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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
プロローグ
3/104

悪夢を照らす光

 夜の町の中、少女――神宮寺麗那(じんぐうじれいな)は路地裏を怯えつつも駆けていた。麗那は足を止めない。何故ならば、背後からは無数の怪物――ナイトメアが追いかけているからだ。

 ナイトメアとのマラソンにより、麗那の体力は限界に近づいていた。息切れと汗、筋肉の疲労が徐々に体力を奪っていたからだ。

 だが、ナイトメア達はスタミナその物が無いのか追いかけ始めた時と同じ速度で麗那を追い続ける。その様を見た麗那はナイトメア達の速度が上がったと錯覚してしまう程に動揺していた。

 このままだと追い付かれて喰われてしまう――麗那の心には疲労と同時に諦めを感じていた。事実もう今までの疲労でほとんど足が動かない。

「諦めてたまる――え?」

 前へ進もうとするが足が滑り体が宙に浮いてしまう。そして遂には全身が倒れてしまった。いくら足掻いても立ち上がる体力は残っていない。獲物を求め襲い掛かってくる。そんな背後の奴等を睨み付ける事しか出来なかった。

「もう駄目かな――明後日、ひなちゃんと約束してたのに。ごめん、約束守れそうにない――」

 麗那は迫る怪物共を強く睨みつつ怒りや悲しみ、絶望といった全ての感情を雄叫びの様に吐き出す。

 両目から溢れる涙で背後からやってくる死を睨み付ける事すらできない。

 じきに奴等に食べられてしまう。約束を果たせない悔しさと、理不尽な死に対する憎しみが彼女の人としてのプライドをへし折った。麗那は現実から目を背けるかの様に強く両目を閉じた。

 だが、いつまでたっても彼女に人間としての死が訪れない。麗那が恐る恐る瞳を開けると、そこには一体の“何か”が居た。

 背後から見ているので麗那には全体像は解らないが、全身が純白の羽で覆われており、大体一八〇センチメートルの長身。人に似た四肢を持っているが、手足の指は鳥の爪を無理矢理人の五指にした形だ。

 その存在は一言で表すならば鳥人。襲ってきたナイトメアとは異なり、麗那には何処か神々しさすら感じていた。

「鳥の――ナイトメア!?」

 鳥のナイトメアと称された存在は下がれと言わんばかりに右腕を麗那の前に出した後、麗那と自身に近付く全てのナイトメア達を全て素手で叩き潰していく。するとナイトメア達は徐々に薄くなっていき、最後には周囲のビルと一緒に青の粒子となって霧散していく。

 辺りが静かになると、純白の鳥人は麗那を一瞥すると背中から七対の純白の翼を生やし空へと去っていった。羽ばたく度に輝く羽根を散らしながら。

「もしかして、あたしを助けてくれたの?」

 麗那は残った白の羽根を握り締めつつ星空をいつまでも見つめ続けた――

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