翔のパンチは強いです。
年明け、初の登校。
僕は翔の一件はきちんと覚えている。
ただ、僕の行った行為に間違いは無いと思っている。
「副総務として間違っていないよな。」
そう自分に言い聞かせて教室に入る。
刹那、一気に背筋が凍る感覚を覚える。
そこには、翔がいた。
翔は空手をやっている。
そのため、少し怖い。
「何?」
僕は少し低めの声で言う。
「お前が先生にチクったんだよな?」
一気に本題に入る。
「…あぁ。」
僕は少し間を開けて言った。
「なんで?」
「間違えを正すため。」
「は?」
「お前が行った行為は明らかにおかしい。先生を騙したんだぞ?」
「で?」
「恥ずかしく無いのか?」
「うん。だって、携帯のため。俺が愛するゲーム達のため。その為なら何でもやる。」
終始、翔は真顔だった。
こりゃ、本気で終わってるな。
刹那、翔のストレートが飛んでくる。
その拳を無防備で受ける。
僕は床に倒れこむ。
「いきなりはなくね?」
「これが俺の恨みだよ!!」
再び飛んでくる。
しかし、今度はちゃんと避ける。
そして、翔の空いた部分にストレートを決める。
すると、翔は机にぶつかりながら床に転げ落ちる。
「恨むのは良い。でもさ、これは翔のことを思ってやったんだよ!!そりゃ、僕個人の感情もあるけどさ、でも社会人としてやってはいけないことをして、その処理が出来ないとか糞だろ?だから、それをちゃんと出来て欲しくて…。」
「うるせんだよ!!!!!」
また、ストレートが飛んでくる。
しかし、僕は避ける。
しかし、連続攻撃。
さすがに予期できず、そのまま食らう。
僕は床に転がる。
もう、意識がだいぶ無くなってきた。
僕はとっさに携帯を出し、LINEを送る。
大事な人へ。
送り終えた直後、僕は胸ぐらを掴まれる。
「お前のせいで、一生懸命やってきたゲームのランキングが…連続ログインが…。どう責任取ってくれるんだよ!!」
また殴られる。
「糞!!糞!!くそっ!!」
僕の意識がだいぶ飛んできた。
「…でもな、悪い……のは…おま、え…だぞ?…そ、そんだけ愛して…るなら……とられる…ような……こと………する、うぅ!!」
しゃべっている途中にみぞおちにパンチ。
「もう、いいわ。この恨みを晴らす!!」
刹那、翔が胸ポケットから電工ナイフを取り出す。
「死んでね。」
そして躊躇いもなく翔は僕の胸を刺す。
僕の意識はここで途絶えた。
死んだ後の感覚はなんか不思議だ。
記憶も今までどおり。
ただ、誰とも話せない。
現実世界を見ることはできる。
そこには、警察に捕まる翔の姿。
僕の死で泣いている友人たち。
僕の死で悲しみ、絶望感を感じ、泣き崩れる親…。
僕も自然と涙が出てきた。
正義感…
強いことは大切だ。
でも、度が過ぎるとこういう風に誰かを悲しませてしまう。
今は後悔で一杯だ。




