表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディスペル  作者: SIN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/122

バレンタイン

 “黒き悪魔”の欠片を持っている事を皆に言い出せないまま時は流れ、そろそろ俺は樹海にでも篭って2つの欠片から“黒き悪魔”の復活儀式をしようかなぁと考え中だ。

 外泊の理由をハクシャクンにどう説明しよう?外泊、だけでは済まなくなる理由をどう言おう?

 「ハクシャクン様~これを受け取って下さい」

 いつものように広間で寛いでいると、そう言って尋ねて来る女の人が今日はやけに沢山いた。

 女の人達は皆綺麗に飾った箱を持って来ていて、ハクシャクンに手渡していき、オチムシャンにもそー言った女の人が尋ねて来て…時々ゾンビンやフラケシュンも貰っていた。

 俺とミイランに何もないのはどうしてだろう?

 「何が入ってんの?」

 俺の隣で箱を開けたゾンビンに尋ね、箱の中身を覗き見ると、そこにはチョコが入っていた。ハート型のチョコには“ゾンビンLOVE”と書かれていて…知ってる、LOVEって愛って意味でしょ?って事は…愛の告白じゃん!!え?じゃー皆は今日一斉に告白されてんの?

 「はぁ…お返しが大変だねぇ」

 貰ったチョコの山を前にハクシャクンが溜息を吐いた。その表情は本当に困った風な感じで…まぁこれだけ一斉に告白されれば困るよね。

 「ガイコツン、この様子じゃ分かってないね?」

 「ん?何かあるんでござるか?」

 「あ、皆も分からなかった?」

 ハクシャクンの言葉に皆も首を傾げ、ハクシャクンはゴホンと咳払いをした後、

 「今日はバレンタインなんだよ」

 と、人差し指を立てて説明してくれた。

 今日はバレンタインと言う日で、女の子から男の子にチョコを渡して告白する日なんだと。で、1ヵ月後にあるホワイトデーに貰った女の子にお返しをしなきゃならない事も。

 「愛のお返し?」

 「まぁ飴玉とかそー言うので良いと思うよ?」

 ゾンビンやオチムシャン、フラケシュンが“お返し”についてハクシャクンに助言を求めている中、俺は自室に戻って来ていた。

 分かるよ?うん、分かるんだけど…何か…除け者だよね。

 どうして俺は骸骨なんだろう?

 皆はもっと早い段階で蘇れたのに、何で俺だけ骸骨なんだろう。

 別に告白されなかったから拗ねてるとかじゃないよ?ただ…時々話しに入っていけないんだ。

 ハロウィンの時から徐々に皆の体に回復の兆候って言うのかな、そんなのが見られるようになってさ、ハクシャクンは時々身体測定、とか言って皆の体の様子を見て記録してるんだ。もちろん、俺にはそんな兆候も何もなくて、体重測定の間は部屋に篭ってる。

 俺がいない方が皆も気を使わないだろうし良いかなって思って始めたんだけど、ここ最近は部屋に篭りっぱなしなんだ。

 回復していく体というのは、酷く痒いらしいね。で、皆がその痒みにどう対処すればいいのか、なんて言うのがここ最近の会話内容なんだからしょうがない。

 明日からは食事の時間も広間に行かないでいようかな?どうせ食べれないんだから、いかなくたって誰も気にしないだろう。

 部屋に篭ってる時間が増えたんだから数日の外泊位じゃ気付かれない可能性だってあるよね。何回かそう言う外泊を続けていけば、例え昇天してたって皆は気付かないかも。

 表情も何もないこんな骸骨、無理にでも明るくしなきゃ、話さなきゃ…忘れられる。

 「しっかりしろ、明るさだけだろ?俺のとりえは…」

 今まで何十回も自分に言い聞かせてきた言葉、でも今だけはそう呟いてみても元気にはなれなかった。

 こんな骸骨を誰が愛する?せめて明るく振舞わないとやってられない。

 「こんな骸骨…一体誰が…」

 止めた。口にすると余計落ち込むような気がする。

 俺は魔石に封じている3人の友達を同時に呼び出すと、生前の俺はどんな顔をしていたのかを聞いていた。でもいまいちパッとしないから似顔絵を描いてもらったんだけど…これ、似顔絵…だよね?人間かどうかも危うい容姿を?!それともこの3人に絵心がなかったのか…後者だと言う事にして、改めて似顔絵らしき絵を見ると、俺の目は黒くて大きかったらしく、左顎には小さなホクロが1つあったようで、髪は赤色だったらしい。

