表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女のために泣いた王子様  作者: あいみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

魔女の名前

 魔女がいました。


 200年も生きた魔女です。顔も手足もしわしわです。


 村の外れにある湖のほとりに建てられた小さな小屋。魔女はたった一人、そこで暮らしています。




 魔女は嫌われ者でした。


 人を食らい、生き血をすすり、気まぐれで村に厄災を振りかるからです。


 人々の苦しむ顔を見ては楽しんでいました。




 魔女は孤独でした。


 もう村に人はいません。子供を食べて、村人を苦しめて。

 みんな、とっくの昔に逃げてしまったのです。


 以来、寂れた村には誰も近寄りません。噂が広まったのです。


 あの村には人を食べる魔女がいる。誰も行ってはならない。

 村へと続く看板も壊されていました。


 魔女の犠牲を出さないためです。




 魔女は……独りぼっちでした。


 もういない家族の名前を呟いては、ただ静かに死を待ちます。


 「貴女が村の魔女か?」


 凛とした声。


 月夜に照らされる美しい髪。金色はこの世界でたった一人の王子様です。


 そして……魔女を殺せる唯一の存在です。


 魔女は返事をしませんでした。


 冷たい夜風に吹かれて、虚ろな目で王子様を見つめます。


 「すまない。すまない……」


 王子様は手に持っていた剣を落としました。乾いた音が響きます。


 魔女に駆け寄り、しわくちゃの手を強く握りました。


 「すまない。本当に。僕達のしたことは許されることではない」


 王子様は美しい涙を流しました。震える声で何度も謝罪を繰り返すのです。


 「200年もの間、独りにさせてすまなかった」


 微動だにしない魔女。


 「待たせてごめんね。フィーナ」


 それは……魔女の名前だったもの。誰にも呼ばれることのなくなった。


 魔女に……フィーナに優しく微笑んだ王子様は、甘い口付けを交わします。


 “魔女にかけられた呪い”を解く方法は一つだけ。


 魔女を愛する者からの口付け。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