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ディスペル  作者: SIN


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90/122

確認

 城に押し寄せる人の波は城の中に流れ込み、まるで案内されているかのように1階を駆け巡って中庭へ向かっていく。

 そんな流れに逆らい、城の入り口付近に立ち止っているのは、俺が知っているよりも鋭い目をした恭治だ。

 「あの…」

 その目があまりにも怖いから、俺は少し離れた場所から声をかけ、手を左右に広げて武器を持っていないとアピールした。

 「お主は…いつぞやの天使」

 そ、そんな目で見なくたって攻撃しないよ!え?恭治ってこんなに怖い人だったっけ?確かに化け物みたいに強かったけど…仲良くない人に対しての警戒心が強いのは、用心棒として生きるには必要な事なのかな?

 怖いけど、話しをしなければならない。

 確認しなくちゃならない。

 「少しだけで良いから、俺の話しを聞いて」

 思い切って近付くと、クッと目を細めて嫌悪感を濃く表した恭治は、それでも立ち去る事はせず、俺を注意深く眺めるだけ。だから、多分だけど…話しを聞こうとしてくれているんだと思う。

 もし違っていても答えを聞かなきゃならないんだから、怖がってる場合じゃない。

 「魔物を1体でも多く倒す事…それが恭治の願い?」

 時間を戻る前に恭治自身から聞いた願いだから間違いはない筈なんだけど、俺が聞いたのは蘇った後の恭治だから、生きている時に抱いていた夢は分からない。

 だから、その確認がしたかった。

 「いかにも」

 願いに違いはないようだ。なら、もっと細かい事も確認しなければならない。

 「時々蘇る“奪う者”がいる事は知ってるよね?記憶がなくなる事も…」

 また少し近付いて“奪う者”ならば誰もが知っているだろう事を尋ねてみる。だけど、こんな基本的な事が聞きたい訳じゃなくて、ただ近付く為の口実。そうしなきゃルシフェルに会話内容が聞こえてしまう。

 「うむ」

 逃げずにいてくれる恭治は、武器にかけていた手も下ろしてくれた。何故だかは分からないけど警戒を解いてくれたようだ。だったら、もう少しだけ近付いても良いかな?

 「…もし、蘇って、全ての事を忘れても、魔物さえ倒せれば恭治は幸せ?」

 ゆっくりと近付きながら小声で話を続けると、俺の声をちゃんと聞き取ろうとしたのか、恭治の方からも2歩近付いて来てくれた。

 「魔物を倒せるのなら、拙者はそれで…」

 もっと、もっと近くに行かないと。

 誰にも聞かれないように、恭治の1番近くに行かないと。

 恐る恐る手を伸ばすと同じように手を伸ばしてくれて、指先が触れた瞬間一気に懐に入り込んでみた。

 「…蘇るのは、体だけなんだ。魂が体に戻る訳じゃない…」

 この場所は騒ぎの音や声が渦巻いているから、いくらルシフェルが地獄耳だと言っても俺の声は聞こえない筈。

 だから、静かになる前に、ルシフェルが耳を澄ましてしまう前に、軽く蘇りのメカニズムの説明をした。

 信じてもらえないかも知れないけど、言いたかった。そして聞きたい、本当に蘇りたいのか。

 自分ではない魂が体に入り込み、自分として生きる。例え体が魔物の撲滅を夢見たとしても、それはもう自分ではない他の者。それでも良いのか、ちゃんと聞きたいんだ。

 「何者かに体を則られると言う事でござるな?」

 恭治は後ろにいるルシフェルを気にしている俺を気にかけてくれたのだろう、耳元で、しかも小声で答えてくれる。

 「うん。だけど、体の中には脳みそがあるでしょ?だから戦い方とか、癖とかはそのまま残るんだ」

 ねぇ、どう?どう思う?これでもやっぱり魔物退治を夢見て蘇りたい?

 「拙者は魔物が憎い。全ての魔物をこの手で倒す事が目的…拙者が倒された後、この体がまた魔物退治に使われるのなら、拒む必要がござらん」

 本当に?誰かも分からない悪魔の魂が恭治として蘇るんだよ?それなのに、そんな悩む間もなく即決しちゃって良いの?

 蘇らない。と言う選択肢は、ないの?

 「それが、恭治の夢?」

 「魔物を倒してくれるのであろう?ならば問題ござらん」

 清々しいほどの即答。

 少しでも良いから拒んでくれたなら、俺はきっと恭治を助けたよ?もっと蘇りを嫌がってくれたら、残り僅かな階級だって投げ捨てたよ?なのに、即答なんだね…始めの頃に見せていた激しい表情すら隠した笑顔で。

 「王様は最上階にいるよ…行けば、スグに分かると思う…」

 けど、ディルクとエルナさんを助ける事が出来るのは恭治だけなんだ。そして恭治だけが…。

 「王の討伐は拙者の請け負った仕事故、気に病む事などござらんよ」

 王様の討伐を依頼するなんてお城の関係者の筈。だったら討伐が成功した後に逃してくれたら良いのに、運命はそうにはなっていない。

 「ごめん…」

 ここまで来て、言う事だけ言って、確かめたい事だけ確かめて、それなのに助けてあげられなくて、ゴメン…。

 「天使殿、拙者の夢をお願い致す」

 武器に手をかけた恭治は、もう1度柔らかな笑みを見せてから階段を駆け上がって行ってしまった。

 どう思えば良いんだろう?

 王様に拷問を受けている兵士の苦しみが少しでも短くなったと喜べば良い?

 ディルクとエルナさんが無傷のまま助かる事を喜べば良い?

 階段を駆け上がって行くあの恭治の後姿が、最後になると悲しめば良い?

 だけど、蘇るんだよ?記憶も、癖も、ゴザルな口調もそのままに蘇るのに、どうしてこんなにも胸が締め付けられるんだろう。

 助けてあげられない事が、どうしてこんなに悔しい?

 恭治の願いを叶えるよ。その為に俺は時間を戻ってきたんだ。

 皆の願いを叶える為だけにここにいるんだから……。


挿絵(By みてみん)

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