第12話 封印の悪魔オルテガ
ーーーー〈封印の間〉ーーーー
「ここは…」
ゼブラは一辺を見回す。石造りの地面、石造りの壁には松明が灯されている。壁には壁画、しかし、磨り減って何の壁画か見えない。
広間の一番奥には、石の柩が置かれている。石の柩をペタペタと触り、調べるゴードン。どうやら、彼は無事だ。
「ゴードンさん、無事でよかったです」
ゼブラは安心し、ゴードンの所に歩み寄る。
「生きているとはな…」
ゴードンは冷酷に口を開く。
「ゴードンさん?…」
ゼブラは不穏な様子で立ち止まる。
初めて会った時の彼と、今の彼とは様子が違う。ゴードンは静かに剣を抜き、振り返る。
「ククククッ…」
ゴードンは狂ったように笑う。
首筋には黒い血管が脈を打ち、瞳孔は黒一色に染まり、全身からは紫の熱圧を漂わせている。
奴の異様な気配に察知、ゼブラは思わず剣を構え、臨戦体勢。
「我の名はオルテガ。かつて、この部屋で封印されていた悪魔だ」
ゴードンは不気味に身体を揺らつかせ、口を開く。奴はオルテガに憑依され、人格や肉体を支配されている。同行した部下達も同様、精神コントロールされている。
ゼブラは臆した様子で剣を構える。
敵ではなく、自身の能力、鬼神化に怯えている。鬼神化を使えば力が暴走し、ユリアを傷つけた。
フェイトの言葉が、自身の頭の中をグリグルと回り、響かせている。
「この者は財宝目的でこの部屋を訪れ、柩を開けた。解放された我はこの者に乗り移り、この者の部下達にも魔力を流し、我の従者にした。人間とは、何時の時代も愚かな生き物だ。欲に目が眩み、結果破滅する。このゴードンという輩も、まさに絵に描いたような破滅劇だ!!」
ゴードンに乗り移ったオルテガは高笑い。
悪魔は人の欲に漬け込み、破滅させるのが大好きだ。差し出した依頼は、ゼブラとユリアをおびき寄せる為の嘘の依頼、ゴードンの目元が普通だった為、わからなかった。
「目的は何だ。何故、俺やユリアをここに連れてきた?」
ゼブラは言う。
「簡単だ。若い人の魂が喰いたいからだ。貴様らには最初の犠牲者になってもらう」
オルテガは黒い息を吐き、答えた。
(マズイ、ユリアが危ない…)
ゼブラは危険を察知、出入り口に目を向ける。
何故ならユリアの所には奴に精神コントロールされた部下達がいる。しかし…。
「おっと、それは許せんな…」
オルテガは指をパチンと鳴らす。
すると、出入り口から紫の魔力壁が現れ、行く手を塞がれた。
「その壁は俺を倒さないと破れないようになっている。けど、安心するがいい、戦いの間、小娘に手を出さないと約束する。もし、貴様か死ねば、小娘も一緒に送ってやる。小娘がこの場にいないから幸いだな。もし小娘がいれば、貴様に絶望を味わせる為、殺していただろう。我は優しいだろ?、小娘の死に顔を見させないのだからな…」
「生憎、死ぬ前提で戦う気はない。勝ってここを出る。それだけだ」
ゼブラは剣を突きつける。
安心した。ゼブラが死なぬ限り、ユリアの命は保証された。ある意味、オルテガは優しい。
「面白い、我の本当の姿を見せてやる…」
オルテガは前屈みの体勢で全身を震わせ、詠唱。足元に邪悪な詠唱陣、全身から黒い熱圧を漂わせ、魔力の高さを物語る。
そして、ゴードンの身体は異形の道を辿る。
体格は一回り、二回りに膨大。肉肌はピキピキと裂け、体格を形成していく。地面に滴る血、血に弱い人が見たら気を失うだろう。
(…………)
形成の光景に、ゼブラは言葉を失う。
体格の形成は終わり、オルテガは姿を現す。
後背に厚布のマント、鎧のような体躯、身長は2メートル。褐色の包帯を全身に巻き、姿はミイラだ。右手に大剣を持ち、紫の熱圧を漂わせる。
「グフフフフ、驚いて言葉が出ないようだな。さて、100年振りの地上だ。貴様はどう楽しませてくれようか…」
オルテガは黒い息を吐き、全身をコキコキ動かし、ストレッチ。
ゼブラは剣を構える。
鬼神化を使わずに倒したい。今のゼブラは、それがノルマだ。
「ーーーーーッ!!」
次の瞬間、オルテガは突っ込む。
ギィン
ゼブラはギリギリに察知。
反射的に剣を持ち上げ、剣撃を受け止めるが、力違いの剣圧で、ゼブラは後方に吹っ飛ぶ。
一回、二回と転倒し、地面に叩きつけられる。
「どうした、威勢だけか人間?」
オルテガは大剣を片手に持ち、不満足な表情で口を開く。
「まだだ…」
ゼブラは不敵に立ち上がる。しかし。
「コッチだ」
左側十メートルの距離にオルテガは移動。
「ーーーーッ!!」
ゼブラは驚愕。声の方向に、急いで目を移す。
