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ユーギガノス  作者: やませさん
始まりの章
13/260

第12話 封印の悪魔オルテガ

ーーーー〈封印の間〉ーーーー


「ここは…」


 ゼブラは一辺を見回す。石造りの地面、石造りの壁には松明が灯されている。壁には壁画、しかし、磨り減って何の壁画か見えない。

 広間の一番奥には、石の柩が置かれている。石の柩をペタペタと触り、調べるゴードン。どうやら、彼は無事だ。


「ゴードンさん、無事でよかったです」


 ゼブラは安心し、ゴードンの所に歩み寄る。


「生きているとはな…」


 ゴードンは冷酷に口を開く。


「ゴードンさん?…」


 ゼブラは不穏な様子で立ち止まる。

 初めて会った時の彼と、今の彼とは様子が違う。ゴードンは静かに剣を抜き、振り返る。


「ククククッ…」


 ゴードンは狂ったように笑う。

 首筋には黒い血管が脈を打ち、瞳孔は黒一色に染まり、全身からは紫の熱圧を漂わせている。


 奴の異様な気配に察知、ゼブラは思わず剣を構え、臨戦体勢。


「我の名はオルテガ。かつて、この部屋で封印されていた悪魔だ」


 ゴードンは不気味に身体を揺らつかせ、口を開く。奴はオルテガに憑依され、人格や肉体を支配されている。同行した部下達も同様、精神コントロールされている。


 ゼブラは臆した様子で剣を構える。

 敵ではなく、自身の能力、鬼神化に怯えている。鬼神化を使えば力が暴走し、ユリアを傷つけた。 

 フェイトの言葉が、自身の頭の中をグリグルと回り、響かせている。


「この者は財宝目的でこの部屋を訪れ、柩を開けた。解放された我はこの者に乗り移り、この者の部下達にも魔力を流し、我の従者にした。人間とは、何時の時代も愚かな生き物だ。欲に目が眩み、結果破滅する。このゴードンという輩も、まさに絵に描いたような破滅劇だ!!」


 ゴードンに乗り移ったオルテガは高笑い。

 悪魔は人の欲に漬け込み、破滅させるのが大好きだ。差し出した依頼は、ゼブラとユリアをおびき寄せる為の嘘の依頼、ゴードンの目元が普通だった為、わからなかった。


「目的は何だ。何故、俺やユリアをここに連れてきた?」


 ゼブラは言う。


「簡単だ。若い人の魂が喰いたいからだ。貴様らには最初の犠牲者になってもらう」


 オルテガは黒い息を吐き、答えた。


(マズイ、ユリアが危ない…)


 ゼブラは危険を察知、出入り口に目を向ける。

 何故ならユリアの所には奴に精神コントロールされた部下達がいる。しかし…。


「おっと、それは許せんな…」


 オルテガは指をパチンと鳴らす。

 すると、出入り口から紫の魔力壁が現れ、行く手を塞がれた。


「その壁は俺を倒さないと破れないようになっている。けど、安心するがいい、戦いの間、小娘に手を出さないと約束する。もし、貴様か死ねば、小娘も一緒に送ってやる。小娘がこの場にいないから幸いだな。もし小娘がいれば、貴様に絶望を味わせる為、殺していただろう。我は優しいだろ?、小娘の死に顔を見させないのだからな…」


「生憎、死ぬ前提で戦う気はない。勝ってここを出る。それだけだ」


 ゼブラは剣を突きつける。


 安心した。ゼブラが死なぬ限り、ユリアの命は保証された。ある意味、オルテガは優しい。


「面白い、我の本当の姿を見せてやる…」


 オルテガは前屈みの体勢で全身を震わせ、詠唱。足元に邪悪な詠唱陣、全身から黒い熱圧を漂わせ、魔力の高さを物語る。

 そして、ゴードンの身体は異形の道を辿る。

 体格は一回り、二回りに膨大。肉肌はピキピキと裂け、体格を形成していく。地面に滴る血、血に弱い人が見たら気を失うだろう。


(…………)

 

