親睦会
今日、町の人達とお城の新年会に招待されたからってハクシャクンは出て行った。
ミイランもハクシャクンに着いて出て行くとフラケシュンまで行っちゃって、ゾンビンもオチムシャンも行ってしまい、屋敷には今俺しかいない。
俺だけが留守番している理由は単純に飲食出来ない体だからってのもあるんだけど、お城には魔石を持って行ってはいけないって言う決まりがあるとか。で、俺は魔石の見張りと、町に魔物が入って来ないかを見張る係りの人って訳。
と言っても町の入り口には町人が何人か立ってるし、もう何ヶ月も前から町の近くで魔物の姿は見てない。だから今日も大丈夫だろう。
この1人きりの自由時間を利用して、皆の友達とも仲良くなろっかな~。
皆から預かっていた魔石をテーブルの上に並べて眺めてみたって、ものの見事に全部薄い赤色に光っている。まぁ、俺の友じゃないから当たり前なんだろうケド。
アレ?そう言えばゾンビンが封じた方の“黒き悪魔”は今青色に光ってる…もしかして封じた人にだけ青く光るって概念は間違ってるのかなぁ?それとも、生前の俺と“黒き悪魔”の間に契約的ななにかがあった…とか?
考えたって何も分からないんだし、一旦置いとこう。
ならばと自分の友達が封じられている3つの魔石を手にとり、まだ仲良くなりきれてないのに、それでも青く光る魔石を眺めた。
よし、今日はとことん話して仲良くなろう!
「…」
とか言ってさ、実際それが出来るんだったら、とーっくの昔にしてるっての!
自分の友達って言ってもさ、まさか契約した人間が骸骨になるなんて思わないじゃん?前に呼び出した時、3人共複雑そうな顔してさ、大掃除した時なんか俺に何も言わないで3人共魔石の中に帰ってたし…。
開封、して欲しいのかな?だったら何で俺に言わないの?顔…合わせるのも嫌だ、とか?だったら何で青色に光ってんだよ!ここの皆みたいに赤く光って俺を拒絶すれば良いじゃん!そしたら俺だって…開封する1歩を踏み出せるのに。
いやいや、そんな事を思ってる時点で仲良くなんか出来ない。青く光ってくれてるんだから、それが3人の答えなんだ。
自分の魔石もテーブルに並べ、イスに座る。
「今晩は~俺ガイコツンって言うんだ」
取り敢えず声をかけてみる事から始めたが、無反応。
そりゃそうなんだけどね、魔石の中にいても会話って聞こえてるみたいだし…相槌のない会話と思えば…相槌すらないなら会話ではないような?
えっと、えっと。
「ねぇ、生きてた頃のゾンビンってどんな人だった?ハクシャクンは前からあんなに優しいの?フラケシュンはズット無愛想だった?オチムシャンは、本当は俺達みたいに蘇りたくなかったんでしょ?ミイランもどんな人だったのかなぁ?…俺は…どんな人だったんだろう…」
あ~何か暗くなってきちゃったな…1人で留守番って寂しい状況だからね、仕方ないって言えばそうかなぁ?まぁ激しく独り言だけどさ。
ハァー、止め止め!真面目に見張りの仕事しよっと。
そう思って椅子から立ち上がろうとテーブルに手を…
「うゎっ!!」
力加減を誤ったせいか、はたまた手を着く場所が悪かったのか、テーブルがクラッシュした。
俺は肩の骨がちょっとずれただけで大丈夫だったんだけど、魔石は…皆のがごっちゃになって誰の魔石かどうか…アハハ、わかんなーい。
えっと、とりあえず青く光ってるこの5個は俺のだ。で、後8個…同じような形の魔石と、同じように赤く光る魔石…どーしよう…こんな事になってるって知られたらきっと皆怒る。自分の友達を粗末に扱かったって一生口聞いてもらえないかも知れない。
じっくりと魔石を観察する事数分、1個だけ特徴的な魔石を発見した。
それは表面が少し傷付いてて、手に取るとそのガサガサ感に覚えが…自分のじゃないのにこんなガッチリ掴んだ手応えがあるのは…フラケシュンの友達だ。
「フラケシュンの友達だよね?」
確認を取ろうと思っても果てしなく無反応、でもこれは自信を持ってフラケシュンの友達だと言える。
後問題なのが残り全部…7個もあるよぉ~う~…そうだ!皆の友達の事は友に聞くのが良いかも知れないね!もしかしたら結構仲良しさんかも知れないし。
って、事だから頼んだよ!
「出て来て」
青く光る5個の魔石のうち、黒き悪魔が封じられているのを一旦テーブルの上に置き直してそう声を出すと、手にとった3個の魔石からそれぞれ俺の友が出て来た。
3人は俺が何も言わないうちから自分が何故呼び出されたのかを分かってるみたいに持ち主不明の7個の魔石を食い入るように見ていた。
「分かる?」
と聞くが、3人は尚も7個の魔石を眺めていて…邪魔しちゃ悪いし黙っとこう。
「キリク御免…俺達にもさっぱりだ」
しばらくして諦めたように1人の友が俺にそう報告した。
今、俺の事キリクって呼んだ?もしかしてそれが生前の名前?
皆は友達と話す時、生前の名前で呼ばれてるけど、俺は呼ばれた事なかった。そっかぁ俺、キリクって言うのかぁ~。
「キリクは俺の名前で、君は?」
俺は、キリクと呼んだ半獣の友に聞いた。
「俺は…ポチ」
ポチィ?!
「俺はピヨ」
確かに鳥みたいな翼はあるけど!
