表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディスペル  作者: SIN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/122

守って欲しい場所

 城の上空に感じていた2体の天使の気配は、目当ての魂を導く為に天界へ戻っていった。

 王の乱心による兵士達の恐怖は終わったのだ。

 だから、この騒動を治めた恭治は誰からも感謝されるべき筈なのに、王殺しの大罪を犯したとして、人が大勢集まっていた中庭で処刑された。

 集まっていた人々も、執行した兵士ですら黙り込んでいる中、ただ“奪う者”の兵士を束ねていた隊長さんだけが1人で、

 「どんな理由があろうとも、王殺しに違いはない」

 と、騒いでいた。

 自分の部下を何人も王様に拷問され、それを救った恭治に王殺しと言い、スグに処刑執行した隊長さんは、かなり高い確率で王殺しを恭治に依頼した本人だろう。

 そうでなければ力づくで開けようとエルナさんが散々やって、ビクともしなかった拷問部屋の扉が開く訳がないんだ。

 確かに恭治の力は強いから、こじ開ける事は可能かも知れない。だけど、開け放たれていた扉は大破もしていなければ大きな傷もなかった。

 内側から鍵を開けた何者かがいた証拠だ。

 拘束されている兵士達やディルクには扉を開ける事は無理、だから王様が自分で開けるか、兵士達を見守っていた隊長さんしか考えられない。

 って、こんな犯人探しをしたって仕方ないよね…。それより、そんな隊長さんのいる城にディルクとエルナさんを残しておけない。

 特にディルクは部下だし、唯一の無傷者。もしかしたら隊長さんが扉の鍵を開ける所を目撃したかも知れない。目撃してなくても、見られたかも知れない。と隊長さんが考えてしまったら、王殺しの手引きをしたとか何とか理由を付けて処刑するかも…いや、違う。ディルクの寿命はそこそこ長いんだった。

 ただ、城にいて欲しくないって俺の気持ち。

 後は…こんな所よりも守って欲しい場所があるから。

 「ピヨ、出て来て」

 呼びかけるとスグに“魔石”から出て来てくれたピヨは不満げな表情で、

 「いつまでそのあだ名で呼ぶのですか?」

 と、文句を言った。

 「鳥っぽくて可愛いでしょ?それより、ルシフェルはディルクを、ピヨは恭治の体を持って着いて来て。あ、首も忘れないで」

 指示を出してから俺はエルナさんの腕を掴んで一気に飛び上がった。すると俺がエルナさんを導きに来たと勘違いをしたディルクが追いかけて来るから、そこをルシフェルが後ろから近付いて担ぎ上げて俺の後ろについた。

 王が倒される前から城下町は混乱していたのだろう、殺伐とした雰囲気が見て取れる。人々が城に押し寄せる位だから、実はもっと、もっと前から王様の乱心は始まっていたのかも知れない。

 そうなると、各地にいる用心棒や“奪う物”は何か仕事を求めて城下町に集まっている可能性がある。って事は、城下町以外の町の警備って、どうなってるんだろう?

 急がなくちゃ…。

 「説明は後でちゃんとするから!」

 エルナさんだけにではなく、ディルクにも、ルシフェルとピヨにも声をかけ、後は出来る限りの全速力で飛んだ。

 遠くに見えて来たのは見張りの塔と、その更に向こうに町。

 草原が広がっていて、洞窟があって。洞窟から北に行った先には岩場があって…草原を東に行くと港町があって。

 今はどんな景色だろう?俺の知っている世界と変わりないかな?いや、サクリアがいないんだから、町の中にダイエット塾は確実にないんだろうけど。

 「あの町…様子が可笑しい?見える?あの町!」

 エルナさんは目が良いのか、勘が鋭いのか、町の異変に気が付くと町の方を指差す。その上空には3体の天使が待機していて、魂が昇ってくるのを待っていた。

 確実に被害が出てしまう戦いが始まっている…城のゴタゴタのせいでここの守りが薄くなってしまったのだろう。

 それにしては被害が3人って少なくないか?

