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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
プロローグ
6/104

非日常の適応者

 休日を楽しむ通行人達で賑わう中、刻矢達は町で買い物を楽しんでいた。地方都市である星神町は様々な区画があるうえに、開発がかなり進んでいるため中央には様々なビルや店舗がある。

 都心部を離れていくと、世界中の文化や建築を再現した町並みが存在する。店が豊富なお陰で、刻矢達三人と一匹は昼になる前に買い物を終えていた。

「これからどうする? ご飯までにはまだ早いし」

「そうですねえ。じゃあ麗那さん。今からスイーツ食べに行きませんか?」

「良いねえ。そういえば、今日は刻矢のおごりなんでしょ?」

「ああ」

 姫陽と麗那の言葉を二人の荷物持ち係になっている刻矢が肯定する。すると、少女達二人は明るい声で何を食べるか相談し始める。

「クロエは何か欲しい物ないか?」

 刻矢が肩に乗っている猫のクロエに聞くと、クロエは上品にあくびをしながら、その答えとでも言わんばかりに刻矢の首に擦り寄ってくる。

「そうか」

 しばらくの間、姫陽と麗那、そしてクロエは刻矢の道案内で進んでいた。ローカル線を乗り換え、ビルのある都心部から離れていく。電車を乗り換えて着いた先の景色は、タイルやレンガで出来た道と石造りの古いヨーロッパを彷彿させる物だ。様々な人種の人々の活気で賑わっている。平面に道路が張り巡らされた都心部とは異なり、坂道に無数の建物がある事が特徴だ。

「初めてくるけど、ここって東の地区だよね?」

「露天がいっぱいありますね」

「親父が様々な国で旅した経験を基に開発を進めた地区の一つだな。お陰で、手軽に様々な食も含めた文化を楽しめるスポットだ」

 姫陽と麗那が物珍しそうに町の風景を見ているが、刻矢とクロエは落ち着いた表情で眺めている。

「姫陽と麗那って海外に行った事はあるけど、俺やクロエみたいに旅をした事がないからなあ」

「あくまでも海外はバカンスだから、冒険家の刻矢やクロエとは違うわよ」

 麗那が不満そうに刻矢を睨み付ける。

「兄さんとクロエちゃんも、たまには家に帰ってくれば良いんですよねえ」

「最近は一緒にいる時間が多いだろう」

「でも、また行くんですよね?」

 姫陽が恐る恐る尋ねると、先程まで軽口を叩いていた刻矢の表情が急に変わる。何かに怯えている。或いは、何かに対して怒りを示している。そういった、様々な感情が複雑に混ざりあった表情を見せている。

「いや、もう冒険はしない。ずっと、お前達のそばにいる」

「――え?」

「刻矢、何かあった?」

 麗那の問いに、クロエが察しろと言わんばかりに優しく鳴く。

「いや……何でもないんだ。何でも――」

 刻矢が言い返した瞬間景色が文字通り急にねじ曲がっていく。今まであった活気の声が消え風景が別の物へと変化していった。

「え、何ですかこれ!?」

「まさか、この反応は――」

「やはり来たか、ナイトメア」

「え? 刻矢、何で知ってるの!?」

「それについては後だ。来るぞ」

 刻矢の言葉に二人は正気になる。周囲の景色が町ではなくビル並みに巨大な樹や家と同じくらいの大きさの植物に覆われた森に変化していた。ただし、森にしては植物特有の匂いが無くまるで絵に描いた偽物の世界だ。

「兄さん、これは何ですか?」

「ナイトメアという怪物が作り出した世界だ。ちなみにナイトメアというのは、ナイトメアコードというプログラムで人間から変異した存在だ」

「ちょっと、何で刻矢がナイトメアについて知ってるの!?」

「旅で何体か出会った」

 刻矢の言葉に麗那は納得するが妹の姫陽は未だに混乱している。

「気を付けろ姫陽。あいつらは人の心や記憶を喰らう。絶対に俺のそばを離れるな」

「はい、解りました」

 姫陽が刻矢に従い背後に隠れる。しかし、麗那はナイトメアの説明については納得したにもかかわらず未だに刻矢を睨んでいる。本人もそれに気付いたのか麗那の方を向く。

「何だ?」

「ナイトメアと戦ったって事は、倒し方も知ってるわよね?」

「当たり前だ。四肢を吹き飛ばしてから、頭と胸に風穴を開ければ良い。ナイトメアは再生が早いから」

「具体的には何する気?」

 すると刻矢は今まで買った荷物を置いて持参したバッグの中から何かを出す。取り出したのは銀色の二丁の自動式拳銃だ。所々傷があるものの手入れをしているらしく輝きを失っていない。

「刻矢さあ、銃刀法違反って知ってる?」

「知ってるさ。これは親父からちゃんと許可を取ってから輸入してる」

「刻矢のお父さん、警察にも顔が利くもんね。まあ、あたしも人の事言えないけど」

 今度は麗那がポーチから銃を出す。刻矢とは別の型だが二丁の自動式拳銃だ。

「何で二人は当たり前の様に銃を取り出せるんですか!?」

「あたし、ナイトメア対策組織にいるから」

「俺は資金稼ぎに傭兵もやってたしな」

 兄と幼馴染み二人の発言に姫陽は頭を抱えてしまった。

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