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博士の探偵事務所は市の中心部にある無個性的な外観のビルの3階にあった。部屋の真ん中にはテーブルを挟んで向かいあった二台のソファーがあり、左右の壁際の本棚からは本や書類があふれんばかりに入れられてある。そして1台の机が窓に背を向ける形で置かれていた。
机の後ろにあるシンクの横の冷蔵庫から博士がペットボトル入りのお茶を取り出した。
「今日の件はありがとう。これをお礼というのもなんだけど受け取ってほしい。君もすっかり疲れただろしね。」正晴は愛想笑いを浮かべながら受け取った。
「ここのソファーに座っても良いですか?」「構わないよ。」
正晴がソファーの片方に腰掛けると博士がもう一方の席にやってきて座った。ちょっと気まずいなと正晴は思った。「ところで君の名前を聞いてなかったね。」「透望正晴です。」「じゃあ君が建築物窃盗犯を捕まえた張本人なのか。」突然、博士の態度が変わった。彼は目を輝かせている。
「そうですが...。」賞賛されるのは嬉しいがあまり持ち上げられても困る。
「単刀直入に尋ねて申し訳ないけど、どうやって盗品の集積場所を突き止めたのか教えてくれるかい?」
大人しそうな人だと思っていたけど結構ずけずけと聞いてくるな。
「難しい理屈をこねた訳じゃありません。あの時は街中に警察の検問が設けられていたので犯人は市内から出て行ってはいないと思ったんです。そして都合の良い隠れ場所を探した結果あそこに向かったんです。」
「なるほど君の言うとおりシンプルな解法だね。でも参考にさせてもらうよ。僕もしばしば刑事事件の捜査に参加することがあるから。」博士の言葉に顔を上げた。
「それは凄い。殺人事件とか調べるんですか?」
「以前何件か担当したよ。でもそういう凶悪犯罪は近年減少傾向にある。だから最近は滅多にお目にかかれない。」




