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現場までは涼介の覆面パトカーで向かった。車は住宅地へと入っていき一軒の平凡な2階建て住宅の前で停まった。家の前には黄色いテープが張られており制服警官が1人立っていた。涼介が警察手帳を見せるとその警官は会釈して横にどいた。よほど警察に知名度が高いのか民間人である博士も迷い無く会釈された。明らかに未成年である正晴は流石に訝しい目で見られたが何も言われなかった。


「ここからはスリッパに履き替えてくれ。」玄関に3足のスリッパが置いてあった。2人とも涼介の指示に従った。


「本当に僕も殺人現場に入っていいんですね?」

正晴はずっと思ってきたことを口にした。どうして博士は僕をこんなに事件に関わらせたいのだろう。


「嫌なのか?」


「そういう訳ではないですが...。探偵事務所に入ってまだ数時間しか経っていないような素人をなぜ事件現場に連れてくるのか不思議に思っただけです。」


「僕だって考えなしにやってる訳じゃ無い。」

とても真剣な表情だ。


「だけど今、教えることはできない。」


それだけ言うときびすを返して家の中へ上がっていった。

博士は何を考えているのだろう。まさかこの僕を自分の後継者にでもするつもりなのだろうか。

もやもやとした疑念を抱きながら博士の後についていった。


犯行現場は2階の寝室だった。部屋にはベッド、机、クローゼット、小さな本棚があった。窓から穏やかな午後の光が差し込んでおり殺人現場というにはあまりに素朴で平和に見えた。だがベッドのシーツに染みこんだ赤いシミがここで身の毛がよだつ凶行が行われたということをはっきりと示していた。


「皆、知っているだろうが松下の死亡推定時刻は真夜中の2時13分頃だ。」「松下」というのは被害者の松下遙香(まつしたはるか)のことだ。

「頭と胸にそれぞれ一発ずつ拳銃弾を撃ち込まれてる。寝込みを襲われた形だな。」


その後、銃声を聞いた近隣住民が警察に連絡し事件が発覚したが犯人は少なくとも現場付近では発見されなかった。ということを正晴は報告書で読んで知っていた。


「凶器に拳銃が用いられたのだとすると犯人は裏社会に関わっている人間でしょうか。」


「その可能性は高いな。だから俺たちもその類いの人間を容疑者に絞っている。」

意外なことに涼介の声には猜疑心や不信感は大して込められていないように感じられた。


「それに殺し方も残忍だ。よほど被害者に対する殺意が高かったんだろう。となると怨恨による殺人に一番線があるな。」と博士。


「そのくらいは分かっているさ。だがな松下の関係者リストを今作っているんだがどうも被害者は周囲から恨まれていたような人間ではないらしい。それに」

正晴の方を向く。

「前科もないし何かの犯罪に関わっていたとか犯罪者と知り合いだったという証拠もない。」


「となると無差別殺人でしょうか。」


「僕もそう考えたがそれにしてはやけに手が込んでいるように思える。それにさっきも言ったように犯人から強い殺意を感じられる。」


お読みいただきありがとうございます。

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