 今の俺には何もない。皮膚も、髪も、ホクロなんか何処にある?今あるのは骨だけだ!なんだよ、これで人なのかよ!!クソ…。

 「有難う」

 3人が魔石に戻り、改めて“黒き悪魔”を封じた2つの魔石を手にとって眺めた。

 コイツは俺を知っているようだった。

 蘇って欲しい者、確かにそう言ってた。

 「…行こう」

 俺は部屋を出ると、ハクシャクン達には何も告げないまま樹海に向かって歩いていた。“黒き悪魔”を1つに戻してどうする?分からない。でも、聞きたい事がある。俺と“黒き悪魔”の関係について…何故俺を知っていたのか、何故俺を蘇って欲しい者だと言ったのか。

 「探しましてよ、ガイコツン」

 出発から数分、ハクシャクンの屋敷はもう見えなくなっていたけど、何となく出鼻を挫かれた俺は見上げた先にいたエンゼルンを恨めしく思いつつ眺めた。

 「今日はバレンタインですのよ?聖水入りのチョコを作りましたの、差し上げますわ」

 ハァ、やっとチョコがもらえたと思ったのに毒入りとは…でも今昇天してる場合じゃないから!

 エンゼルンにもらったチョコを投げ捨て、樹海へ再出発しながら、着いて来るかな?と思って振り返ってみたんだけど、エンゼルンはハクシャクンの屋敷の方へ飛んでいる。

 今から皆にも聖水入りのチョコを渡しに行くんだ…。

 何となく虚しくなった俺は、さっき投げ捨てたエンゼルンのチョコを拾い上げてから樹海を目指した。いちいちチョコを拾った理由は…保険だったんだと思う。

 もうハクシャクンの屋敷に帰るつもりなんかないし、そもそも“黒き悪魔”を復活させて色々聞き出した後“生かされる”なんて思ってない。むしろ“生きたい”とも思ってないのかも知れない。謎が全て解けたんなら思い残す事なんか…リル達が会いに来てくれるのを待つ。それ以外には本当に何もない。けど、それを待つつもりなら樹海には行かない。

 一人前になったリル達を見るのは楽しみだよ?楽しみだったよ。

 何も教えられなかった不甲斐ない骸骨。偉そうにしていただけの骸骨。なんの影響力もなかっただろう俺と言う存在が、一人前になる頃のリル達の記憶に残る事が出来ているのだろうか?

 いや、そもそも生きている事が異常なんだから楽しみなんて贅沢だ。疑問に思っている事の答えを全て知る、それだけでも普通は出来ないんだから蘇ってからの出来事はオマケ。そんなオマケの部分で新しく楽しみや謎を作るなんて、貪欲過ぎる。だから、その保険。運悪くまた“黒き悪魔”に勝ってしまった後、コレを食べれば確実に昇天出来る。

 歩き続ける事2日で懐かしいと感じる樹海に辿り着く。そう思うって事は生前の記憶が少しは残っていると言う事なのだろうか?そう言えば以前樹海に入った時、幻覚の様な何かが見えた。何かを探している自分の手を見た…肉がちゃんと付いてた自分の手を見た。

 もしかしたらまた見えるかも知れないと自分の白骨化した手を眺めてしばらく、何も見えない。

 今日は何も見えないのかと空を見上げてみると、薄くぼやけた天使のような影が…。

 あ、消えた。

 また見えないかと空を見上げていたが結局何も見えず、俺は樹海奥の山を目指した。

 山の麓に着いた所で“黒き悪魔”を封じた魔石を取り出して手に取る、そして意味なく深呼吸を繰り返し、

 「出て来い」

 呟いた。

 封じたのは俺なんだから呼べば出て来るだろうと思ってたんだけど、どうやらその勘は当たったらしく、2個別々に封じた“黒き悪魔”は個々の魔石から煙のように出て来て、やがて一塊になって形を成した。

 「…久しぶり…ですね」

 遠慮がちに“黒き悪魔”は挨拶した。

 いつから見ての久しぶりなのかは分からないけど、取り敢えず久しぶりだねと返事した。

 「えっと…聞きたい事があるんだけど、俺とあんたってどんな関係だった?」

 いきなり本題に入った俺に“黒き悪魔”は、

 「そうですね…」

 と、一呼吸置いた。

 “黒き悪魔”はもっと恐ろしい奴だと思ってたから、“よくも封じてくれたな!!”ってスグに攻撃されるんだろうなって思ってたんだ…なのに、どうしてそんな優しげな瞳を向けてくるんだよ。

 「今はガイコツン、でしたね?俺は貴方がキリクと呼ばれていた頃の友…です」

 キリクは確かに生前の名前、だけど友?

