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ディスペル  作者: SIN


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エド~ゾンビン~

 「アル、早く早く」

 「待ってエド…うん、良いよ」

 今日は年に一度の祭りの日、朝から賑やかに楽器が打ち鳴らされ、俺も友達のアルも起きた瞬間から独特のウキウキ感でとてもジッとなんかしてられなかった。

 俺は仕事上あまり町にいる期間がないケド、この日だけは絶対何があっても毎年参加していた。そしてアルは今年が初めてだ。

 奪う者、そう呼ばれている者がいる…俺、実はソレ。

 奪う者ってのは魔物を魔石に封印して契約を結んで一緒に魔物退治するって人の事。でもさ、俺から言わせてみれば“契約”ってのはちょっと違う気がするんだ。しっくり来る言葉は友達!アルは3ヶ月前、奪う者になりたての俺に出来た最初の友達だ。だからこうして一緒に祭りを楽しもうって訳。

 うん、分かってるよ、町に魔物を連れ込んじゃ駄目って事は。でもさ、もう俺の友達、人を襲う魔物なんかじゃない。

 だからと言って堂々と連れて出るのはどうかと思って俺の服などを着せてみる。元々アルは人型の魔物だから服を着せて、頭にある角を帽子で隠せばもう何処から見ても人にしか見えない!完璧だ。

 でもその帽子は家から出て暫くする頃には脱げてしまい、周囲にアルの正体がバレしてしまった。途端祭りモードだった人々はアルを退治しようとするギラギラとしたモードに切り替わり、俺は慌ててアルを魔石の中に戻し、走って町を後にした。

 町の人は魔物が大嫌いなようで…って当たり前だけど…でも町に入って来た魔物に対するあの団結した攻撃はちょっと行き過ぎてる気がするんだ。

 俺が、いつか絶対にこんな世界変えてやる。

 魔物にもちゃんと感情があるし、考えも持ってる。ただ人間を襲いたいって奴も中にはいるけど、そんなの人間だって同じで、魔物をただ殺したい奴だって大勢いるだろ?要は一緒、だから仲良く出来ない訳がないんだ。

 人間に王がいるように、魔物にも王がいる。だから同盟とか結んだりしたらもっとお互いに住み易くなる筈だ!とか言っても今の俺がそんな事を言ったって誰も相手にしてくれないだろう。だったら俺は世界一の奪う者になって名誉と知名度を上げるんだ。そしたらきっと王も俺の言う事を聞いてくれるに違いない。

 「いよぉっし!アル、修行だぞ」

 魔石から出てきたアルは酷く落ち込んだ様子で、俺と目を会わせようともしない。

 「御免、帽子取れたの気付かなくて…正体バレたから…」

 アルは俺が祭りを楽しみにしていた事を知っていた。だから余計に責任を感じてしまっているのだろう。でも、ちょっと違うんだ。

 「俺が祭りを楽しみにしていたのは事実だけどさ、それはアルと一緒に騒ぎたかったからなんだ。だから、騒げるなら別に祭りじゃなくたって良いんだ」

 「エド…ありがとう。うん!じゃー修行始めよーう」

 よし!もっともっと修行して強くなってさ、最強の魔物“黒き悪魔”とか言うのを魔石に封印しちまうぞぉ~!もしそれで友に出来れば俺の知名度は果てしなく上がる!何故ならその魔物は奪う者だけに留まらず、世界中の人が知っている最強最悪の魔物として恐れられている存在だからだ。

 数十年前に誰かに封じられたって話があったけど、それはデマだったらしくてさ、最近出るようになったらしいんだ。で、次々と奪う者を殺して回ってる。だから俺は奪う者になった。兼ねてから“魔物を見たら即攻撃”ってやり方が気に入らなかったから。こんな制度なんか変えてやる!って。

 毎日修行に明け暮れて少しだけ自分の力に自身が持てた頃、俺は2人目の友を迎えていた。始めから2人にしろって思うかも知れないけど、それは無理な話でさ、友だって言っても相手は魔物で、魔石に閉じ込めておくだけの力が必要になるって事。大体奪う者は経験を十分積んだ者も2人までが限度だって聞いた。だから今俺の友が2人に増えたって事は、俺が着実に強くなってる証拠みたいなものだ。

 シノと名乗った2人目、アルとの相性も良く、今は部屋の中2人で修行をしている。時計を見ると夕方の5時を少し回った位。

 「少しだけ出かけてくる」

 家を出ると町の中は買い物をしている人や、仕事が終わって酒場に向かう人が行き来していて、品物を売り切ってしまいたい商人がお値打ち価格に値下げした食料を叩き売りする声が彼方此方で聞こえてきた。そんな大通りを俺は町長の住む屋敷へと向かっていた。

