表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子  作者: つむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/21

17

王宮の一室。


冷えた空気が満ちる中、レオナルト・アシュレイは静かに国王を見つめていた。


「側妃を離宮へ移すべきです。」


低く、静かな声だった。しかし、それが命令であることは、その場にいた誰もが理解した。


国王は、苦々しい顔でため息をつく。


「お前は相変わらず冷たいな、レオナルト。」


「事実を申し上げているだけです。」


王妃であるセレスティーナを快く思わず、陰で“軽い嫌がらせ”を企てていた側妃——。本来ならば、許されるはずもない。だが、国王がかつて彼女を寵愛していたため、表立って処罰されることはなかった。


しかし、それも今日で終わる。


「セレスティーナに余計な負担をかける者を、私は王宮に置くつもりはありません。」


「側妃も悪気があったわけではないだろう。」


「“悪気がない”なら、何をしてもいいわけではありません。」


レオナルトは、ゆっくりと歩を進めた。


「私がこの件に干渉しなければ、次は何をするつもりでしたか? セレスティーナの立場を貶めるために、さらに策を弄するつもりだったのでは?」


「……お前は、セレスティーナをそこまで大切に思っているのか?」


国王が皮肉めいた口調で問う。


「当然です。」


即答だった。


「セレスティーナは、私の妃です。彼女に不要な苦痛を与える者は、誰であろうと排除します。」


国王は、レオナルトの黄金の瞳を見つめる。そこには、父である自分を恐れる様子も、説得する気配もなかった。


「……側妃には、しばらく離宮で静養させることにする。」


国王は、やむなく折れるように告げた。


「ご賢明な判断です。」


レオナルトは一礼し、ゆっくりと踵を返す。


——これで、セレスティーナに対する余計な負担はひとつ消えた。


王位交代の話を持ち出すつもりはない。


だが、国王にも、側妃にも、そして王宮の貴族たちにも、十分に理解させたはずだ。


セレスティーナ・エヴァンジェリンに対する不敬は、一切許さない、と。


王宮の空気が変わったのは、それから間もなくのことだった。


レオナルトの決定により、側妃が離宮へ「静養」することになった途端、それまで隠れてセレスティーナに書類仕事を押し付けていた官僚や貴族たちは、一斉に大人しくなった。


(……妙ね。)


セレスティーナ・エヴァンジェリンは、久しぶりに何の雑務も押し付けられない一日を迎え、少しばかりの違和感を覚えていた。


これまで当然のように回ってきていた不自然なほど面倒な案件が、ここ数日まったく届かない。側妃派閥に属する貴族たちからの嫌味も、ぱったりと消えた。


(何かあったのかしら?)


しかし、その疑問はすぐに薄れた。


仕事がないのなら、それはそれで構わない。


「——ええ、いいわね。とてもいいわ。」


セレスティーナは、ゆったりとした時間を噛みしめるように、お茶を口に含んだ。


彼女が座っているのは、王宮の奥庭に面したサロン。いつもなら書類に追われている時間に、こうしてのんびりと紅茶を楽しむことができるなんて、思ってもみなかった。


(たまには、こういう日があってもいいわよね。)


セレスティーナは、束の間の休息を心から楽しむことに決めた。


そのすぐ傍で、控えていたカイル・ブレイザーが「お前、全然知らねぇのかよ」と呆れた顔でため息をつくが、セレスティーナは気にしない。


こうして、何も知らないまま、セレスティーナは平穏な時間を満喫するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