 「じゃー何で奪う者を殺してたんだよ。どうして開封されたんだよ。後、あんたの名前は?」

 始めにルシファーと名乗った“黒き悪魔”は、開封は自然となった、とか言う不思議な説明をした後。

 「蘇ってくれていて、嬉しかったです」

 と、綺麗に微笑んだ。

 どうやら質問に答える気はないらしい。

 なんなんだよ、この雰囲気は…確かに容姿は黒いし、鎌を構えたら死神が来たって思う位に絶望的な怖さがあるんだけど、こうして喋ってると…あ、昔は天使だったんだな~って。なんか、こぅ…暖かい気分になる。

 いや、それよりも重大なのは今、ルシファーが言った言葉だ。蘇ってくれていて嬉しかった…蘇って欲しい者が俺だったって完璧な証拠だ。

 ゾンビンやハクシャクン達を倒したのはルシファーで、そのルシファーは俺を蘇らせる為に大量の奪う者を倒している。

 皆の敵の大元は俺だった…。

 なのに、どうして皆は戦いの後も俺に対する態度を変えなかったんだろう?ルシファーが誰を蘇らせたかったのかは、あの時には既に予想が付いていたんだから“お前のせいだ”と攻める事だって出来たんだ。なのに、樹海に残ると言った俺に皆は“待ってる”と言ってくれた。ゾンビンなんて、俺が樹海に残るなら自分も、とか言い出しちゃってさ…それで…そっか、ゾンビンを屋敷に戻すにはどうしたら良いのかって考えて、それで屋敷に戻ったんだ。

 俺と一緒にいたいから、そう言ってくれたゾンビンだけど、今は皆と一緒にいた方が良いだろう。回復が進む事で体に現れる変化を相談したり、色んなイベント事を楽しんだり。

 「…ルシファー、もう誰も殺さないって、約束してくれるか?」

 「生前の貴方にも同じ事を言われました」

 懐かしそうに目を細めたルシファーは続けて、

 「俺はまた、向かって来る奴は殺します。と、答えておきます」

 と言って、楽しそうに笑った。

 生前の自分がどんな人物かなんて全く分からないんだけど、今の話を聞く限りではルシファーが人を倒して行く事を良しとはしてなかったみたいだ。なのに奪う者を倒しまくっていたと言うんだから俺が何を言った所でルシファーは聞き入れないのだろう。

 全然知らない魔物なら、魔法石の材料にすると言う最も安全な選択肢があるのに、そうじゃないから出来ない。なら開封?って思うのに、そうするとまた奪う者を倒しに行ってしまうかも知れない。だったら俺が所持したままでーとか言っても俺が蘇った時、ルシファーは自然と開封していたとか言ってたからそれもまた安全ではない。

 どうしたら良いのか…答えは多分1つしかない。

 「俺と…契約しよ?」

 とんでもない死に損ないだし、骸骨だけど、それでも生前は友達だったんだよな?それに俺の事蘇らせたかったんだよな?だったら少し位は無茶な願いをしたって良いだろ?俺はもうルシファーに罪を重ねて欲しくないって思うし…俺にとって最大の動く理由になると思うんだ。

 「キリク、ルシファーとなら契約はいらないわよ」

 魔石から顔だけ出したペペが不思議な事を言った。

 契約はいらない?もう既に俺と契約してたのかな?それなら奪う者を倒しまくってたと言う説明をどうする?それに、皆の魔石にも封じられたって事が可笑しい。

 「俺は…そうですね……普通の魔物とは違いますから、と言う事にしておきましょう」

 なにそれ、絶対嘘でしょ。なに?そう言う事にしときましょうって!

 「そのうち説明するわよ、そのうち」

 ペペまでルシファーの説明で今は納得しろーみたいな事言ってるし。

 って事は、生前の俺とルシファーとの間になにか約束事?みたいなのはあったのかな?それをペペも見てたかなにかで事情を知ってる…もしかして、契約1歩手前で何かがあって俺が死んだ?最後の契約作業が、例えば魔石から呼び出す、とかならもう既にそれは成された後だから既に契約しましたって感じ?

 無理矢理過ぎるよね…。

 ならそのうち説明してくれるのを待てば良いの?