 ただの奪う者に町長が直々に会ってくれない事は分かってる。でも、俺の声が少しでも届くなら、行く価値はあると思ったんだ。

 町長の屋敷前には数人の見張りがいて、俺の姿を確認した辺りから警戒態勢をとっている。前の祭りの一件から俺は厄介者としては有名になったらしい。

 「俺は!人間も魔物も仲良く暮らせる世の中を作って欲しい!!」

 屋敷に向かって声の限り叫んだ。

 「魔石が使えるお前になにが分かる」

 その場にいた見張りは、確かにと納得するしかない事を言いながら俺を黙らせようとしてるけど、だからって引き下がれない。

 「魔物だからと言う理由だけで攻撃するのは間違ってる!!」

 今度は見張りに向かって叫ぶ。

 魔石が使えない人にとっての魔物は、そりゃ脅威だし、攻撃してでも追い出そうとするのは今の世の中では正しいのかも知れない。でも、そんなのは本当の正しさじゃないだろ?

 「1匹の魔物がいるだけで、どれだけの被害が出ると思っている」

 俺を押さえ付けていた見張りの力が急に強くなり、激しい目で睨んできた。

 「分かり合えればそんな事もなくなるんだ!見ただけで攻撃するなんてそんなの絶対に可笑しいだろ?仲良くなれば被害なんて…っ!いぃったぁ…」

 俺の言い分を最後まで聞かず、見張りは俺の腕を1回思いっきり捻り上げてから持ち上げ、なんの躊躇いもなくポイと地面に投げ落とした。

 「魔物が人を襲う所を直接見た事はあるのか?無抵抗の人間をアイツらは次々と手にかける…分かり合え?綺麗事を言うのは簡単だが、そんなものはただの幻想でしかない。お前も、もっと現実を見て勉強しろ」

 俺の夢がただの綺麗事だと言われ、幻想だと決め付けられ、勉強しろと罵られたと言うのに、俺は何も言い返せないでいる。確かに俺は魔物が人間を襲っている所を見た事がなかったから…いや、厳密に言うと襲っている場面に直面した事は何度もあるんだ。ただ、俺が奪う者だから襲っている魔物と戦って魔石に封じ、襲われている人間を助けられているだけ。でも、この見張りの男達は奪う者じゃない。そりゃ魔物が倒せないって事じゃないんだろうけど、魔石が使えないと退治するスピードが違うんだ。奪う者はある程度弱らせた魔物に魔石を突き付けるだけで良い。でも使えないと完全に倒しきってしまわなければならない。もし、見張りの人数よりも多くの魔物が町に入ってきたら?無抵抗の人間が次々と手にかけられている場面を目撃する事になる…。

 何も言い返せなくなった俺を他所に、見張りの男は見張りの仕事に戻り、武器を構えたまま注意深く辺りを見渡し始めた。

 再び屋敷に向かって叫ぶという気も起きず、無気力になった俺は重い足取りで家路につき、頭の中で見張りに対する抗議文を考えていた。

 人間も魔物も、仲良く出来る筈なんだ。そう思うのは俺が奪う者だから?

 魔物だからと言うだけで攻撃するのは間違ってる。そう思うのは綺麗事?

 もし…もし俺が奪う者じゃなかったら、アルもシノも俺を襲ってた?

 そう考え付いてしまった後、俺はどうしても家に足が向かなくて、その場にしゃがみ込んだまま呆然としていた。

 日も暮れて辺りが暗くなり、膝を抱えて座っていた姿勢を改めて視線を少し上げると、家に向かう一本道が見えた。そして、向こうから俺の服を着た2人分の影。

 「あ、いた~。エド~夜ゴハン出来てるよ~」

 「そんな所でピクニック?」

 アルと、シノだ。

 道の両脇には普通に商店もあるし、アルとシノは実際幾人もの町人とすれ違っている。けど、町人はアルとシノを攻撃しようとはしないで、普通だった。俺を呼んでいるあの2人が俺の友達の魔物だって知ってる筈で…皆、魔物だと分かってるのに攻撃してないし、アルもシノもすれ違う町人には目もくれずに俺に向かって手を振りながら歩いてくる。

 仲良く…出来ない筈がない…そうだ、こう言う事なんだ。仲良くじゃなくて、襲う意思のない者には攻撃しないって姿勢だよ。

 「2人とも~外では魔石の中に入って」

 そう手を振り返して立ち上がった時、凄まじく邪悪な気配が真後ろでした。

 慌てて2歩前に出てから振り返ってみると、口元まで隠れる程の長いフードの黒ローブを身にまとい、かなり大きな鎌を片手に持った魔物が立っていた。

 コイツが“黒き悪魔”なのか?

