戦場の状況を見極め、俺を見つけてみよ…。敵を倒すだけが、戦争ではない…」
と、ムジカの渋い声が一帯に響き渡る。
「ーーーーーッ!!」
ムジカの分身達は一斉に剣を構え、鬼神化フェニックスに斬りかかる。
鬼神化フェニックスはムジカの分身達に向かい、駆け走る…。
一体、二体、三体と、剣を振るうムジカの分身達の剣撃を潜り抜け、回避。
鬼神化の察知力は常人とは桁違いである。近距離から大人数の人達に剣突きを放たれても、余裕で回避可能だ。
「ーーーーーーッ!!」
五体のムジカの分身達は両手を掲げ、詠唱。
鬼神化フェニックスに狙いを定め、地面から無数の氷柱を隆起させ、一直線に放流。
「ーーーーーッ!!」
放流される氷柱を、鬼神化フェニックスは十メートルの高さまで跳躍し、回避。
そして空中から一辺を眺め、分身の中から本物のムジカを捜索…。視界に映るのは燃え盛る演習グランド。無数に存在し、睨むムジカの分身達。
ムジカの分身達は両手を掲げ、詠唱。
一体、一体の分身達の両手から詠唱陣が現出。同時に詠唱する分身達は消滅し、粒子煙が充満。
粒子煙は無数に凝縮し、雷の矢に形状変化。鬼神化フェニックスに矛先を向ける。
「ーーーーーーッ!!」
一斉放射される雷の矢。鬼神化フェニックスは空中域から放射される雷の矢を後方に飛翔し、空中回避。鬼神化フェニックスには飛行能力があり、空中移動が可能である。
グランド一帯に充満する粒子煙が無数に凝縮し、再びムジカの分身を具現化…。
充満する粒子煙の中、分身達は皆、詠唱。
分身達は同じ動き、同じ体勢、同じ視線で鬼神化フェニックスを下から見上げる。この中から本物のムジカを探すのは至難の技だ。
(どこだ…)
鬼神化フェニックスは察知力を屈指し、グランドを眺める。粒子が充満する空域から放射される雷の矢を回避しつつ、本物のムジカを空域から捜索。
グランド中の分身ムジカ達は詠唱し、全域に粒子煙を発生させ、充満させる。
三体のムジカは鬼神化フェニックスに狙いを定め、詠唱。
「ーーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスの数十メートル先の三体のムジカの様子を察知した。
そしてグランドに降り立ち、数十メートル先の三体のムジカに狙いを定め、駆け走る。
グランドに降り立った理由。空域から見下ろすと分身ムジカは詠唱の状態だから見分けにくい。
地上に降り立てば分身達は詠唱を止め、攻撃を仕掛けて来る。そうなれば行動が分散される。
予想通り、分身ムジカ達は斬りかかる。
「ーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは分身ムジカの攻撃を潜り抜け、察知力を屈指し、前進。
十メートル先には三体のムジカが待ち構え、詠唱。鬼神化フェニックスはギリギリな近距離に立ち止まる。
「上空から見て、一体だけ動きが控えめな奴がいる。手間の掛かる魔導術を唱えるには、足を止めて詠唱する必要があるからだ。本物はアンタだ…」
鬼神化フェニックスは三体のうち、二番目のムジカに炎剣を突き立てる。すると…。
演習グランドに充満する粒子煙、残りの分身達は消失した…。不思議な事に、演習グランドは戦いによる戦跡は残っておらず、荒れ果てていない。
分身達の攻撃は全て幻影だ。ゼブラは幻影の攻撃に惑わされ、動かされていた。
「ギリギリだが、合格だ…」
ムジカは安心した様子で笑みを浮かべる。
幻影に惑わされ、見えない敵に攻撃していた時は、どうなるかと思った…。
一時は不合格と宣告しようとしたが、良かった。
ゼブラが鬼神化で察知していなかったら不合格となっていただろう…。
ゼブラは安心し、鬼神化を解く…。
「・・・・あれっ・・・・?」
鬼神化を解いた途端、魔力の使い過ぎ、急激な精神変化により、ゼブラの意識が遠のき、身体中の疲労感が鉛のように重い…。
とりあえず、審査は合格だ。安心したゼブラは緊張の糸が切れ、ドサッと地面に倒れ、ダウン。
ーーーーその頃。
義勇軍の町サイモンの正門を抜け、長距離の道の先にはアロウン砦が建造され、ダリウス平原が広がっている。派遣された兵士はダリウス平原に防衛線を展開し、魔界軍と最前線で戦っている。