 俺がディルクとエルナさんを連れて来る事が運命に影響を与えた?いや、それだと俺の階級は下がっているだろう。下がればルシフェルが激怒してディルクを大人しく運んではくれないだろうから、階級に変化はなさそうだ。だったら、町に残っている戦力が思ったよりも高かった?それとも…天使が把握出来ない存在が町を守るのか…。

 なんにせよ、この場でディルクとエルナさんを活躍させない方が良いのかな?

 活躍も何も、結果は被害人数3人。大人数なら町が廃墟になってしまうから大変だけど、3人なら…。

 もぅ…これだから天使は嫌だよ…。

 被害人数3人だけだから大丈夫?なにが3人だけ、だ。3人も、だよ!1人1人ちゃんと生きている人が3人も被害に遭ってしまうんだ。

 分かってる。

 こんな事を深く考えていたら身が持たなくなる事くらい。

 いくら助けようとして抗っても、その人は時間通りに魂が導かれていく…助けようとするだけ無駄なんだって事くらい…。

 分かっているのに、助けられない。それを延々と見なければならないんだから、数字だけを見て事を判断するのはしょうがない…魂を運ぶ事を“導く”と言い換え、自分達のしている行為が魂の助けになっていると信じるしかない。

 じゃあ、俺はどうしてここに来た?

 守って欲しかったから、この町を、俺達の屋敷を…。

 俺達の屋敷?

 ここに生きる皆は、それぞれがそれぞれの夢を追いかけているだろ?そもそも屋敷なんて必要ないんじゃないか?

 屋敷は俺達の帰る場所だった。

 サクリアがいて、カフラがお茶いれてくれて、恭治がご飯作ってくれて…ディルクは屋敷内と町の見回りしてて、エドはガラクタ集めてきて飾るんだ。俺は依頼箱の確認して…。

 楽しかったなぁ…。

 俺は皆の願いを叶える為にここに来て、皆の願いを叶えてきた。

 後は誰?

 恭治と、ディルクと…天使長。

 ディルクの願いは、蘇らずにディルクとしてエルナさんを守りたい。だった。それは天使長の蘇りのメカニズムを知りたいと言う願いを叶えるだけで叶える事が出来る。

 門の強化をするとか、魔界の責任者に話をするとかすれば良い。そうなれば“蘇り”に必要なシャドウが地上に出て来れなくなるんだから、ディルクが蘇りになる事はない。

 だったら、俺はどうしてここに?

 城にいて欲しくなかったからなんて、とんでもない私欲の為に説明もなく連れて来ちゃったよ!

 「天使君、説明ってのは後から聞くから、今は早く下ろして!」

 急にエルナさんが暴れ始めるから、俺は落ちてしまわないようにと急降下するしかない。そうするとパッと手が離れて、エルナさんは町に向かって走って行ってしまった。

 その後ろを追いかけて行くのは、ルシフェルから飛び降りたと見られるディルク。

 2人の背中を見送りながら地面に降り立つと、隣にはルシフェル、後ろには恭治を抱えたピヨが降りてきた。

 さてと…恭治の願いを叶える為、蘇らせよう。

 でも、メカニズムを知っているだけだから実際どうしたら良いのかは分からない。しいて言うなら…応援?

 俺の知っている世界では、確か樹海からの帰り道の途中で蘇ったんだよね。だったら樹海に一旦連れて行った方が良いのかな?

 そうだよ、シャドウは今にも消えてしまいそうな弱々しい存在だった。そんな魂が長時間地上をフラフラ出来る筈がない。って事は、蘇った場所…シャドウが出現する場所に出来るだけ近付く必要があるんじゃないか?

 あれ?恭治が蘇った時間と、今の時間は一致しているのか?場所だけを合わせてもシャドウが誕生してなければ意味がないんじゃないか?

 駄目だ、シャドウ側の詳しい事情が分からないから、移動したら良いのか、動かさない方が良いのか分からなくなってきた。

 だったら、俺がする事って首を縫い合わせる事と、待つ事しかないのだろう。

 ちゃんと綺麗に縫い合わせるよ。

 蘇った後、住む場所に困らないように屋敷を使わせてくれないかって町人に頼んでみる。それから、出来るだけ俺の知ってる世界と同じ暮らしが出来るようにする。

 だから早く起きて。

 俺さ、100年ぶりに恭治の作ったご飯が食べたいんだ。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