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ユーギガノス  作者: やませさん
始まりの章
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プロローグ




───新世界歴5235年───


 北東のホワイトファング王国の北中部に位置する山中にある村、ナナテ村。まるで世間と隔離されたような山奥にある村。だが村にはちょくちょく変なのやマトモなのやら様々な行商人が行き交い、田舎だが、なかなか面白い所である。


───時刻は朝。


 村の表通りを歩き回り、行商人が営む出店を見て回る1人の青年。

 名はゼブラ・ハルシオン、尖った赤髪、勇敢さと優しさを思わせる瞳。灰色の長袖のピッタリしたシャツに、革作りの半袖の上着を着用し、年齢は18歳。身長は172センチ、長い間、自給自足の狩りで鍛えた為、筋肉質だ。 両手には剣を握る為のハンドグローブ、下は青のジーンズ、ブーツ。

 腰には赤布の腰巻きを装備。彼は今、最近狩りで使う剣を壊した為、安く売ってくれる行商人を探している。

 ゼブラは立ち止まった。村の食材屋の隣に、老人が風呂敷を広げ、武器の露店を構えていた。町に赴けば、何万Gsギースは下らない値段の武器が、数千Gsギースで叩き売られていた。Gsギースはこの世界の単価の事だ。


「これ全部、この値段なのか?」


 ゼブラは言う。


 すると、老商人は笑ながら口を開く。


「そうだよ。全部、話せば日が暮れる程のワケありの武器だ。この黄金の剣、ある奴はこれを買って、すぐにモンスターに喰われ、剣だけをキレイに残して死んだ。あと、このランス。ある貴族がインテリア目的で買ったが、数日後、何故か貴族は没落し、自慢の娘を売春に売るハメになった。それと、この大槌は…」


「あの、静かに選ばせてくれないか?」


 ゼブラは言う。

 そして並べられてる武器を見渡す。老商人が言った剣とランス、大槌は絶対買わない。老商人はカバンからタバコを取りだし、静かにタバコを吸いながら新聞を読む。

 放っておくと、関係ない物まで売り付けられるので、黙らせるのが一番だ。すると、ゼブラは一本の剣に目を移す。


「これ、くれないか?」


 ゼブラは指を差す。


「毎度あり3千Gsギースだ」


 老商人はゼブラが選んだロングソードを取りだし、差し出す。刃身は紅、金色の柄に紋章が刻まれているが、すり減っていてわからない。

 多分、没落した大昔の貴族のだろう。ゼブラは金を払い、ロングソードを受け取る。


 帰路を歩くゼブラ、すると…。


「おい、オマエ」


 後方から声。自分の事を呼んでいるのか、ゼブラは振り向く。


「そうだよ。オマエだよ。ちょっと来い…」


 声の正体は謎の男性。茶色の長髪、細い顔。眼は刃物のように鋭い。凛々しく着用した黒革のスーツ、身長はゼブラより少し高い。名前はリディクラ。彼の部下であり、黒のローブを纏った輩が4名。行き交う人々は、奴らの嫌な雰囲気にただ、避けて通りすぎる。ゼブラは気にせずリディクラに近づく。


「俺に何か?」


 ゼブラは言う。


「お前に用は無い。お前の持ってる剣に用がある」


 ギロリと、リディクラは睨む。

俺が何かしたのだろうか、嫌な気持ちでゼブラは口を開く。


「この剣が、どうかしたのか?」


 ゼブラは剣を持ち上げ、奴等に見せつける。剣を見せると、リディクラは剣形を隅々に眺め、そしてゼブラに愛想悪く睨む。


「その剣は、俺達の家に代々伝わる家宝なんだよ。昔、剣は盗まれ、そして微かな情報を辿り、ここに行き着いた。そこで、剣を返してもらいたい。我一族の為、頼む」


 リディクラは頭を下げる。


 ゼブラは腕を組み、考える。

 顔の悪さを見ると、よほど剣が大切なんだなと、同情。剣は家の中にある蓄えの金で買うとしよう。


「わかった、返すよ。ホラ」


 ゼブラは仕方なく剣を差し出す。


「ありがとう」


 剣を受け取るリディクラ。

 これで解決、奴等は帰るだろう。

 すると、剣が宙に浮く。剣はゼブラの手元に空中移動し、舞い戻る。


「オイ」


 リディクラは再びゼブラを睨む。


「ホラ」


 ゼブラは再び剣を差し出す。しかし。


(…………)