ーーーー〈エボルド森林〉ーーー
アロウン砦側のダリウス平原の向こう側には森林地帯が広がり、今では魔界軍に支配下である。
森林地帯の奥には巨塔がそびえ立ち、森林地帯全域を見下ろしている。
かつての巨塔は地下世界アストラルの人々の象徴であったが、今は魔界軍のベースキャンプである。
「ここはどこだ?…」
辺りを眺め、森林道を歩いているのは刺客の剣士ヴァン・ア・フール。森林道の両端に生い茂る木々、辺りに黒霧が不気味に漂っている。
気づいてなかったが、彼は地上にてゼブラ達の後を追いかけていたのだ。
地上の廃墟の町で二人を建物に隠れて様子を伺っていた所、光に巻き込まれ、地下世界アストラルに飛ばされてしまった…。追跡する訳、ユーギガノスの剣の選ばれし者であるゼブラを殺す為だ。
(腹へったな…)
腹を押さえ、空腹のヴァンは森林道を歩き進む。
一辺から小鳥、動物の鳴き声が響き渡り、うるさい。オマケに蒸し暑い…。
ーー数分後、森林道を抜け、広地に出る…。
すると…。
「貴様、何者だっ!!」
広地には魔界軍の六体の兵士が休憩していた。
(出る所を間違えたな…)
面倒臭い様子で沈黙、額から汗を流し、手を拭うヴァン。
「怪しい奴め。この森は魔界軍の支配下、よそ者は排除するのみ、覚悟っ!!」
魔界軍の兵士1人高圧的な様子で剣を抜く。残りの兵士達も剣を抜き、ヴァンに戦う気だ。
奴らは支配下で目撃したヨソ者には容赦はない。 おそらく魔界軍の指揮者はヨソ者は消せとの命令を下している。
まるで、人と言うタカチをしたモンスターだ…。
(仕方がない…)
話を聞くような奴らではないな…。と、ヴァンは冷静に剣を抜き、奴らを睨む。
「気に入らない眼だ。殺ってしまえっ!!」
兵士1人が声をあげ、皆に指示。
指示の声に、兵士達はヴァンに斬りかかる。
「ーーーーーッ!!」
ヴァンは横に剣を構え、突っ込む。
三体同時に斬りかかる兵士に、ヴァンは剣を振るう。
「ーーーーーーッ!!」
三体の兵士は剣圧に負け、弾き倒れる。
三体の兵士が弾き倒された同時、一体の兵士がヴァンの正面に突っ込み、中間距離から剣を振るう。
「ーーーーーーーッ!!」
ヴァンは兵士の横腹を狙い、斬って抜ける。
斬られた兵士は血を地面にぶちまけ、力無く倒れる…。
「ーーーーーッ!!」
次、二体の兵士が斬りかかる。
「ーーーーーーッ!!」
二体同時、中間距離から斬りかかる兵士に、ヴァンは剣を振るう…。
「ーーーーーッ!!」
ヴァンの剣圧に負け、二体の兵士は後退。
「ーーーーーーッ!!」
剣圧に負け、二体の兵士が体勢を崩した所に、ヴァンは剣を振るい、斬り倒した。
一辺にぶち撒かれる兵士の血塊、ヴァンの左頬に返り血が飛び散る…。
(・・・・・・)
残りの兵士達はヴァンの強さに言葉を失う。
自分達より、レベルが違うと実感…。ヴァンから漂う冷たい殺気が、兵士達の気を臆させる。
そのときである…。
一辺の道の出入り口からゾロゾロと現れ、広地に集まる魔界軍の兵士達。数は100足らず、1人で戦うには厳しい数だ。
皆、森林地帯を偵察している巡回兵だ。同志の状況を察知し、駆けつけたのだ。
兵士達はヴァンを包囲し、剣を構える。
「ずいぶんと、手厚い歓迎だな…」
ヴァンは包囲する兵士達を不敵な笑みで睨む。
瞳の色は状況による絶望の様子は無い。笑っているのは、剣を差し向けた兵士達に愚かさを感じているからだ…。
「我ら魔界軍の支配下で、よくも好きにやってくれたものだ…。貴様を魔界軍の敵として、処刑してやるっ!!」
と、兵士の1人が高圧的な様子でヴァンを睨み、剣を抜く。彼らにとっては形勢逆転、いくら奴が実力者でも、大勢相手には敵わないと鷹を括る。
他の兵士達はヘラヘラと余裕の笑い声をあげ、剣を抜いている。
「面白い、やってみろ…」
ヴァンは剣を掲げ、詠唱。
全身に紫の光圧を漂わせ、足元に紫の詠唱陣を浮かび上がらせる。
魔界軍の兵士達は(油断するな)と、警戒感し、剣を構える。
紫の光圧を漂わせるヴァンに、全員の兵士に悪寒を感じ、戦う意志とは逆に、冷や汗が滴る。
「ーーーーーーッ!!」
そして、ヴァンの姿は一変。
兵士達の悪寒の正体が明らかになる…。