 戦闘準備を整えようと剣を握った右腕に激しい痛みが走り、何が起きたのかが分からずに右腕に視線を落とす。

 右腕には棒のような物でかなり思いっきり叩かれたような赤黒い筋が出来ていた。あの鎌の柄の部分で攻撃された?なのに攻撃が見えなかった…しかも骨が折れてない所を見ると、これでも手加減をされたらしい。

 到底適う相手じゃないとその時点で嫌と言う程思い知らされた俺は、痛みでヨロケル足を踏ん張り、町の外に向けて走り出した。

 「逃げるか、弱者よ」

 逃げるとの言われように心の中で思いっきり否定する。町に奪う者は俺しかいないんだ、いくら“黒き悪魔”は奪う者しか襲わないとしても、襲い掛かって来る人間を攻撃しないとは言い切れない。だったら俺が町から離れれば、少なくとも町人が襲われる事はない。

 「蘇ってみよ」

 思いっきり走っていたにもかかわらず、後もう少しで町の外だったと言うにもかかわらず、俺は“黒き悪魔”の後ろからの攻撃をモロに食らってしまっていた。

 地を駆けていた筈の足が宙を蹴っている、背中から刺された筈の鎌が目の前に見える…俺って串刺しにされてんじゃん…ハ…ハハハ…。

 「蘇ってみよ」

 再びそんな言葉を継げた“黒き悪魔”は俺に刺していた鎌を一気に抜き去り、町人を攻撃しようという意思も見せずに何処かへと消えてしまっていた。

 奪う者が時々蘇るってのは知ってる、でもさ…そうしたら生前の記憶ってのはサッパリ消えちまってんだぜ?嫌だ。俺、アルとシノとはズット一緒にいたいんだ。友達なんだ…。

 「エド、大丈夫?エド、痛い?ねぇ、エド…エドォ…」

 アルが目の前で泣いていた。

 「アル…シ…ノ…」

 息を吸っているのに、何処からが漏れ出しているような息苦しさでろくに話せない俺をアルとシノは必死になって運んでくれた。だから目立った筈だった。でも町人は誰も俺達を追い出そうとはせず、まるでここに俺達がいないかのような態度で、それはさっきまでのアルとシノに対する態度と同じだった。

 家に戻って来る頃には寒くて寒くてしょうがなくて、唇やら手足が笑える程震えていた。

 ゴメンな、こんな弱っちいのが友でさ…早く契約解除しないとこの2人はこのままこんな俺の側にいなきゃならない…分かってるのにもう…何の力も入らない、そのくせして勝手に体って震えたりするんだな。

挿絵(By みてみん)

 耳元でバリバリと言う何かがはがれる様な音がした。途端に右目が異常に痛くて慌てて右目に手をやるが、凄まじい違和感で飛び起きた。

 「う、うわぁ―――!!」

 叫んでみた所で俺が今見ている光景に変わりはない。

 うつ伏せで倒れていた俺の目の前、見えてはいけない物があった…それは眼球、筋みたいなのが繋がっていて、その先には俺の右の目に続いている。

 取り敢えず眼球を戻そうと手を伸ばした瞬間、また見たくない光景を目の当たりにしてしまった。

 俺の手は…腐っていて所々で皮膚が変色し、剥がれていた。恐ろしく肌の色が悪く、起きてみると俺の腹には刺し傷が生々しく残っていた。

 俺は…死んだ後何らかの力によって生き返ったのだろうか?そんな馬鹿な話があってたまるか!こんな姿になってまで生きたくはない!!そ、そーだ、これは何かの間違いだ。そーだろ?

 「だ…誰か…助けて…」

 俺は救いを求めるように外に出た。すると複数の人間が俺を凝視し、次の瞬間。

 「魔物だ!殺せ!!」

 とか言いながら攻撃して来た。

 「違う!俺は魔物なんかじゃない!!」

 攻撃されながら何度も言うが町の人達の攻撃が止まる事無く、俺はその現実から逃れるように1人の男に手を伸ばして助けを求めた。

 「うわぁ!汚ぇ!!」

 汚い、そう言われて改めて自分の手を眺めると、自分でもそうだと思える程汚らしく腐っていて…こんなの嫌だ!こんなの俺は信じない!

 町から走って出た俺を人間は執拗に追いかけて来る、走った衝撃で右の眼球は再び飛び出した。

 怖い、何で?俺…誰?何?怖い!怖い…誰か助けて…。

 もう捕まって、退治でも何でもされた方が良いのかも知れない。そう諦めかけた時、横からスッと現れた手が俺の手をギュっと握った。見ると隣で走るのは派手なアフロの骸骨で、その骸骨は俺を樹海に非難させてくれた。

 汚いと振り払われた俺の手を迷う事もなくしっかりと握ってくれた骸骨、それに俺の事情も何となく分かってくれているようだった。“奪う者”とか“魔石”だとか聞いた事あるような、ないような話をしてくれたけど、そんなのはこの際どーだって良い。俺、この骸骨…じゃなくて、ガイコツンとならこんな姿でも生きていける様な気がしたんだ。


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