 「今日から友達…で良いんだよね?でも、皆に紹介出来るのは、まだきっと当分先になると思う」

 もしかしたら永遠にないかも知れない程。

 「貴方の友、その事実だけで十分です」

 多くの奪う者が俺のせいでルシファーに倒された。俺のせいでルシファーは多くの奪う者を倒さなければならなかった。その償いはどうしたら良いんだろう?

 蘇った皆にはこれからその方法を考えて、少しずつでも許してもらおうとか生易しい事が言える。だけど、蘇らなかった奪う者には?

 誰もが納得するのは、きっとルシファーを魔法石の材料にして、俺が聖水を飲んで昇天する事だろう。そうした方が良いとは自分でも思うんだけど、同時に償わなきゃならないとも思うからまだエンゼルンから貰った唯一のチョコは食べられない。

 ルシファーを魔石に戻し、その場に寝転がると隣に石が見えて、何故かそれが怖い。

 この石は俺が蘇った時に横にあった石に違いなくて、きっと頭にある陥没とピタリと合う形をしていると思う…。

 ルシファーがこの石で俺を殴って殺した?にしては石は大き過ぎるし、ルシファーならそのまま鎌を使うだろう。そもそもルシファーが俺を殺したんなら生前の友って事にはならない。蘇らせたいと言う言葉から考えると…俺はルシファー以外の何者かに殺された?それとも木から落ちて、そのまま頭から落下した挙句、たまたま下にあった石で頭を強打…なんと言う間抜け過ぎる最後だよ…。

 戻りたいな…。

 考えたってただの現実逃避になるだけなのに、それでも戻りたいと願った。

 もし、俺が死ぬ直前にまで戻る事が出来たら、絶対に蘇らない方法を考えただろう。ルシファーが奪う者を1人だって殺す事がないように肉体が残るような最後は迎えなかった筈だ。そうすれば皆だって倒されずに済んでいた…。

 「…」

 屋敷に帰って、素直に謝ろう。それからどうするのか、どうしたいのかを皆に問おう。聖水を飲めと言うならガブ飲みするし、全身の骨を折れと言うならパラシュートなしで高度何千メートルから飛び降りる。

 「…戻ろう」

 何を言われるのか分からないから怖くて、全然足が前に出ない帰宅は1日も掛けてやっと樹海の入り口まで戻って来た位のスローペースだ。

 やっぱりもう少し樹海の中で決意を固めてから、とか逃げの思考が脳を支配した時、思いがけない光景が目に飛び込んできた。

 飛び出した眼球で視野の広い子と、頭に刺さった弓がチャームポイントの2人が、手を振りながらこっちに向かって走って来ている。

 「やっぱしここにいる~!も~心配したんだからな!」

 と、ゾンビンは俺をボカスカ殴りながら言い、

 「全く…心配かけるのは感心しないでござる!」

 と、オチムシャンはホッとした風に息を付いた。

 どうして?

 俺のせいで倒される事になったんだよ?なのにどうして心配なんかするんだよ…可笑しいだろ?!お前のせいだって怒れよ!

 「今度帰郷したくなったらちゃんと言ってから行けよ?」

 帰郷じゃないから!

 「ル…“黒き悪魔”が誰を蘇らせたかったのか、それはもう知ってるだろ?俺だよ。俺を蘇らせる手がかりを掴もうと“黒き悪魔”は皆を…殺した。心配する暇があるなら恨んでくれよ!」

 居た堪れなくなり、2人から視線を外して俯くと、俺の目にしゃがみ込んだ姿勢で見上げてくるゾンビンの姿が映った。目だけ伸ばしてくれば俺の顔なんか確認できるくせに、わざわざしゃがみ込んで俺に姿を見せてくる理由は、きっと物凄く怒っているからだ。今まで見た事がない程ゾンビンの人相は悪い。

 「説明すんのも面倒臭ぇから一言で済ませるけど、それで?」

 それで?って、なんだよ。

 「待つでござる!」

 俺とゾンビンの間に、結構無理矢理入ってきたオチムシャンは、待てと言いながらゾンビンを一旦立たせ、改めて俺の前に立った。

 「拙者は自分の意思で樹海に赴き、そこで“黒き悪魔”に挑んで負けた。フラケシュン殿とミイラン殿は、時代は違えど王の命令で“黒き悪魔”を討伐しようとして負けた。少なくとも拙者らにはガイコツンの存在は関係なかった故に恨む理由もないでござる」

優しげな表情で、何かを諭すようにゆっくりとした口調のオチムシャンは、言い終わると俺の肩をトントンと子供をあやす様に叩き始めた。そうすると今度はゾンビンが俺達の間に割って入り、

 「俺にだって“黒き悪魔”に挑もうとした根拠と、勝てると言う自信があった筈だ。負けたのは自分の力不足以外のなにもんでもない」

 と。

 そんな言い方をされると、もしかしたら俺の存在は関係ないのかな?とか思えてくるからやめて欲しい。ルシファーが戦う理由は俺を蘇らせる為…と、もう1つ…向かって来る奴は殺す……オチムシャンが言うように、本当に俺は関係ないのか?