 形成の光景に、ゼブラは言葉を失う。

 体格の形成は終わり、オルテガは姿を現す。

 後背に厚布のマント、鎧のような体躯、身長は2メートル。褐色の包帯を全身に巻き、姿はミイラだ。右手に大剣を持ち、紫の熱圧を漂わせる。


「グフフフフ、驚いて言葉が出ないようだな。さて、100年振りの地上だ。貴様はどう楽しませてくれようか…」


 オルテガは黒い息を吐き、全身をコキコキ動かし、ストレッチ。


 ゼブラは剣を構える。

 鬼神化を使わずに倒したい。今のゼブラは、それがノルマだ。


「ーーーーーッ!!」


 次の瞬間、オルテガは突っ込む。


ギィン


 ゼブラはギリギリに察知。

 反射的に剣を持ち上げ、剣撃を受け止めるが、力違いの剣圧で、ゼブラは後方に吹っ飛ぶ。

 一回、二回と転倒し、地面に叩きつけられる。


「どうした、威勢だけか人間?」


 オルテガは大剣を片手に持ち、不満足な表情で口を開く。


「まだだ…」


 ゼブラは不敵に立ち上がる。しかし。


「コッチだ」


 左側十メートルの距離にオルテガは移動。


「ーーーーッ!!」


 ゼブラは驚愕。声の方向に、急いで目を移す。

 生身のゼブラには、奴のスピードは全く見えない。相手は魔族、常人レベルで敵う相手ではない。


「吹き飛べ!!」


 オルテガは大剣を降り下ろし、力任せの斬風を放つ。


「ぐあっ!!」


 斬風を浴び、ゼブラは後方に吹っ飛び、壁に衝突跡が残る程、叩きつけられる。

 やはり、鬼神化無しでは奴には勝てない。けど、鬼神化を使えば、暴走するかもしれない。それが怖いのだ。


「まさか、それが全てとは言わないだろうな?」


 オルテガは大剣を片手に握り持ち、ゼブラに歩き進む。やばい、殺される。


「ハァ、ハァ、ハァ…」


 全身の痛みに苦悶の表情を浮かべ、ゼブラは壁にもたれる。そして考えていた、鬼神化を使うか、使わないか…。現状、使わなければ、話にならない。ゼブラが死ねば、ユリアも死ぬ。

 答えは1つしかない…。


「ーーーーーッ!!」


 オルテガは大剣を降り下ろし、斬風波をゼブラに放つ。壁は破壊され、一辺に砂煙が舞う。

 ゼブラは消し飛んだのか、それとも…。


「コッチだ。ミイラ野郎」


 オルテガの左側、十メートルの先に鬼神化フェニックスが炎圧を漂わせ、炎剣を片手に構えていた。

 オルテガの斬風波が放たれた時、同時にゼブラは鬼神化に変身し、移動回避した。


「それが貴様の姿か…。クククク、面白い」


 オルテガは不敵に笑い、鬼神化フェニックスに目を向け、大剣を片手に構える。


「ーーーーッ!!」


 鬼神化フェニックスは炎剣を横に構え、俊足のスピードで斬りかかる。


「ーーーーーッ!!」


 オルテガは大剣を振るい、受け止める。

 そして、互い中間距離まで下がり、体勢を立て直す。


 オルテガは大剣を逆手に構え、詠唱。地面一辺に3つの詠唱陣を浮かばせ、分身を具現化。

 三体の分身は大剣を構え、鬼神化フェニックスに斬りかかる。


 鬼神化フェニックスは冷静に炎剣を構え、三体の分身に突っ込む。


 三体のオルテガの分身は、中間距離から鬼神化フェニックスに大剣を振るう。


「ーーーーーッ!!」


 一体目は左腹に潜り抜け、二体目と三体目は頭上を跳び越え、分身達の攻撃を鬼神化フェニックスは避け、地面に着地と同時に鬼神化フェニックスはオルテガに狙いを定め、突っ込む。

 鬼神化状態になると全ての能力がアップし、魔族と同等に戦える。


「ーーーーッ!!」


 オルテガは大剣を振るい、受け止める。

 同時にお互い中間距離まで跳び下がり、体勢を立て直すのである。


「ーーーーーッ!!」


 鬼神化フェニックスは突っ込み、炎剣を振るう。


「ーーーーーーッ!!」


 オルテガは右側に跳び、避ける。体勢を立て直し、大剣を片手に構え、振るう。


ギィン


 鬼神化フェニックスは左側に向き、受け止める。

 しかし、剣圧で後方に吹っ飛ぶ。

 オルテガは大剣を片手に掲げ、刃身に紫炎を燃やし、詠唱。


「死の流撃ジェノサイドリバー!!」


 オルテガは大剣を地面に降り下ろす。

 大剣を降り下ろした地面から紫炎の斬撃波が出現。紫炎の斬撃波は鬼神化フェニックスに向かい、一直線に流れ込む。


「ーーーーッ!!」


 鬼神化フェニックスは受け止める。しかし、紫の斬撃波に弾き飛ばされ、後方の壁に叩きつけられる。生身なら、死んでいた。


「踏み込みが甘い。それでは我には勝てぬぞ」


 オルテガは不敵に大剣を掲げる。


(どうすれば…)


 壁にもたれる鬼神化フェニックスは立ち上がり、炎剣を構える。

 気持ちは迷っていた。鬼神は意思に反応し、パワーがアップする。闘争心を下手に高めると、自身は暴走する。何の為の鬼神化か、何の為に俺は戦うのか…。

 今の鬼神化フェニックスは闘争心が薄い為、オルテガを倒す程のパワーがない。


「人間にしては強い能力を持っていると期待したが、とんだ力量不足だ」


 オルテガは大剣を掲げ、詠唱。

 一辺に詠唱陣を広げ、五体の分身を形成。

 分身達は紫炎の刃身を形成し、一斉に構える。


「死の五連撃ジェノサイドファイブ!!」


 オルテガは唱える。同時に五体の分身達は鬼神化フェニックスに狙いを定め、斬りかかる。


 鬼神化フェニックスは炎剣を構える。意思の中、何の為に戦うのかと、思い浮かべていた。

 最初、強い敵からユリアを救う為、死際で唱えたら、鬼神化は応えた。

 ユリアを守る。彼女を連れていく時、約束した。

 意思は決めた、彼女が、答えだ…。


「これが俺の答えだぁ!!」


 ユリアを思い浮かべ、鬼神化フェニックスの全身から紅炎が炎上し、紅炎の鎧を形成。

 炎剣を構え、紅炎の鎧状態の鬼神化フェニックスは突っ込む。 

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