「私はペペよ」
ペペってどうしてそんな名前に??
いや、名前批判なんかしてたら仲良くも何もない。
問題なのは蘇ってもう随分経ってんのに、自分の友達の名前を今知ったって事…それってもしかして俺からこの3人に対して壁を作ってたから?
仲良くなりたい、そう思ってるのにどうして壁なんか出来るんだろう、色々聞きたい事があるのに何も聞けなかったのは、なんでだろう。
青く光ってくれていた3人に、どうして赤く光って拒絶しろ、なんて思えたんだろう。
「ねぇ、折角だし聞いて良い?俺って…」
いつ頃死んだの?そう聞こうと思って止めた。
本当に聞きたいのはそんな事じゃなくて、もっと違う事…でもそれを直接聞くのが怖くて…今日まで伸ばし伸ばしにしてきたんだ。今、この時こそちゃんと聞かなきゃ!
「俺…こんな姿になってるけど…これまで通り友達でいてくれる?」
3人は顔を見合わせ、一斉に頭を殴って来た。だからカツラがズレて陥没した頭蓋がむき出しになって…。
「俺達はお前が死んで腐って、ボロボロになんのをズーットズーット見て来たんだ」
「蘇ってくれるのを心待ちにしながらな」
「骨だけになって、逆に綺麗じゃない。私達はこれからもズット一緒よ」
3人がそう言って笑ってくれたから、俺はもう嬉しくて…何もない筈の眼から涙が流れ落ちた。
“ありがとう”
「ガイコツンたっだいまー」
しばらくしてゾンビンが戻って来て、7個の魔石を前に沈黙していた俺達を不思議そうに見ていた。
「ゾンビン…お帰り。皆は?」
ハハハと愛想笑いを浮かべ、ゴッチャになった魔石を見せないようにテーブルを隠しながら手を振ると、ゾンビンは大きく首を傾げながら近付いて来た。
「カツラ、ズレてるよ?」
と、ズレたままになっていたカツラを直してくれ、そのついでとばかりにテーブルの上に視線を…右目を伸ばしていた。
「魔石しかない、よね?どーかしたのん?」
なにかとんでもない物を隠し持っていると思われたようだ。
「実は…さ、皆の友達が混ざっちゃって…誰が誰のか全く…」
ゾンビンは“なるほど~”と相槌をうち、
「俺のはーコレと、コレ」
と、ゾンビンに向かって青く光った2個の魔石をポケットの中にしまった。と、しても後5個だ…。
「皆は?まだ帰って来ないのん?」
「あ…うん。実は俺って、城に入れてもらえなかったんだ~…」
ハハハと笑いながらゾンビンは言ったのに、その後は酷く辛そうに目を伏せてしまった。
そうか…今日はパーティー、飲食する場所にゾンビンの容姿は普通の人には厳しかったんだ…。
でもさ!招待を受けたのは俺達なのに、どうして入れてくれないんだよ!ゾンビンは出かける時、凄く、すっごく楽しそうに笑ってたんだからな!なのに、それなのに…こんな辛そうな顔、見たくないよ。
「ねぇゾンビン、一緒にこの魔石が誰のか調べてくれると嬉しいんだけどな…」
俺は新年会がどんな物かは知らないし、飲食するって事なら付き合えないけど、それでも帰ってきたゾンビンを楽しませてあげたいと思う。けど、その前に大事な事があるから、まずはそっちを手伝ってもらおうかな。
「別に分けなくてもそーやって置いてれば皆自分の持ってくと思うんだけど?」
確かにこのまま置いてれば皆は自分の友達を持って部屋に戻って行くんだろう。
でも、物凄い怒られるんだろうけど、ちゃんと説明しなきゃ。魔石をゴッチャにしたんだ…テーブルのクラッシュと言うワイルドな手法で。
「ゴメン。皆の魔石…テーブルごとひっくり返って混ざったんだ…皆の友達なのに、ゴメン」
「わざとじゃないんでしょ?だったらしょうがないよ。俺、怒ってないよ?皆も絶対怒らないって」
顔を上げてニッコリと笑ってくれたゾンビンは、試しにと2つの魔石から友達を呼び出し、呼び出された友達2人はゾンビンと同じような眩しいばかりの笑顔で俺を快く許してくれた。
「うん、ありがとう!そうだ聞いてよ、俺の生前の名前キリクって言うんだって~」
たった今知ったばかりの自分の名前を披露すると、
「俺はエドって名前らしいよ」
と、ゾンビンも自己紹介してくれたんだけど、俺達はやっぱりガイコツンとゾンビンだね~と笑い合っていた。そうやってる間にミイランとフラケシュンが帰って来て、何も言わないままテーブルの上に置いていた魔石の中から自分の友を見付け出してポケットに入れた。
2人はそのまま部屋に戻ろうと足早に廊下に出て行こうとしたから、呼び止めて説明をする。
「あのさ…聞いて欲しいんだけど、実は皆の友達テーブル毎倒して混ざっちゃってたんだ…わざとじゃないんだ、でもゴメン」
頭を下げるとその拍子にカツラが取れて足元に落ちた。そのカツラを拾い上げたミイランは、
「我は怒ってはいないが、それでは気が済まんと言うならこうしよう」
と、いつものようにカツラを高い位置にあるシャンデリアに掛けてから手を振って部屋に戻って行き、フラケシュンは無言のままで、けど怒ってる感じとかじゃなくていつも通りで。
「ね?皆怒らないでしょ?」
ゾンビンは俺の背中をポンポンと叩きながら満面の笑顔を見せてくれた。