 「内に何を秘めていようが、一度戦いが始まれば己の力のみが真実でござろう?」

戦う理由は1人1人が持っているもの、それがぶつかった時に戦いが起きる。戦闘が始まればただ勝つか、負けるか、それだけしかない。けど、ルシファーの戦う理由が…駄目だ、さっきから考えがループしかしてない。

 「俺は…どうしたら良いんだろう…」

 「言ってんだろ?次に帰郷したくなったら言ってから行けって」

 いや…帰郷じゃないんだけど…。

 「さ、帰るでござるよ」

 そうだ、帰ろう。皆に謝ろうと思って元々帰るつもりだったんだ、1人じゃ勇気が出なかったけど、ゾンビンとオチムシャンが一緒なら、屋敷まで帰れる。

 こうして歩き始めて数日、屋敷に帰り付くと、まずミイランが出て来て俺の話も聞かずにカツラをシャンデリアにかけた。俺はシャンデリアまで手が届かないから、そうされるともうどうしようもない。そしてフラケシュンが来て1時間程みっちり質問攻めに合った。何処にいた?とか、何しに行った?とか、何故1人で行った?とか。取り敢えず細かくて、スッカリ謝るタイミングを見失ってしまった。

 どうして良いのかも分からずに広間にいると、ハクシャクンが仕事から帰って来て、何も言わないままにシャンデリアからカツラを救ってくれた。

 「ガイコツン、お帰り」

 満面の笑顔を向けられ、心苦しくて、

 「ただいま…それと、謝りたくて…ごめんなさい…」

 と、頭を下げた。

 「…ガイコツン?顔を上げて」

 ハクシャクンの手がソッと伸びてきて、少し冷たいその両手で俺の肩をしっかりと掴んだ。顔を上げて、と言いつつ無理矢理に顔を上げさせるその行動は、少し怒っているからだと思う。

 「俺の存在が……」

 「ね、俺達には生前の記憶はないよね?それと“黒き悪魔”に戦いを挑んで負けた事。考えてみて、俺達は何故“黒き悪魔”に戦いを挑んだと思う?」

 考えてみてって言われたって…フラケシュンとミイランは王様の命令で討伐に行って、オチムシャンは…倒したい奴がいるとか言ってルシファーに戦いを挑んだんだ。

 ゾンビンとハクシャクンの理由は、知らない。考えてみろって言われても想像さえつかないよ…。

 「物凄く酷い理由だったかもよ?もしかしたらガイコツンを殺そうとしていたかもね」

 ハクシャクンが俺を?それ時代が可笑しくない?それとも倒れている俺の体を粉々に、とか?

 なんでそんな事…ハクシャクンはいつも優しくて、大人で…いつだって皆の事気にかけてて。酷い事を…戦う理由になんかしないよ!しないもん!

 「…少し言い過ぎちゃったかな?俺が言いたいのはね、覚えてない事で謝られたってどうしょうもないって事と、ガイコツンを嫌いになんかなれないって事だよ」

 ハクシャクンが爽やかな笑顔で俺から手を離すと、今度はミイランが俺のカバンを掴み取り、

 「我からも1つ。ガイコツン、それはエンゼルンが配り歩いたチョコであろう?」

 と、中からチョコを取り出した。

 確かにそれはあの日に貰ったチョコで、保険の為にズット持っていた物。だけど…大丈夫、今はソレを食べる気は少しだってない。

 だって、嫌われてなかったから…ゾンビンとオチムシャンだけじゃなくてハクシャクンも、ミンランも。無言だけどフラケシュンも俺を恨みの目で見てないから…だから食べないよ。でも、保管はしようとは思ってる。

 バレンタインデーに何か貰ったらホワイトデーに何か返さなきゃなんないんでしょ?でも、何を返せば良いのか分からないから、だったらコレを返そうと思って。

まぁ、覚えてたらね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