 お互い変な空気が漂う、リディクラは沈黙し、剣はリディクラに渡ると同時に宙に浮き、ゼブラに舞い戻る。


「アハハ」


 と、ゼブラは苦笑い。


「もしや」


 リディクラは不穏な表情を浮かべ、部下達を集め、ヒソヒソと話し合う。一方のゼブラは剣を持ったまま、沈黙。


 リディクラは小声で部下達に命令。

 すると部下達はローブの中に隠し持った剣を静かに構える。


「何、どういうつもりだっ!?」


 戦慄の感覚が走り、ゼブラは驚愕。


「貴様が剣の選ばれし者らしい。その剣は古代ユーギガノスの遺物、ある力を滅ぼす為に造られ、血筋にしか選ばれない効力となっている。その選ばれし者が貴様だっ!!」


 リディクラは言う。


「ユーギガノス?」


 ゼブラは身に覚えなく、首を傾げる。両親は普通だったが、生まれ故郷や家系は教わってない。まさかとは思うが、両親がユーギガノスの血筋だと言う事もありうる。


「私の目的は、ある強大な力を手に入れる為、相対となる剣と、選ばれし者を破壊する為、幾つの商人の情報を辿り、ここに来た。その剣はユーギガノスのパワーを手に入れる為の鍵だ」


 リディクラは殺る気の口振りで説明。一族の家宝は嘘だ。


 ゼブラは剣を構え、応戦体勢。

 リディクラは嫌な笑みを浮かべ、詠唱。足元に詠唱陣を展開。奴は中級魔導師、結構な実力者だ。


「貴様は後で血のサンドバッグにしてやる。それまで、眠ってろ」


 リディクラは睡眠の魔導術を唱える。ゼブラの頭上から光の詠唱陣、光の粉が詠唱陣から降り注ぎ、ゼブラは倒れ、気絶。

 村一辺の人々は奴らの恐怖により沈黙、リディクラは一辺を見渡し、冷酷な笑みで口を開く。


「ヒヒヒッ。どのみち、この剣と我々を見られたからには生かせておけない。これはディアブロス様の命令だからな…。オイ、お前ら!!」


 リディクラは声をあげる。部下達はリディクラに耳を向ける。


「村にいる奴らを皆殺しだ。ディアブロス様に授かった力を思う存分に試すがいい!!」


 リディクラは残虐な笑みで部下達に命令。部下達は剣を構え、一辺の村人達に襲いかかる。

 村中に響き渡る人々の悲鳴、女や子供、老人も容赦なく一方的に殺され、立ち向かう達人の戦士ですら、力を授かったローブ男には敵わず、死んだ。

 剣を売った行商人は逃げようとしたところ、頭から一刀両断され、絶命。

 建物は燃やされ、壊され、奴らは全てを奪い、少しでも息のある者はトドメを刺され、見逃さない。燃える村で歓喜をあげるリディクラは、まるで人の皮を被った悪魔だ。


「オイ、起きろ!!」


 リディクラは倒れるゼブラの腹部に蹴りを入れ、痛撃で叩き起こす。


 ゼブラは蹴り飛ばされ、ゲホゲホと苦しく咳き込む。


「見よ。お前の故郷を、いい眺めだろ?」


 リディクラは残虐な笑みを浮かべ、かつての村に目を向ける。


「ーーーーッ!!」


 村一辺に視野を向けた時、ゼブラは絶望的に言葉を失った。

 親しい友人、親同然に世話になったオジサン、食材や屋のオバサンやよく自分になついてきた子供。皆、体から地面に血を滴らせ、静かに絶命。


「いいな、その顔。可哀想に、お前の剣のせいで皆、この有り様だ。ヒヒヒヒッ…」


 リディクラは笑う。


「テメェら…」


 ゼブラは悲しみ、怒り、憎しみの涙を流し、立ち上がる。十数メートル先のリディクラ達に刃を向け、剣を構える。こいつら、許さない…。


「オッ。戦う気か?」


 リディクラは口を開き、黒いローブの部下達は剣を一斉に構え、いつでも戦える状態。


「ハァッ!!」


 ゼブラは剣を横に構え、奴らに突っ込む。戦いに関しては長年、狩りで培った経験で自信はある。

ローブの部下達は斬りかかるゼブラに、俊敏な速さで斬りかかる。


―――――ッ!!