生身のゼブラには、奴のスピードは全く見えない。相手は魔族、常人レベルで敵う相手ではない。
「吹き飛べ!!」
オルテガは大剣を降り下ろし、力任せの斬風を放つ。
「ぐあっ!!」
斬風を浴び、ゼブラは後方に吹っ飛び、壁に衝突跡が残る程、叩きつけられる。
やはり、鬼神化無しでは奴には勝てない。けど、鬼神化を使えば、暴走するかもしれない。それが怖いのだ。
「まさか、それが全てとは言わないだろうな?」
オルテガは大剣を片手に握り持ち、ゼブラに歩き進む。やばい、殺される。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
全身の痛みに苦悶の表情を浮かべ、ゼブラは壁にもたれる。そして考えていた、鬼神化を使うか、使わないか…。現状、使わなければ、話にならない。ゼブラが死ねば、ユリアも死ぬ。
答えは1つしかない…。
「ーーーーーッ!!」
オルテガは大剣を降り下ろし、斬風波をゼブラに放つ。壁は破壊され、一辺に砂煙が舞う。
ゼブラは消し飛んだのか、それとも…。
「コッチだ。ミイラ野郎」
オルテガの左側、十メートルの先に鬼神化フェニックスが炎圧を漂わせ、炎剣を片手に構えていた。
オルテガの斬風波が放たれた時、同時にゼブラは鬼神化に変身し、移動回避した。
「それが貴様の姿か…。クククク、面白い」
オルテガは不敵に笑い、鬼神化フェニックスに目を向け、大剣を片手に構える。
「ーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは炎剣を横に構え、俊足のスピードで斬りかかる。
「ーーーーーッ!!」
オルテガは大剣を振るい、受け止める。
そして、互い中間距離まで下がり、体勢を立て直す。
オルテガは大剣を逆手に構え、詠唱。地面一辺に3つの詠唱陣を浮かばせ、分身を具現化。
三体の分身は大剣を構え、鬼神化フェニックスに斬りかかる。
鬼神化フェニックスは冷静に炎剣を構え、三体の分身に突っ込む。
三体のオルテガの分身は、中間距離から鬼神化フェニックスに大剣を振るう。
「ーーーーーッ!!」
一体目は左腹に潜り抜け、二体目と三体目は頭上を跳び越え、分身達の攻撃を鬼神化フェニックスは避け、地面に着地と同時に鬼神化フェニックスはオルテガに狙いを定め、突っ込む。
鬼神化状態になると全ての能力がアップし、魔族と同等に戦える。
「ーーーーッ!!」
オルテガは大剣を振るい、受け止める。
同時にお互い中間距離まで跳び下がり、体勢を立て直すのである。
「ーーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは突っ込み、炎剣を振るう。
「ーーーーーーッ!!」
オルテガは右側に跳び、避ける。体勢を立て直し、大剣を片手に構え、振るう。
ギィン
鬼神化フェニックスは左側に向き、受け止める。
しかし、剣圧で後方に吹っ飛ぶ。
オルテガは大剣を片手に掲げ、刃身に紫炎を燃やし、詠唱。
「死の流撃!!」
オルテガは大剣を地面に降り下ろす。
大剣を降り下ろした地面から紫炎の斬撃波が出現。紫炎の斬撃波は鬼神化フェニックスに向かい、一直線に流れ込む。
「ーーーーッ!!」
鬼神化フェニックスは受け止める。しかし、紫の斬撃波に弾き飛ばされ、後方の壁に叩きつけられる。生身なら、死んでいた。
「踏み込みが甘い。それでは我には勝てぬぞ」
オルテガは不敵に大剣を掲げる。
(どうすれば…)
壁にもたれる鬼神化フェニックスは立ち上がり、炎剣を構える。
気持ちは迷っていた。鬼神は意思に反応し、パワーがアップする。闘争心を下手に高めると、自身は暴走する。何の為の鬼神化か、何の為に俺は戦うのか…。
今の鬼神化フェニックスは闘争心が薄い為、オルテガを倒す程のパワーがない。
「人間にしては強い能力を持っていると期待したが、とんだ力量不足だ」
オルテガは大剣を掲げ、詠唱。
一辺に詠唱陣を広げ、五体の分身を形成。
分身達は紫炎の刃身を形成し、一斉に構える。
「死の五連撃!!」
オルテガは唱える。同時に五体の分身達は鬼神化フェニックスに狙いを定め、斬りかかる。
鬼神化フェニックスは炎剣を構える。意思の中、何の為に戦うのかと、思い浮かべていた。
最初、強い敵からユリアを救う為、死際で唱えたら、鬼神化は応えた。
ユリアを守る。彼女を連れていく時、約束した。
意思は決めた、彼女が、答えだ…。
「これが俺の答えだぁ!!」
ユリアを思い浮かべ、鬼神化フェニックスの全身から紅炎が炎上し、紅炎の鎧を形成。
炎剣を構え、紅炎の鎧状態の鬼神化フェニックスは突っ込む。




