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「あなたが一体どのような事件を任されたのか具体的に教えてもらっても構いませんか。」
博士は正晴の顔をほんの少しの間だけ眺めてから口を開いた。
「そうだね、今から2年くらい前、ある夫婦が朝、自宅で遺体で発見された。被害者宅からは金品が全く無くなっており強盗だと判断された。その家には20歳の息子も住んでいたけど犯行時刻には散歩に行っていたらしい。第一発見者も彼だ。そして警察が近隣の住民に聞き取りをすると特に不審な人物を目撃してはいないらしい。さて、ここで君に質問だ。犯人は誰だと思う。」
「それは...。」ここは思ったことを率直に口にしよう。
「息子が犯人だと思います。一番両親に近づきやすい人物だったんだから。」
「鋭いね。結論から言うと君の言うとおりだった。気になったのは凶器に使われたのがその家にあった
包丁という点だ。強盗なら自前の武器を用意するはずだ。」
一呼吸置いて続ける。
「だから僕は息子が犯人の可能性が高いと警官に述べた。その後、僕の助言を盛り込んで尋問するとついに自らの犯行を自白したよ。」
博士が話を終えたところで窓を見上げた。もう太陽が西の地平線間近まで下がっている。
「面白い話をしてくださってありがとうございます。もう暗くなるので帰らせてもらいます。」
「お礼を言うのは僕の方がふさわしいよ。」
帰り際、会談を下る正晴の背中をドア越しに眺めながら博士が言った。
「正晴君は鋭い思考の持ち主みたいだし、できれば、できればの話ではあるけどここでアルバイトを
してみないかい。」
振り返る。
「考えておきます。」
「そうか。いつでも来ると良いよ。」
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