 ゼブラは剣を振るう。

 一体のローブ男と刃が火花を散らしてぶつかり合う。

 ゼブラの剣撃は太い樹を切り倒す程の威力がある。


「ーーーーッ!!」


 パワーアップされたローブ男の剣圧にゼブラは押し返され、後退。

 自慢の剣撃は通用しない。


「ーーーーーッ!!」


 ローブの男達は動く。

 後退するゼブラに一斉に囲み、斬りかかる。


――――ッ!!


 一体目のローブ男は近距離から剣を振るう。


――――ッ!!


 ゼブラはギリギリ察知。

 右側に跳び、回避。


――――ッ!!


 二体目のローブ男はゼブラの左側から斬りかかり、中間距離から剣を振るう。


「ーーーーッ!!」


 ゼブラは剣で受け止める。

 しかし、相手の剣圧に負け、後退。


―――ッ!!


 三体目のローブ男はゼブラの右側の中間距離から剣突きを打ち放つ。


「ーーーーーッ!!」


 ゼブラは三体目のローブ男に向くが、剣突きが右肩に刺さる。


―――――ッ!!


 同時に残りのローブ男達は体勢を立て直し、突っ込む。


「ーーーーーーーッ!!」


 ゼブラの全身は他愛もなく切り刻まれる。奴らの剣撃スピードが早く、避けたり、受け流したりの行動が出来ず、奴らの行動が読めない。


―――――ッ!!


 一体のローブ男は、ゼブラの背後から蹴り飛ばす。


「まさしく、血のサンドバッグだな」


 地面に倒れ伏すゼブラを虫けらを見る目で嘲笑うリディクラ。奴は気に入らない者は簡単には殺さず、心を壊し、自ら(殺してくれ)と依願するまで、痛めつける。自分に酔った奴は残虐だ。


「テメェ……」


 地にうつ伏せで倒れるゼブラは、奴を睨む。全身は剣傷により、出血。斬撃ダメージが全身に行き渡る。


「キサマ……」


 リディクラはゼブラの目にムカついたのか、軽く詠唱し、魔力を溜めた左手を掲げ、魔力を溜めた左手から衝撃波を放ち、ゼブラを吹っ飛ばす。


「くぅっ………」


 地面を一回、二回と転び、ゼブラはうつ伏せに叩きつけられる。


「貴様が悪いのだからな、その剣に選ばれ、関係の無い人々を巻き込んだ貴様がな。死ねぇ!!」


 リディクラは再度、詠唱。

 左掌から10メートルの大きさを誇る炎球を現出させ、ゼブラに投げ放つ。 

 もうダメか。と、ゼブラは諦め、目を閉じた。


「ーーーッ!!」


 その時、1人の魔導師が駆けつけた。倒れ伏すゼブラの後方十数メートル。魔導師は瞬時に詠唱、右掌を掲げ、十メートルの大きさを誇る風球を炎球に狙いを定め、放った。


―――――ッ!!


 風球と炎球が衝突、かき消されるような音を一辺に響かせ、風球と炎球は消失した。


「大丈夫か?」


 倒れ伏すゼブラは薄く目を開く。

 前に立っていたのは男性魔導師。茶色の長髪に気品に漂わす羽毛の黒ローブ。冴えに冴えた細い黒瞳、身長は180センチ、年齢は20代前半、体格は中肉中背だ。


「俺は大丈夫だけど?。アンタは一体?」


 ゼブラは弱々しく口を開く。


「死んでなかったらいい。そこで見てろ」


 魔導師は少し乱調に言った。ゼブラの状態が状態、死にかけている。言われるがまま、大人しく見ているとしよう。

 大丈夫なのか、相手はパワーアップされたローブの男が4体とリディクラと名乗るヤバイ魔導師と合わせとて5体、彼1人で太刀打ち出来るかどうか不安だ…。



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