未知なる職業
少し、眠っていたと思う。
ピヨが戻ってくる時には寝た振りをしようと思っていたんだけど、普通に寝てしまっていて、目が覚めると目の前にピヨがいた。その表情は…かなり険しい。
少し離れた所にはドラゴンがいて、アンさんによりなにか…躾?の授業中だった。
「おはようございます!」
相当機嫌が悪いピヨは、俺が目を開けると強めの口調で挨拶して来た。だから返事をしようと起き上がると、ドラゴンに「待て」と合図を出したアンさんが駆け寄ってきて、
「キリクン起きて大丈夫なの?」
俺ってまだキリクンって呼ばれてたの!?
じゃない。
「蘇りだからね。それより、来てくれてありがとう」
えっと、ドラゴンの事を頼みたかった訳だけど、なんか既にって感じだし…抱き上げる時に逆鱗がーって伝えようと思ってたんだけど、ドラゴン使いのアンさんにとっては当たり前な事だろうし…何か他に伝えたい事、伝えたい事…説明したい事ならあるかな。
「えっと、この傷は俺が無理に抱き上げようとした時に逆鱗?に腕が当たっちゃって、それで引っかかれたんだよ。だから、ドラゴンが悪いんじゃないから」
主にピヨに向かって説明しながら手を振ってみると、微妙に皮膚が引つれる感覚がして、視線を向けると傷が少し開いていた。
痛みはないけど、感覚が完全になくなった訳ではなさそうだ。
「あー、動かしちゃ駄目だよ。今は龍の抜け殻も切らしちゃってるんだから」
あ、切らしちゃってるのか…もし持っているなら作業員の怪我を治してもらおうと思ったのに。
「意外と大丈夫だから心配要らないよ。それで、あのドラゴンの事なんだけど」
詳しい事を聞こうと思って質問を考えている間、何を聞かれるのかは大体予想していたらしいアンさんからの説明が始まった。
「生後1ヶ月程かな?完全に飛べない獣型ドラゴンで、男の子だよ」
男の子と言う情報よりも大事な事があるんじゃないの?え、先に性別なの?
「主食は?後、親が近くにいないのはどうして?」
それに、獣型ドラゴンって結構珍しいと思うんだけど、とんでもないレア種って訳じゃないんだよね?
「獣系の男の子は独り立ちが早いの。餌はコレだよ」
と、アンさんは大きな袋を見せてくる。それには「徳用ドラゴンの餌」と書かれていた。そんなモノが売っているのか…知らなかった…。
「肉食とか、草食とか、そう言う答えが聞きたかったんだけど…それと、レア種なの?」
徳用ドラゴンの餌ってのが売り出されている時点でレア種っぽくはないんだけど。
「肉より虫の方が好きみたい。主食が虫って事は肉食になるのかな?獣型のドラゴンって一見普通の魔物に見えるでしょ?だから知られてないだけで翼のあるタイプよりも個体数はいるんだよ~」
虫が主食って事は、肉食になるんじゃないだろうか…それより安心したよ~、まさか全くレア種じゃないとは。
しかし、やっぱり専門職なんだなぁ、分からなかった事が次々と判明して行く。
なら最後に頼みたい事が1つ。引き受けてくれたら良いんだけど。
「ね、ちょっと良いかな?ネイルと、ジョウ。どっちが良いと思う?」
何の話!?
「え?」
「この子、爪が綺麗でしょ?だからネイルが良いかな?でもでもここは採掘場だから、出会った場所を記念してジョウ…ね、どっちが良いと思う?」
名前?え?じゃあもう既に引き受けてくれるつもりで?
良かった…作業員に怪我させちゃってるし、アンさんが引き受けてくれないと狩るか“魔石”に封じるかしか選択肢がなかったんだ。
良かった…本当に良かった。
「男の子だし、ジョウの方が良いんじゃないかな」
ニコリと笑顔のアンさんは、ドラゴンの首にジョウと書いた首輪を付けようとしている。もちろん首には逆鱗があるから、途端にドラゴンは低い唸り声を上げ始めた。なのにアンさんは怯む事無く、と言うより手馴れた様子で意図も簡単に首輪の装着に成功した。そして不思議な事に、ドラゴンは首を傾げているものの大人しくなったのだ。
「逆鱗ガードだよ。これで首に触っても平気だからね」
そんな物があったのか!?
未知なる職業、ドラゴン使い…。




